経済産業省は2月7日、下請け企業との価格交渉でコスト上昇による転嫁に後ろ向きな企業を初めて実名で公表した。
エネルギー価格や原材料費、労務費などが上昇する中、中小企業が適切に価格転嫁をしやすい環境を作るため、2021年9月より、毎年9月と3月を「価格交渉促進月間」と設定。この「月間」おいて、価格交渉・価格転嫁を促進するため、広報や講習会、業界団体を通じた価格転嫁の要請等を実施している。
また、各「月間」終了後には、多数の中小企業に対して、主な取引先との価格交渉・価格転嫁の状況についてのフォローアップ調査を実施し、価格転嫁率や業界ごとの結果、順位付け等の結果をとりまとめるとともに、状況の芳しくない親事業者に対しては下請中小企業振興法に基づき、大臣名での指導・助言を実施している。
今回発表した企業リストは、価格交渉促進月間(2022年9月)のフォローアップ調査において、10 社以上の受注側中小企業から「主要な取引先」として挙げられた発注側企業について、受注側中小企業からの
「②価格交渉の回答状況」、「③価格転嫁の回答状況」について点数付けし、整理してリスト化したもの。
各社ごとに、受注側中小企業からの回答を点数化し、その平均値を求め、点数付けし、「ア」、「イ」、「ウ」、「エ」の評価を行った。
ア: 回答の平均が7点以上
イ: 回答の平均が7点未満、4点以上
ウ: 回答の平均が4点未満、0点以上
エ: 回答の平均が0点未満
調査対象全社の評価は下記に記載。
https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/torihiki/follow-up/dl/202209list.pdf
このうち、「エ」(回答の平均が0点未満)があるのは次の2社。
価格交渉 | 価格転嫁 | |
日本郵便 | ウ | エ |
不二越 | エ | ウ |
両方が「ウ」(回答の平均が4点未満、0点以上)の企業は次の通り。
五洋建設、三井住友建設、東芝プラントシステム、オカムラ、NTN、関西電力、一条工務店、ダイフク、前田道路、オリックス自動車、凸版印刷、日立グローバルライフソリューションズ、佐川急便、関電工、 日本郵便輸送、中電工
日本郵便は本社と子会社の日本郵便輸送が挙がっている。
中小企業の価格転嫁は政府が目指す物価上昇率を超える賃上げにも影響があることなどから、経産省は評価が良くなかった約30社を指導、助言し、是正を促していくとしてい る。
調査結果の公表を受け、日本郵便は「非常に厳しいものであるが、真摯に受け止めたい」、不二越は「適正な価格転嫁の実現は重要であると認識しており、取引先とのコミュニケーションを一層強化していきたい」とそれぞれコメントした。
逆に両方が最も高い「ア」の評価を得たのは、次の7社:
住友化学、東洋紡、日本製鉄、村田製作所、王子製紙、旭化成、グローリー㈱
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なお、公正取引委員会は2022年12月27日、原燃料費や人件費などコスト上昇分を下請け企業などとの取引価格に反映しなかった企業として佐川急便や全国農業協同組合連合会(JA全農)、デンソーなど13社の社名を公表した。
2022/12/28 公取委、価格転嫁拒否で企業名公表
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