原子力規制委員会は2月8日の定例会合で、原発の60年超運転に向けた新たな規制制度案を正式決定するかを議論したが、石渡明委員が「安全側への改変とは言えない」と述べて反対し、決定を見送った。来週、定例会で改めて議論する。
付記原子力規制委員会は2月13日夜に臨時の委員会を開き、運転開始から60年を超える原子力発電所の安全規制の新たな制度案と原子炉等規制法の改正条文案を多数決で了承した。
石渡明委員が反対するなか、山中伸介委員長と他の委員の計4人が賛成した。政府は今国会に関連法案の提出をめざす。
原子力規制委員会は2022年12月21日、原子力発電所の運転開始から30年以降、10年以内ごとに繰り返し運転を認可する新ルール案を了承した。現行ルールを上回る「60年超」運転が可能になる。
現行ルールでは、運転開始から40年を迎える原発は、規制委の運転延長の審査に合格した場合に限り1回のみ最長20年の延長が認可される。また、これとは別に、運転開始から30年以降の原発は、10年ごとに「高経年化対策」も実施されている。
新ルールはこれらを一本化する内容で、規制委は電力会社に対し、施設の劣化を管理する長期計画の作成を義務づけ、安全性を確認すれば運転延長を繰り返し認可する。
福島原発事故以前の規制に戻すこととなる。
2023/1/4 原発運転期間延長
この時点では、石渡明委員を含め、全員が賛成した。
一般からの意見公募を経て、現行ルールを定めた原子炉等規制法の改正案について通常国会への提出を目指した。
今回の定例会合では、国民からの意見公募(パブリックコメント)の結果を受けて、最終案を議論した。
委員5人のうち、山中伸介委員長ら4人は案に賛成した。
しかし、石渡委員は反対を表明した。
「今回の改変は科学的な新知見があって変えるものではない。運転期間を法律から落とすことになり、安全側への改変とは言えない。われわれが自ら進んで法改正する必要はない」 と述べた。
現在、審査中の10基は電力会社の説明が不十分で長引いているケースがほとんど。地震津波対策の審査を担当する石渡委員は「いたずらに審査を延ばしているのではなく、残念ながら時間がかかっている。審査が長引くほど、その分だけ運転期間が延び、将来的により高経年化(老朽化)した原発が動くことになる」と指摘した。
原子力規制委員会設置法は委員会の議事について「出席者の過半数」で決めると規定する。過去には多数決をとって決定した例がある。
しかし、山中委員長は「私はこれまで多数決を一度もとったことがない。時間的余裕があれば議論を尽くしたい」と強調、改めて石渡氏と議論する考えを示した。
政府は昨年12月、原発の再稼働審査や司法判断などで停止した期間を運転年数から除外し、実質的に60年超の運転を可能にする方針を決定、関連法の改正案を今国会に提出することを目指している。
付記
2月10日、「GX実現に向けた基本方針」が閣議決定された。
気候変動問題への対応に加え、ロシア連邦によるウクライナ侵略を受け、国民生活及び経済活動の基盤となるエネルギー安定供給を確保するとともに、経済成長を同時に実現するため、主に以下二点の取組を進める。
①エネルギー安定供給の確保に向け、徹底した省エネに加え、再エネや原子力などのエネルギー自給率の向上に資する脱炭素電源への転換などGXに向けた脱炭素の取組を進めること。
②GXの実現に向け、「GX経済移行債」等を活用した大胆な先行投資支援、カーボンプライシングによるGX投資先行インセンティブ、新たな金融手法の活用などを含む「成長志向型カーボンプライシング構想」の実現・実行を行うこと。
原子力については、下記の通り。
原子力の活用
安全性の確保を大前提に、廃炉を決定した原発の敷地内での次世代革新炉への建て替えを具体化する。その他の開発・建設は、各地域における再稼働状況や理解確保等の進展等、今後の状況を踏まえて検討していく。
厳格な安全審査を前提に、40年+20年の運転期間制限を設けた上で、一定の停止期間に限り、追加的な延長を認める。その他、核燃料サイクル推進、廃炉の着実かつ効率的な実現に向けた知見の共有や資金確保等の仕組みの整備や最終処分の実現に向けた国主導での国民理解の促進や自治体等への主体的な働き掛けの抜本強化を行う。
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