三洋化成はバイポーラ積層型のリチウムイオン電池の「全樹脂電池」開発のAPBの株式の44.2%を保有し、APBに対し全樹脂電池のキーマテリアルとなる被覆活物質を供給している。
同社は今回、持株44.2%のうち34.2%を半導体の設計・開発や最先端技術を活用したデジタルインフラ構築事業を行い、最先端プロセスの開発に実績を有しているTRIPLE-1に対し譲渡する契約を締結した。
残りの10%は引き続き保有し、被覆活物質の供給も続ける。
なお、負極材料のハードカーボンのメーカーのJJFEケミカルが2019年4月にAPBに出資したが、2020年3月にAPBが量産工場設立を主たる目的として約80億円の資金調達を実施した際にJFEケミカルと他6社が引き受け、JFEケミカルは現在、三洋化成に次ぐ第二位の株主となっている。
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APBは、日産自動車でEVリーフの電池開発を行っていた堀江英明氏が1998年にポリマー電解質を適用したバイポーラ電池を構想、2012年に三洋化成と樹脂集電体と3次元電極用ゲルポリマーに関する共同開発を始め、2018年10月に低コストの大量生産技術を確立するためのスタートアップ企業 APB㈱を設立した。
2019年2月、三洋化成が出資、子会社とした。
2020/3/5 三洋化成子会社、次世代型リチウムイオン電池「全樹脂電池」の量産第一工場を建設 (経緯、事業概要など記載)
三洋化成は当初、全樹脂電池の開発フェーズにおいては、APBの経営を支援しつつ、同社と連携し、全樹脂電池のキーマテリアルとなる被覆活物質を供給、全樹脂電池開発を進めて きた。
開発フェーズの終了後は、三洋化成は全樹脂電池のキーマテリアルである被覆活物質の開発、供給体制の確立に専念している。
他方、APBは武生工場を設立し、人員の拡充を進めるなど経営体制の整備を着実に進め、量産化、製品化フェーズを全面的に担うに至るとともに、将来的な事業成長のための新たなパートナー企業との提携を模索して いた。
今回、先端半導体の開発を手がけるユニコーン企業(評価額が 10 億ドル以上の未上場のスタートアップ企業)であり、海外のテクノロジー関連企業とも提携しているTRIPLE-1 よりAPBを通じて三洋化成に株式取得の申し入れがあったもの。
三洋化成としては、APBの技術開発を加速させ、将来的な事業成長に資することができ、また被覆活物質の開発・供給に注力するという 三洋化成の方針にも合致すると判断し、譲渡を決めた。
同社は、「全樹脂電池」は画期的な事業であるが、リスクを避け、原料供給に徹することにしたと思われる。
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TRIPLE-1 の事業内容は、半導体設計・開発事業、電気通信事業 、最先端技術を活用したデジタルインフラ構築事業で、工場を持たずに半導体を設計開発するファブレス半導体スタートアップとして2016年に創業した。
ビットコインなどの暗号通貨マイニングやディープラーニング向けの最先端の半導体設計開発を行ってきた。
2018年には世界で初めて、7nmプロセス技術を採用した暗号通貨マイニング向けASICチップ「KAMIKAZE」の製造を開始して注目を集めた。従来のASICチップと比べて50%以上の省電力化と4倍の処理速度を実現し、環境負荷を大幅に低減しつつ高性能化にも成功した。
APBの筆頭株主となり、将来的に全樹脂電池を活用した事業の展開を想定している。
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