原子力発電所の運転期間について、政府は2022年12月22日のGX=グリーントランスフォーメーション実行会議で、実質的に上限の60年を超えて運転できるようにする基本方針を取りまとめた。
原子力について、以下のとおりとしている。
原子力は、出力が安定的であり自律性が高いという特徴を有しており、安定供給とカーボンニュートラル実現の両立に向け、脱炭素のベースロード電源としての重要な役割を担う。
このため、2030年度電源構成に占める原子力比率 20~22%の確実な達成に向けて、安全最優先で再稼働を進める。将来にわたって持続的に原子力を活用するため、安全性の確保を大前提に、新たな安全メカニズムを組み込んだ次世代革新炉の開発・建設に取り組む。
地域の理解確保を大前提に、まずは廃止決定した炉の次世代革新炉への建て替えを対象として、六ヶ所再処理工場の竣工等のバックエンド問題の進展も踏まえつつ具体化を進めていく。
その他の開発・建設は、各地域における再稼働状況や理解確保等の進展等、今後の状況を踏まえて検討していく。
既存の原子力発電所を可能な限り活用するため、「運転期間40年、延長を認める期間は20年」との制限を設けた上で、福島第一原発の事故後の長期停止期間を除外することで、60年を超える運転を可能にする新しい方針をとりまとめた。
再稼働を加速し、2030年にエネルギーにおける原子力の比率20~22%実現を目指す。
また、安全性の確保や地域住民の理解を前提に、次世代革新炉の開発・建設に取り組む方針を示した。原発事故後、政府はこれまで原発の新増設や建て替えは「想定していない」としてきたが、この方針を大きく転換する。
経産省はこれに先立つ12月16日に総合資源エネルギー調査会の基本政策分科会で、原発活用策などについて最終的な方針を取りまとめた。 これが政府の基本方針に折り込まれた。
原発の運転期間については原則40年、最長60年とした現行のルールを維持しながら原発の安全審査などに伴う長期停止期間を運転期間に算入しないとする。
仮に10年間、原発が止まっていれば運転開始から最長で70年間稼働できることになる。また、次世代原発の開発や建設についてはまずは廃炉が決まった原発を対象に建て替えを進めるとした。
これとは別に、原子力規制委員会は12月21日、原子力発電所の運転開始から30年以降、10年以内ごとに繰り返し運転を認可する新ルール案を了承した。現行ルールを上回る「60年超」運転が可能になる。
一般からの意見公募や電力会社との意見交換を経て、現行ルールを定めた原子炉等規制法の改正案について来年の通常国会への提出を目指す。
現行ルールでは、運転開始から40年を迎える原発は、規制委の運転延長の審査に合格した場合に限り1回のみ最長20年の延長が認可される。また、これとは別に、運転開始から30年以降の原発は、10年ごとに「高経年化対策」も実施されている。
新ルールはこれらを一本化する内容で、規制委は電力会社に対し、施設の劣化を管理する長期計画の作成を義務づけ、安全性を確認すれば運転延長を繰り返し認可する。
福島原発事故以前の規制に戻すこととなる。
政府案は運転停止期間を除いて60年が限度だが、規制委の案では審査が通る限り、限度はない。今後調整 が必要である。
次世代原発については、GX=グリーントランスフォーメーション実行会議に提出された資料は下記の通り。
次世代革新炉についてはMETI 革新炉開発の技術ロードマップ 参照
原子力発電について、政府のGX実行会議のメンバーの経団連の十倉雅和会長は年頭向けインタビュー で、
「原発はある種のトランジション(移行期)の技術。ゆくゆくは核融合(発電)に行き着かなければ、人類の未来はない」と述べ、高レベル放射性廃棄物(核のごみ)が大量に出る原発からは将来的に脱却する必要があるとの認識を示した。
十倉会長は2022年9月5日には次のように述べている。(経団連の発表)
〔岸田総理が、原発の新増設やリプレース、運転期間の延長を検討する考えを示したことについて問われ、〕
高く評価したい。今後、原発の活用促進に向け、特に、安全性と放射性廃棄物について国民の理解を得ていくことが重要である。国が前面に立ち、国民・地域住民に、原発の安全性を分かりやすく説明しながら、次世代革新炉の開発・建設を推進する必要がある。また、放射性廃棄物に関しては、核燃料サイクル・最終処分の確立が不可欠である。
「GX 実現に向けた基本方針」は下記の通り。
1) 徹底した省エネルギーの推進、製造業の構造転換(燃料・原料転換)
2) 再生可能エネルギーの主力電源化
脱炭素電源として重要な再生可能エネルギーの導入拡大に向けて、国民負担の抑制と地域との共生を図りながら、安全性(Safety)を大前提とし、自給率(Energy Security)、経済効率性(Economic Efficiency)、環境適合(Environment)を同時達成することをを大前提に、主力電源として最優先の原則で最大限導入拡大に取り組み、関係省庁・機関が密接に連携しながら、2030 年度の電源構成に占める再生可能エネルギー比率 36~38%の確実な達成を目指す。
3) 原子力の活用
4) 水素・アンモニアの導入促進
5) カーボンニュートラル実現に向けた電力・ガス市場の整備
6) 資源確保に向けた資源外交など国の関与の強化
7) 蓄電池産業
8) 資源循環
以下、各分野
本文 https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/gx_jikkou_kaigi/dai5/siryou1.pdf
参考資料 https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/gx_jikkou_kaigi/dai5/siryou2.pdf
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