テスラ、米ネバダ州でEV電池増産 36億ドルを追加投資

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Teslaは1月24日、巨大電池工場を運営する米西部ネバダ州Renoに36億ドルを追加投資すると発表した。小型電気自動車(EV)200万台分に相当する100ギガワット時の年間生産能力を持つ電池工場 と、同社初の商用車であるEVトラック「Semi」の量産工場も新設する。

EV truck Semi

Semi は当初、2019年の出荷開始を予定していたが、テスラは2022年12月に最初の納入先である米ペプシコに引き渡した。Elon Musk CEOは2022年10月に、2024年に5000万台の生産を目指すと述べている。 ビール世界最大手のAnheuser-Busch InBev や貨物輸送大手United Parcel Service (UPS)、小売り大手Walmartなども発注している。

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Tesla Motors とパナソニックは2017年1月4日、Tesla が米ネバダ州Reno近郊のSparksに建設した「Gigafactory」で円筒形リチウムイオン電池セルの量産を開始すると発表した。

Gigafactory内に設置されたパナソニックの電池セル工場で 新型EV(電気自動車)「モデル 3」およびTeslaの住宅用蓄電池「PowerWall」、産業用蓄電池「PowerPack」向けに、「2170」サイズの円筒形電池セルを生産する。

検証用の2170セルの生産は2016年12月に開始されており、1月4日にTesla PowerWall 2 とPowerPack 2 用のセルの生産が開始された。新型EV Model 3用のセルの生産開始は第2四半期を予定している。

Gigafactoryにおけるリチウムイオン バッテリーセルの生産量は、2018年までに年間35 GWhに達する見込みで、これはGigafactoryを除く全世界で生産されるバッテリーの総量とほぼ同量となる。

Teslaとパナソニックは2016年12月、ニューヨーク州バッファロー工場で太陽電池セルとモジュールの生産を開始することで合意した。

2017年夏にも太陽電池モジュールの生産を開始し、2019年までに1GWの生産能力に拡大するという。

両社は、この協業により、TeslaのGigafactoryにおける電気自動車用電池や蓄電池の生産により構築された関係を、更に、強化、拡大させる。

パナソニックとテスラは2017年夏からバッファロー工場での太陽電池セルとモジュールの生産を開始した。

しかし、パナソニックは2020年2月26日、Teslaと共同で運営していた米国バッファロー工場での太陽電池セルおよびモジュールの生産を2020年5月までに停止し、2020年9月に撤退すると発表した。

2017/1/11 Tesla Motors とパナソニック、「Gigafactory」でバッテリーの生産開始

パナソニックは2010年11月にTeslaに3000万米ドルを出資したと発表した。Teslaは、Tesla製の先進的な電池パックにパナソニックのリチウムイオン電池を搭載しており、またEV用の次世代リチウムイオン電池を共同で開発するなどパナソニックとは親密な関係があり 、パナソニックを優先サプライヤーとして位置づけている。

パナソニック は、2013年6月でTesla Mortorsの高級EVセダン「モデルS」向けリチウムイオン電池セルの累計出荷 1億個を達成した。


パナソニック エナジーは2022年10月31日、米国カンザス州に車載用円筒形リチウムイオン電池の新工場建設を正式に決定したと発表した。新工場の初期の生産能⼒は30GWh程度を予定し、2022年11月より工場建設を開始して、2024年度中の生産開始を目指す。

カンザス州、2022年714同州への投資誘致補助金制度である Attracting Powerful Economic Expansionへの申請承認した。

新工場は、ネバダ州に続く同社の米国における車載電池の第2工場となる予定で、同社は車載用円筒形リチウムイオン電池「2170」の生産体制を増強、量産時期は2024年度中を目指す。

同社は20221213日、Lucid Motorsの高級EVLucid Air車載用円筒形リチウムイオン電池供給する契約を締したと発表した。今後発売予定の Lucid Air Sapphire Project Gravity SUV を含むLucid Air フルラインップなどに電池を供給することに合意した。

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今回のTesla発表では、新バッテリー工場では最新のバッテリーセル「4680」を製造し、生産能力は年間で最大200万台分となる予定。「Semi」工場については「大量」生産施設を建設するとしたが、具体的な生産台数の見込みは示さなかった。

TeslaのEVには、パナソニック製の円筒型セルが採用されてきた。「Roadster」や「モデルS」、「モデルX」にはノートパソコンなどに使われていた直径18mm×長さ65mmの「1865」と呼ぶセルが搭載されている。
モデル3には直径21mm×長さ70mmの「2170」と呼ぶ電気自動車向けセルが採用された。エネルギー容量は「1865」から「2170」で1.5倍になる。

