電力カルテルで膨大な課徴金

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企業向けの特別高圧電力および高圧電力の供給を巡る大手電力のカルテル問題で、公正取引委員会は独占禁止法違反(不当な取引制限)で、中国電力、中部電力、九州電力の大手電力3社などに課徴金納付を命じる処分案を通知した。

課徴金総額は約1000億円で、1977年の制度開始以来、過去最高額となる。過去最高額は2019年の道路舗装8社へのアスファルト合材価格カルテルでの計約398億円。

過去の主な課徴金

2019年 道路舗装材(アスファルト合材)カルテル 8社 398億円
2007年 ごみ焼却炉談合 5社 269億円
2019年 飲料缶カルテル 3社 257億円
2014年 自動車輸出海運カルテル 4社 227億円
2010年 光ファイバーケーブルカルテル 5社 160億円
2006年 橋梁談合 44社 129億円


電力各社は燃料高や円安により経営環境が悪化しており、巨額の課徴金がさらなる収益の圧迫につながる可能性がある。

松野官房長官は、「課徴金は規制料金の原価に含まれない」とし、電気料金値上げの審査に関係がないとしている。


各社は12月1日に通知を受けたことを公表した。

対応 公取委の立入検査
中国電力 独禁法関連損失引当金繰入額として707億円 を特別損失に計上(12/5発表) 2021年4月13日および
7月13日
中部電力&
中部電力ミライズ
独禁法関連損失引当金繰入額として275.55億円を特別損失に計上 2021年4月13日
九州電力&
九電みらいエナジー
内容をチェックし、対応を検討 (報道では課徴金27億円) 2021年7月13日

中部電力ミライズは中部電力の販売事業会社
九電みらいエナジーは九州電力の再生可能エネルギー発電と電気を一般の需要家に販売・供給する100%子会社


各社はオフィスビルや大規模工場向けの「特別高圧電力」、中小ビルや中規模工場向けの「高圧電力」の販売で、互いに他社の区域での営業を控え顧客獲得を制限していたとされる。

電力小売りは事業者向けから順次自由化が始まり、2016年に家庭向け電力も対象となり全面自由化 し、新電力の参入や大手電力のエリアを超えた営業が認められるようになった。

産業界で電力を広域で一括して調達し、コストを引き下げる動きが出てきた。セブンイレブン・ジャパンは中部地方や西日本のコンビニエンスストア3000店超で地元の大手電力などから、関西電力に切り替える。電力自由化を受けて大手電力が地元以外で攻勢を掛け、新電力を含めた競争が激しくなっている。

関係者によると、一部の大手電力から「過当競争はたまらない」との声が出て、 関西電力の企画部門幹部が2018年秋ごろに3社を訪問し協議を提案した。

中国電力、中部電力、九州電力は2018年秋以降、関電と大規模工場向けの「特別高圧電力」や企業向けの「高圧電力」の供給で互いに相手の管轄区域で営業しないよう、互いの顧客獲得を制限するカルテルにそれぞれ合意 、企業向け電力市場の競争を実質的に制限していたとされる。(下図は読売新聞)

関西電力はカルテルを発議、3社とそれぞれカルテルを結び、カルテルの中心であるが、公取委に最初に違反を申告したため課徴金減免(リーニエンシー)制度で納付を免れると見られる。

独禁法では、談合・カルテルの主導的役割を果たした主導的事業者に対し、課徴金を5割増にするルールがあり、大企業・製造業の場合、一般の10%が15%になる。

関西電力はカルテルを発議、3社すべてとカルテルを結んでおり、本来なら膨大な課徴金になるところであった。


中国電力と中部電力で課徴金に大きな差がある。

中部電力は、中部電力と東京電力のJVのJERAが発電した電力を販売しているため、「卸売業」とみなされ、課徴金は売上高の2%であるのに対し、中国電力は製造業で、売上高の10%が課せられた。

課徴金(不当な取引制限)

  製造業等 小売業  卸売業 
大企業  10%   3%  2%
中小企業 4% 1.2% 1%

主導的事業者は課徴金5割増

九州電力は関電と合意した販売先の範囲が最も狭く(官公庁のみ)、算定基準となる売上が少なかった。

 付記 調査開始後に公取委に全面協力し、30%が減免されたとされる。


関西電力の本来の課徴金は、
構図が上図の通りなら、単純計算で (275 x 5 + 700 + 27) x 1.5 =3,153億円となる。中部電力分は関電は製造業のため5倍となる。全体を5割増。これが自主申告でゼロになった。

  

 

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