フジテック臨時株主総会、社外取締役3人解任、株主推薦の4人を取締役に選任

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エレベーター大手のフジテックは2月24日、臨時株主総会を開いた。

香港の投資ファンド、Oasis Managementが提案していた5人の社外取締役の解任議案のうち、取締役会議長など3人の解任が可決された。Oasisが提案していた新たな6人の選任議案は4人が可決された。会社が提案していた2人の社外取締役の追加選任は否決された。

Oasis Managementは2022年5月18日時点でフジテック株式の9.92%を所有していたが、11月29日の大量保有報告書の変更報告書で17.26%になっている。

株主提案によって社外取締役が解任されるのは極めて異例。経営陣の半数近くが入れ替わることになり、経営の混乱は避けられない。

付記

フジテックは3月27日、取締役会議長にオアシス推薦の社外取締役の海野薫氏が就任したと発表した。

3月28日、創業家出身の内山高一会長を解任した。解任を決議した取締役会は全9人で、オアシス側の取締役は4人。会社側の取締役の一部が賛成に回った結果、過半数に達したとみられる。

オアシスは内山氏に権限乱用があったと指摘。一方、内山氏は同日、オアシス側に名誉毀損されたとして、損害賠償を求める訴訟を起こす意向を明らかにした。


付記

遠藤社外取締役が3月30日付けで辞任した。会社側推薦で、49.77%のギリギリで解任が否決され、留任したが、オアシス側が辞任を求めていた。


Oasisは2022年にフジテックと創業家(内山家)の間に疑わしい取引があると主張し、創業家の内山高一前社長の再任反対を呼びかけた。内山氏が個人の利益のために権限を濫用していると指摘し、独自の調査に基づく資料を公開、ほかの株主の賛同を得ようと動いており、その結果が株主総会で明らかになるはずだった。

フジテックは1948年に富士輸送機工業として内山正太郎氏により設立された。富士電気よりエレベータやエスカレータにつかうモーターなどの供給を受けた。
1974年に現在のフジテックに改称した。


Oasisは、内山社長が自身の保有する法人を通じて、フジテックでの地位を利用し、すべての利害関係者に不利益をもたらす個人的利益を得ているのではないかという合理的な疑いを有しているとし、下記の例を挙げた。

- フジテックが内山家の私的利用のために超高級マンションを取得した
- 内山社長が保有する法人の不動産投資の失敗を補填するために、フジテックが買い取った
- フジテックは内山家が保有する法人の抱える債務に保証を付けたほか、内山社長が保有する法人に11年間にわたり
   担保なしにフジテックの手許現金の2割にも及ぶ、莫大な額の現金を貸付けていた

- フジテックは内山家及び内山社長本人が保有する法人から、その保有不動産を賃借
- フジテックが入札や株主への開示なしに非公開の会社の株式を内山社長が保有する法人に売却
- 内山社長が自宅の庭の手入れにフジテック社員を利用

フジテック側は、内山氏及びその関係会社との間での関連当事者取引その他行為について、企業統治上の問題があるとの主張がなされているが、当該主張は全くあたらない又は事実誤認に基づく主張であると認識している。いずれも所定の法令・手続等に従ってなされた適法かつ適切な取引及び行為であり、企業統治上も問題はないものと考えていると主張していた。

しかし、フジテックは定時総会の1時間前に内山氏の取締役再任議案を取り下げた。これについて同社は、取締役会が第三者委員会による追加調査及び検証を実施することを決議しており、その調査結果の報告を受けるまでの間、取締役に就任しないものとし、当該調査の結果、問題のないことが確認された際には、改めて、取締役就任の是非を株主に諮るべきと考えたためとした。

「問題ない」と断言しながら、第三者委員会による追加調査、検証を実施するとした。その後、現在に至るまで、第三者委員会の設置・人選、調査検証の途中経過など一切発表していない。本当に設置したのだろうか。

そのうえで、総会後に内山氏を取締役でない会長に任命した。

同社では今回 の臨時総会前に、同氏を会長とした理由として下記を挙げた。 (上場企業で、こんな理由が通るだろうか?)



