米イーライリリーのアルツハイマー薬、FDAが迅速承認を認めず

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米医薬品大手 Ily Lillyは1月19日、アルツハイマー病薬「Donanemab」についてFDAが迅速承認(Fast track)を認めなかったと発表した。

迅速承認は、重篤もしくは生命を脅かすような疾患を対象として、臨床上の有用性が予測できるような代替的な評価項目に基づいて医薬品を承認する仕組みで、いわば仮免許であり、その後の検証的試験で臨床的有用性を示すことなどが必要となる。

重篤または生命を脅かす状態を治療し、unmet medical needsを満たす医薬品の開発を促進するための、迅速な審査のための治験薬

同社は2021年6月末に、Donanemabが画期的治療薬の指定を受けたと発表した。

画期的医薬品指定制度は2012年のFDA安全・イノベーション法により規定された。同制度は、既存治療法を上回る劇的な改善を示す製品の開発の迅速化を目指すもので、具体的には、FDAは開発が順調に進むように上級幹部を早くから関与させ、指定製品の臨床試験を簡略化することを認める。

しかし、今回の審査では、FDAへの臨床試験データ提出で、同薬で少なくとも12か月治療した患者のデータ数が不十分とされた。

同社では通常承認のための第3相臨床試験の結果提出は引き続き今年第2四半期を目指し、提出後速やかに通常承認を申請するとしている。

なお、新薬ではFDAは本年1月7日、エーザイとBiogenの新薬の抗アミロイドβ(Aβ)プロトフィブリル抗体LECANEMAB開発コード:BAN2401、米国ブランド名:LEQEMBI™ 注射 100 mg/mL 溶液)について、アルツハイマー病の治療薬として、迅速承認したと発表した。

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アルツハイマー型認知症の原因は未だ解明されていないが、進行に伴っていくつかの特有の病変が見られる。例えば、神経細胞の外側では「アミロイドβ」が蓄積して老人班を形成し、神経細胞の中では「タウタンパク」が蓄積してタンパク質が糸くず状に変化したようなもの(神経原繊維変化)が見られるようになる。


以下、詳細は 
2021/8/17 アルツハイマー病治療薬を巡る話題


1.既存のアルツハイマー治療薬

アルツハイマーは、病理学的には神経原線維変化とアミロイドβ沈着の2つを特徴とする変化により、脳の神経細胞死が生じ、記憶力低下をはじめとする認知機能障害が緩徐に進行する病気。

現時点で認可されているアルツハイマー病の既存治療薬は以下の4つで、いずれも根治を目的としたものではなく、進行を少し(半年〜1年程度)遅らせるものでしかない。

いずれも、ニューロン間の情報を伝達する化学物質である神経伝達物質を制御することにより機能する。


2.新薬開発(アミロイドβ仮説)


注) 一般名の末尾の「マブ」はモノクローナル抗体医薬の意味。
   末尾の「ビル」は抗ウイルス薬、「ニブ」は キナーゼ阻害薬

「Aβ(アミロイドβ)仮説」

脳の神経細胞外にAβが蓄積タウ蛋白のリン酸化神経原線維変化細胞毒性が生じ、神経細胞が死滅認知症を発症

 抗Aβ抗体:Aβを除去

 抗タウ抗体:タウを除去したり、タウの凝集を阻害

 T-817MA:神経細胞保護効果や神経突起伸展促進効果のあるT-817MA投与で、リン酸化タウの減少を確認。

①エーザイ/バイオジェン ADUHELM(一般名:アデュカヌマブ)

米食品医薬品局(FDA)は2021年6月7日、エーザイと米バイオジェンが共同で開発するアルツハイマー型認知症治療薬候補ADUHELM(一般名:アデュカヌマブ)について、脳内アミロイドβプラークを減少させることにより、アルツハイマー病の病理に作用する初めてかつ唯一治療薬として迅速承認(accelerated approval)したと発表した。

従来の認知症薬とは異なり、認知機能の低下を長期的に抑制する機能を持つとして世界で初めて承認された。

アミロイド斑(プラーク)は、アミロイドβ蛋白が蓄積したもので、アルツハイマー病患者の脳にみられる。新薬はこのレベルを下げるもの。

2021/6/8 エーザイとバイオジェンのアルツハイマー新薬、米で承認

ADHUHELMについては、2020117日のFDAの末梢中枢神経系薬物諮問委員会で、有効性に対して否定的な見解が出された。


FDA
諮問委員会の提言はFDAによる審査において考慮されるが、拘束力はない。しかし、提言に反する承認は異例。

2019/10/24  Biogenとエーザイ、一旦治験中止したアルツハイマー薬の承認申請へ

FDAのウッドコック長官代行は、承認に至るまでのバイオジェンとFDAとのやりとりが適正だったか調査するよう、米厚生省の監査部門に調査を要求、監査部門は8月4日、承認過程を調査すると表明した。

米下院の二つの委員会も、同薬の承認をめぐる調査に着手した。一方、二つの米大手医療機関は、当面は患者に使用しない方針を表明した。

米国の高齢者向け公的医療保険 Medicare当局は2022年1月11日、保険適用を臨床試験(治験)の参加者に限定する方針を発表した。最終決定された場合、最大市場の米国で普及が進まず、期待された大型薬化は難しくなる。

② エーザイ/Biogen BAN2401

2023/1/7 FDAより迅速承認

 2023/1/9 エーザイのアルツハイマー治療薬、FDAから迅速承認を取得 

③ Ely Lilly 「ドナネマブ」   今回、迅速承認否定

Aβペプチドは脳内に沈着し、過剰になると互いに結合してタンパク質プラークを形成する。
ドナネマブは、このタンパク質プラークを標的とし、脳内で負担となる余分なタンパク質を除去する。
単に新しいプラークの沈着または既存のプラークの成長を防ぐのではなく、沈着したプラーク自体を標的にすることが、脳から既存のアミロイド負荷を取り除くために必要)

以前のプラーク結合抗体のいくつかは、脳に微小出血を引き起こしたために放棄されたが、これは微小出血を引き起こすことなくマウスのプラークを除去することが報告されている。

3.光認知症療法

東京大学は2021年4月、光酸素化法を開発したと発表した。

脳内でアミロイドβペプチド(Aβ)が凝集・蓄積することがAD発症の原因と示唆されており、Aβの凝集を抑制すること 、また凝集したAβを効率よく除去することがAD根本治療戦略として考えられている。

今回、光照射と光酸素化触媒を用いた光酸素化法を確立した。

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