政府は12月20日、経済安全保障推進法の「特定重要物資」に関し半導体や蓄電池など11分野の指定を閣議決定した。
いずれも供給が切れると経済活動や日常生活に支障を来す。重要鉱物では特定の国に依存しすぎないよう企業による海外での権益取得なども後押しする。
11分野のうちレアアースなど中国を供給元とする物資は多い。
経産省 | 半導体素子及び集積回路 | |
蓄電池 | ||
金属鉱産物重要鉱物 | マンガン、ニッケル、クロム、タングステン、モリブデン、コバルト、ニオブ、タングステン、リチウム、ボロン、チタン、バナジウム、ストロンチウム、希土類金属、白金族、ベリリウム、ガリウム、ゲルマニウム、セレン、ルビジウム、ジルコニウム、インジウム、テルル、セシウム、バリウム、ハフニウム、レニウム、タリウム、ビスマス、グラファイト、フッ素、マグネシウム、シリコン、リン | |
航空機部品 | 航空機用原動機及び航空機の機体を構成するもの | |
工作機械・産業用ロボット | ||
永久磁石 | ||
可燃性天然ガス | ||
クラウドプログラム | インターネットその他の高度情報通信ネットワークを通じて電子計算機を他人の情報処理の用に供するシステムに用いるプログラム | |
国土交通省 | 船舶部品 | 船舶用機関、航海用具及び推進器 |
厚労省 | 抗菌性物質製剤 |
特定重要物資の指定は5月に成立した経済安保推進法の4本柱のうちの1つ。
経済安保推進法:
法制上の手当てが必要な喫緊の課題に対応するため、
(1)重要物資の安定的な供給の確保、(2)基幹インフラ役務の安定的な提供の確保、(3)先端的な重要技術の開発支援、(4)特許出願の非公開に関する4つの制度を創設するもの。
政府は指定にあたり4つの要件を掲げた。①国民の生存に必要不可欠②外部に過度に依存する③供給が途絶する可能性がある④安定供給の確保の取り組みが特に必要――のすべてを満たすことを条件とした。
対象分野で国内での生産体制を強化し、備蓄も拡充する。 企業にも中国依存から脱却できる新技術開発、生産体制やサプライチェーン(供給網)づくりを促し、調達先の多角化につなげる。
有事に海外から供給が途絶えても安定して物資を確保できる体制を整える。
そのための企業の取り組みには国が財政支援する。
安定供給に必要な設備投資や備蓄、研究開発などにかかった費用の一部を補助する。
事業者は、支援を受けるための計画を事前に国へ申請し、認定を受ける。申請の受け付けは、来年3月から順次始まる予定。
政府は22年度第2次補正予算で経済安保推進法に基づく支援に充てる費用として合計1兆358億円を計上した。
高市経済安全保障担当大臣は、「国民の生存や生活、経済活動を守るため、我が国にとって重要な物資のサプライチェーンの強靭化を進める取り組みの第一歩となった。物資の安定供給の確保に向け、すみやかに取り組みを進めてまいりたい」と述べた。
以下、2022年11月の政府説明 https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/keizai_anzen_hosyohousei/r4_dai4/siryou1.pdf
元の原料が日本になく、海外に頼らざるを得ないものが多く、対策は容易ではない。
1.抗菌性物質製剤
注射用抗菌薬に多く用いられるβラクタム系抗菌薬は、その原材料のほぼ100%を海外依存
原薬等について、2023年から国内での製造及び備蓄設備構築を開始し、2030年までに、βラクタム系抗菌薬について、供給途絶時においても医療現場において必要な量を切れ目なく安定供給できる体制を整備する。
2. 肥料
肥料の原料は、資源が特定の地域に偏在しており、日本はそのほとんどの供給を輸入に依存
3.半導体
世界市場における日本企業のシェアは低下し続けており、また原料については、黄リン・誘導品や希ガス等、海外に大きく依存する物資も存在。今後、更に外部依存が進むおそれがあり、早急に措置を講ずることが必要。
4.蓄電池
日本は電池セル・部素材において高いレベルで開発・製造できる技術を保有しているが、日本のシェアは大幅に低下。今後、蓄電池の外部依存が更に進むおそれが大きく、早急に措置を講ずることが必要。
5.永久磁石
電化・デジタル化の進展に伴い、半導体(脳)、電池(心臓)とともに重要な要素を握るのがモーター(筋肉)であり、その性能を決定付けるのが永久磁石。
日本企業のシェアが低下(23%(2013)→15%(2021))する中、外部依存が更に高まる見込み。また、レアアース原料のうち一部の種類は全量外部に依存。
国内安定供給確保への対応に加え、安全保障上の関心が高く、経済安全保障の観点からも、早急に措置を講ずることが必要。
6.重要鉱物
重要鉱物のほぼ全量を海外からの輸入に依存。
資源の獲得競争が激化する中、海外の巨額投資による資源権益の囲い込みや、サプライチェーンの寡占化に対抗するため、早急に安定供給の確保を実現する必要。
7.工作機械・産業用ロボット
足元では、日本メーカーは高い国際競争力を有し、安定供給を実現している。
他方、デジタルトランスフォーメーション(DX)やカーボンニュートラル(CN)等のメガトレンドを踏まえて拡大するニーズへの対応が、今後の国際競争力の維持・強化、ひいては安定供給確保のカギ。
安全保障の観点からも重要な物資であり、我が国としても将来にわたる安定供給の確保に向けて、競争力確保のための措置を早急に講ずることが必要
8.クラウドプログラム
基盤クラウドプログラムや基盤クラウドサービスを海外事業者に依存。国内に事業基盤を有する事業者が撤退すれば、さらに依存が高まるおそれ。
情報システムの重要性が高まる中、我が国が重要なデータを自律的に管理するには、国内に事業基盤を有する事業者が基盤クラウドサービス事業を提供することが不可欠であり、早急に措置を講ずることが必要。
9.天然ガス
このほか、10.航空機の部品、11.船舶関連機器(船舶用機関、航海用具、推進器)
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