①当社事業の特徴として長期間にわたるプロジェクトが多く、経営者として最前線で活動を行っていた内山氏がいなくなることでの当社事業及び業績への影響を最小限にする
②社長就任以来20年間、会社を牽引してきた内山氏が退くことへの取引先・従業員の不安は極めて大きく、当社事業へも大きな影響があると考えられたため
会長としての役割
取締役・執行役員ではなく、当然ながら取締役会・執行役員会には参加せず、現経営へも関与なし
執行サイドが必要に応じ、従前の経験・知見に基づく事業に関連したアドバイスを依頼

Oasisはこの人事が株主への背信行為であり、「社外取締役は経営陣の悪質な行為を見逃した」と主張し、12月に社外取締役の交代を求めて臨時総会の招集を請求した。

米議決権行使助言会社Institutional Shareholder Services は6人全員の解任に賛成を推奨していた。現取締役会が創業家である内山家の強い影響力を克服する能力がなく、取締役会の総点検が必要だなどとしている。

引頭社外取締役は2月20日にガバナンスに関する考え方が会社とは大きく異なるた辞任した。会社側は 臨時総会前には単に「自己都合」としていたが、本人からの申し出を受け、総会後に修正した。解任提案からは除外された。 
会社批判での辞任と、自己都合辞任とは全く異なる。臨時総会での投票を勘案して辞任理由を誤魔化したと見られてもおかしくない。    

定時総会と今回の臨時総会の人事案は下記の通り。

2022/6/23 定時総会

2022/6/1  2022/6/23
第5号議案 取締役10名選任の件 議案の一部撤回 総会 総会後
社内

内山高一(留任)
岡田隆夫(留任)
浅野隆史(留任)
土畑雅志(留任)
内山高一(撤回)
岡田隆夫
浅野隆史
土畑雅志

岡田隆

浅野隆
土畑雅
内山高一会長(非取締役)
社外 杉田伸樹(留任)
山添 茂(留任)
遠藤邦夫(留任)
引頭麻美(留任)
三品和広(新任)
大石歌織(新任)



同左



同左


2023/2/24 臨時総会  赤字は解任、辞任、非選任
       

2022/6/23総会選任  2023/2/9 臨時株主総会招集 2023/2/24 臨時総会
会社提案 株主提案 会社側 OASIS側
社内

岡田隆夫社長
浅野隆史専務

土畑雅志専務
岡田隆夫
浅野隆史
土畑雅志
社外
杉田伸樹
山添 茂
遠藤邦夫
引頭麻美
三品和広
大石歌織
(追加選任)
岩﨑 二郎
海部 美知
(解任)
杉田伸樹
山添 茂
遠藤邦夫
引頭麻美
 
(2/20 辞任)
三品和広
大石歌織
(選任)
浅見 明彦
Torsten Gessner
Clark Graninger
海野 薫
Ryan Wilson
嶋田 亜子
遠藤邦夫
(後、辞任)

三品和広
Torsten Gessner
Clark Graninger
海野 薫
嶋田 亜子


解任された杉田取締役は立命館大特別任用教授、山添取締役(
取締役会議長)は元丸紅副会長、大石取締役は弁護士、辞任した引頭取締役は大和総研。

OASIS側推薦で選任されたのは、エレベーター業界出身のTorsten Gessner、金融業界の経験が長いClark Graninger、弁護士の海野薫、知財やグローバルM&Aに詳しい嶋田亜子の4氏。

最終的に取締役は、会社側提案が5名(うち社内が3名)、OASIS側提案が4名となる。

下記の通り、株主提案の否決は数%の差(0.23%ポイント~3.41%ポイント)で、全てが通る可能性もあった。


なお、OASISからは、人事に加え、4つの提案をしており、下記の通りとなった。会社側はすべて反対していた。

社外取締役の個人別基本報酬額:基本報酬を1,250万円とする。可決

社外取締役に対する事後交付型株式報酬付与 可決

社外取締役に対する株価条件付 事後交付型株式報酬付与 否決

社内取締役に対する株価条件付 事後交付型株式報酬の付与 否決

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