ロシア海域の「船舶戦争保険」 、保険料8割程度引き上げ

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損保大手の東京海上日動火災保険、損害保険ジャパン 、三井住友海上火災保険は、ロシアやウクライナ周辺の海域で軍事行動などに伴う船舶の被害を補償する「船舶戦争保険」について、1月下旬から保険料を大幅に引き上げる見通し となった。

保険料はこれまで1200万円程度だったが、今後は2000万円超に高まる見通し。ロシアによるウクライナ侵攻の長期化を受けて、保険のリスクの一部を引き受ける再保険会社が保険料を引き上げた ため。

この保険をめぐっては、再保険会社が引き受けを拒否したため、各社はいったん保険の提供を停止するとしていたが、再保険会社と交渉を進めた結果、ことし3月までは継続できる見通しにな った。

ただし、4月以降の提供は不透明な状況で、対象の海域を航行するロシア極東の石油・天然ガス開発プロジェクト「サハリン2」からのLNGの調達が今後も安定的に行えるかどうかが課題 となる。


一般の海上輸送保険(船舶普通期間保険)は、船舶が沈没、座礁、座州、火災、他の船舶との衝突等の海上固有の危険に遭遇したことによって被る船舶自体の損害、費用、および賠償責任(衝突により相手船と相手船上の積荷または財物に与えた損害に対する賠償責任等)によって被る損害を補償する保険で、危険の予測が著しく困難な戦争、軍事的行動、水雷その他の爆発物等との接触、襲撃、捕獲、内乱あるいは労働争議等の危険については免責としている。

このため、別証券にて、これらの危険による損害について保険金を支払いするのが「船舶戦争保険」である。

2022年12月23日にある船会社が資源エネルギー庁にサハリン2のLNGを輸送できないと連絡した。 損保3社が「2023年1月からロシア、ウクライナ、ベラルーシの3カ国で戦争による船の被害を補償する船舶戦争保険を引き受けできない」と通知したためである。

ロシア政府による船舶の接収などのリスクに保険なしで対処することは難しいため、「サハリン2」から日本にLNGを運び込むことは事実上、不可能となる。

損保3社は英国の保険会社に最保険しているが、 実は再保険会社も、リスク分散のために「再々保険」を契約している。再保険会社が、その先の再々保険会社との交渉で物別れに終わったため、ロシアなど3カ国の戦争リスクの引き受けを拒否した 。

今回の事例では十数社にリスクを再移転していたが、数社がロシアリスクを拒否したとされる。

リスクの約9割を海外の再保険市場に移転している国内損保にとって、再保険なしの契約はあり得ない。

この事態を受け、 エネ庁と金融庁は連名で損保に保険提供の継続を要請し、再保険交渉の加速を促した。

最終的に年間の補償上限を限る形で2023年1月からの保険継続に必要な補償額を何とか確保した。日本向けの船舶戦争保険が更改を迎える4月が次の正念場となる。

海運大手3社は現在、サハリン2運営会社との長期用船契約にLNG船3隻を配船中。
内訳は日本郵船とロシア国営Sovcomflot が「Grand Elena」と「Grand Aniva」の2隻、商船三井と川崎汽船、ロシアのPRISCOが共有で「Grand Mereya」を投入している。

このほかにも日本の電力・ガス会社がLNG船を配船するFOB(本船渡し条件)ベースでサハリン2から一定量のLNGを購入している 。

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