Tesla は2021年10月20日の第3半期決算の発表文で、同社が、航続距離が標準的なモデルの車載用電池については、リン酸鉄リチウムイオン(LFP)電池に世界的に移行する計画だと述べた。

Teslaは現在、米国ではパナソニックのNCM電池を使用しているが、中国では寧徳時代新能源科技(CATL)から供給されるLFP電池を使用している。

CATLのLFP電池は正極側にリチウムや鉄、リンを使い、長寿命で、最高800℃までの耐熱性を有し、安全性と信頼性に優れていると言われる。火災や振動、衝突など様々な危険な状況を想定した300項目以上の試験で検証しているという。

パナソニックエナジーはTeslaからの要請で新型電池「4680」を開発中で、「技術的な面ではほぼ完成した」としている。「円筒形は安全性が高く電池モジュール内のセル密度を高められる点で大きなメリットになる。より走行距離の長いEVを実現する上で「4680」という電池セルは重要な技術になるだろう」としている。

パナソニックエナジーは2022年6月1日、「4680」のパイロットラインの稼働を開始したことを明かした。量産を担当する和歌山工場では、建屋の改装と設備製作を開始し、グローバル展開を前提とした生産システムの基盤を整えているとした。北米での生産も検討していく。

TeslaのEVには、パナソニック製の円筒型セルが採用されてきた。これに対し、「4680」は直径46mm、長さ80mmの円筒形電池で、「2170」から電池容量を5倍に高めることができる。

2021/11/4 テスラ、リン酸鉄リチウムイオン電池への世界的な移行を計画


パナソニックは現在まで、Tesla の新工場について発表をしていない。 今回の新工場建設は電池工場についてもTeslaが単独で実施する可能性が強い

同社は2022年2月にFremontのパイロットプラントで4680の電池を生産したことを発表した。その後、沈黙を守っていたが、2022年12月25日に、先週 868千個の4680電池を生産したと明らかにした。Model Y を1000台以上生産できる。

上記の通り、パナソニックもTeslaとは無関係でカンザス州に車載用円筒形リチウムイオン電池の新工場を建設する。


Teslaが電池を自製する理由としては、バイデン政権が決めたインフレ抑制法が考えられる。

新法では、低・中所得者がエコカーなどの新車を購入する際に、下記の条件を満たした場合、1台当たり最大7500ドルの税控除を受けられる。

主な要件(控除額は個人の場合)
税額控除額
価格が5.5万ドル(バンやSUV、ピックアップトラックは8万ドル)未満であること 必須 -
車両の最終組み立てが北米(米国、カナダ、メキシコ)で行われていること 必須 -
電池材料の重要鉱物のうち、調達価格の40%が自由貿易協定を結ぶ国で採掘あるいは精製されるか、北米でリサイクルされていること どちらか
必須
3,750ドル
電池用部品の50%が北米で製造されていること 3,750ドル

但し、財務省は2022年12月19日、2023年1月1日からの控除対象のバッテリー調達基準に関する指針の詳細公表時期を2023年3月中に延期すると発表した。変更の可能性がある。

しかし、新車購入者のほかに、インフレ抑制法の条項45Xでは、上記条件を満たした車載電池メーカーに対し「先進製造業生産控除」と呼ばれる補助金が1キロワット時当たり35ドル割り当てられる。

Tax Credit for Production of Battery Cells and Battery Modules:

A tax credit is also included for the production of battery cells and battery modules in the United States based on the capacity in kilowatt hours of the battery cell or module. The credit in the case of a battery cell is based on the capacity of the cell up to $35 per kWh, and in the case of a module is based on the capacity of the module up to $10 per kWh (or, in the case of a battery module that does not use battery cells, $45 per kWh).

For a 75kWh battery pack, this means that there could be a tax credit of up to $2,625 ($35 per kWh) for the maker of the battery cells and up to $750 for the maker of the modules ($10 per kWh). The credit is eligible for direct payment from Treasury and the right to the credit can be sold for cash to third parties (in both cases subject to certain limitations).

Musk CEOは決算発表で次の通り述べた。

"Long term we expect the value of these credits to be very significant. You can do the math, if we were to get anywhere near 1000 gigawatt hours of production or even a few hundred gigawatt hours it's very significant."

現在の方式では、Teslaとパナソニックはこれを折半することとなる。今後、Teslaが単独で生産する場合、利益は大きい。

TeslaのCFOは以下の通り述べた。

"In the case of Panasonic with its domestic manufacturing (US) we're splitting the value of the credit. So the value the credits this year will will not be gigantic but I think it could be gigantic and we think it probably will be very significant in the future."

"We think on the order of $US150 to $US250 million per quarter this year, and growing over the course of the year so far as our volumes grow".

新工場での生産能力は年間100ギガワット時だが、将来、500ギガワットまで拡大する計画である。

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