公正取引委員会は12月27日、原燃料費や人件費などコスト上昇分を下請け企業などとの取引価格に反映しなかった企業として佐川急便や全国農業協同組合連合会(JA全農)、デンソーなど13社の社名を公表した。
2021年12月27日に中小企業等が労務費、原材料費、エネルギーコストの上昇分を適切に転嫁できるようにし、賃金引上げの環境を整備するため、関係省庁において「パートナーシップによる価値創造のための転嫁円滑化施策パッケージ」が取りまとめられた。
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/pdf/partnership_package_set.pdf
この取組の一環として、公正取引委員会は、2022年1月26日、下請法運用基準を改正するとともに、同年2月16日、独占禁止法Q&Aに、労務費、原材料費、エネルギーコスト等のコストの上昇分を取引価格に反映せず、従来どおりに取引価格を据え置くことは、優越的地位の濫用の要件の1つに該当するおそれがあることを明確化した。
Q20 労務費,原材料費,エネルギーコストが上昇した場合において,その上昇分を取引価格に反映しないことは,独占禁止法上の優越的地位の濫用として問題となりますか。
独占禁止法上,自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して,正常な商習慣に照らして不当に,取引の相手方に不利益となるように取引の条件を設定すること(第2条第9項第5号ハ)は,優越的地位の濫用として禁止されています。このため,取引上の地位が相手方に優越している事業者が,取引の相手方に対し,一方的に,著しく低い対価での取引を要請する場合には,優越的地位の濫用として問題となるおそれがあり,具体的には,
1 労務費,原材料価格,エネルギーコスト等のコストの上昇分の取引価格への反映の必要性について,価格の交渉の場において明示的に協議することなく,従来どおりに取引価格を据え置くこと
2 労務費,原材料価格,エネルギーコスト等のコストが上昇したため,取引の相手方が取引価格の引上げを求めたにもかかわらず,価格転嫁をしない理由を書面,電子メール等で取引の相手方に回答することなく,従来どおりに取引価格を据え置くこと
は,優越的地位の濫用として問題となるおそれがあります。
この判断に当たっては,対価の決定に当たり取引の相手方と十分な協議が行われたかどうか等の対価の決定方法のほか,他の取引の相手方の対価と比べて差別的であるかどうか,取引の相手方の仕入価格を下回るものであるかどうか,通常の購入価格又は販売価格との乖離の状況,取引の対象となる商品又は役務の需給関係等を勘案して総合的に判断することとなります。
公取委はその後、適正な価格転嫁の実現に向けて、独占禁止法違反事件の審査ではなく、事業者間取引における上記の①又は②に該当する行為が疑われる事案に関する実態を把握するため、独占禁止法上の「優越的地位の濫用」に関する緊急調査を実施してきた。
本日、下記の通り、結果を取りまとめたもの。
公取委は、これらの独占禁止法Q&Aの①又は②に該当する行為が認められた発注者4,030社に対し、具体的な懸念事項を明示した注意喚起文書を送付した。
また、個別調査の結果、受注者からの値上げ要請の有無にかかわらず、取引価格が据え置かれており、事業活動への影響が大きい取引先として受注者から多く名前が挙がった発注者であって、かつ、多数の取引先について独占禁止法Q&Aの①に該当する行為が確認された事業者については、価格転嫁の円滑な推進を強く後押しする観点から、取引当事者に価格転嫁のための積極的な協議を促すとともに、受注者にとっての協議を求める機会の拡大につながる有益な情報であること等を踏まえ、独占禁止法第43条の規定に基づき、その事業者名を公表することとした。
(事業者名は五十音順によるもの)
番号 事業者名 1 佐川急便株式会社 2 三協立山株式会社 3 全国農業協同組合連合会 4 大和物流株式会社 5 株式会社デンソー 6 株式会社東急コミュニティー 7 株式会社豊田自動織機 8 トランコム株式会社 9 株式会社ドン・キホーテ 10 株式会社日本アクセス 11 株式会社丸和運輸機関 12 三菱食品株式会社 13 三菱電機ロジスティクス株式会社
※ 独占禁止法Q&Aに該当する行為を行っていたか否かを調査したものであり、この公表が独占禁止法又は下請法に違反すること又はそのおそれを認定したものではない。
※ 発注者の中には、今回の調査期間中に、一部の受注者との間では価格転嫁を進めていた事例や、今回の緊急調査の実施等を受けて、調査対象期間後において、受注者との間で価格転嫁を行うための協議の場を設けた事例又は今後設けることとする旨の方針を明らかにしている事例、取引の相手方に対して適正な取引体制の構築、援助等を行っている事例等も確認された。
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