米国、中国の気球開発企業など6社をEntity Listに追加

| コメント(0)

米国商務省Bureau of Industry and Security (BIS) は2月10日の公告で、中国軍の近代化の努力、特に飛行船と気球を含む航空宇宙プログラムに関するものを支える中国企業6社を米製品輸出禁止リストである「Entity List」に追加することを発表した。

Entity Listは輸出管理法(規則 744.11(b) )に基づき安保上懸念がある企業を指定するもので、海外企業を含む企業が米国のハイテク製品や技術を同社に輸出する場合は商務省の許可が必要になり、原則却下される。

米軍は2月4日、アメリカ本土を横断していた中国の気球を南部サウスカロライナ州の沖合の上空で撃墜し、FBIが海中などから回収した残骸の分析を進めてい る。バイデン政権は、この気球は中国軍の偵察用で、軍と直接関係がある企業が製造に関わっているとして、6社をEntity Listに追加した。

米紙Washington Post(電子版)は2月14日、米軍戦闘機が4日に撃墜した中国の偵察気球について、中国南部・海南島から打ち上げられ、直後から米軍と情報機関が太平洋を飛行する気球を約1週間にわたり追跡し続けていたと報じた。気球は中国空軍によるもので、太平洋地域の米軍基地の偵察が目的だったとみられ、海南島の基地から離陸後、太平洋を東方へ飛行していたが、風の影響で予定の針路から外れ、途中で北方に進路を変えた。その後米アラスカ州のアリューシャン列島上空を通過しカナダにいったん入った後、米本土を横断し、4日に南部サウスカロライナ州沖で撃墜された。

中国政府はこの気球を気象観測用の民間飛行船と主張している。


なお、米国家安全保障会議の戦略広報調整官は14日の記者会見で、米軍戦闘機が10日から3日連続で撃墜した飛行物体について「商業か研究機関に関連した無害なものとみられる」と述べ、物体が中国の偵察気球だったことを示す兆候は現時点でないとの見方を示した。

発表では、「中国の高高度気球の使用は、我々の主権を侵害し、米国の国家安全保障を脅かしている。今日の行動は、米国の国家安全保障と主権を侵害しようとする団体が、米国の技術へのアクセスを遮断されることを明確にしている」と述べている。

リストに追加された企業は次の通りで、いずれも中国軍が偵察や情報収集で使用する気球や飛行船の製造など、航空宇宙計画の分野で中国軍を支援しているとしている。

北京南京航空宇宙技術(Beijing Nanjiang Aerospace Technology Co., Ltd.)
中国電子科技集団公司第48研究所(China Electronics Technology Group Corporation 48th Research Institute)
鷹門航空科技集団(Eagles Men Aviation Science and Technology Group Co., Ltd. )
東莞凌空遙感科技(Dongguan Lingkong Remote Sensing Technology Co., Ltd.)
廣州天海翔航空科技(Guangzhou Tian-Hai-Xiang Aviation Technology Co., Ltd.)
山西鷹門航空科技集団(Shanxi Eagles Men Aviation Science and Technology Group Co., Ltd. )

北京南京航空宇宙技術は、宇宙永久停泊飛行体、往復再利用飛行体および宇宙輸送ツールを開発する会社で、2015年に中国で初めて、高さおよそ10万メートルまでの宇宙空間に近い高度を飛行できる軍民共用の飛行船を北京市内の大学などと共同で開発した。当時の報道では、飛行船には地上と通信したり、地上を観測したりする機能が備わっていて、離着陸や飛行を遠隔で操作できるという。

中国電子科技集団公司第48研究所 は、公式ホームページによると、マイクロ電子素材・太陽電池・光電子材料の研究開発および生産のための国家級専門機関で、中国内の主要半導体装備の供給と太陽電池の設計および加工技術を保有している国家ハイテク産業化モデル工程基地という。

鷹門航空科技集団(EMAST) は偵察気球を開発した企業とみられる。2004年に北京で設立され、北京航空宇宙大学の武哲教授が代表者になっている。南方日報は武教授が2019年に成層圏である高度2万メートル上空に無人気球を飛ばして世界一周に成功したと報道していた。同社が知能型ドローンの製造、衛星航法サービス、通信装備開発などのプロジェクトを手掛けているとされる。

東莞凌空遥感科技は2019年1月に設立され、設立目的は飛行船遠隔探知技術とイメージセンサーの開発、高分子フィルム素材の研究などとなっている。同社も武教授が監事に入っている。

廣州天海翔航空科技は軍用無人機を開発している。(中国は偵察気球ではなく気象観測用民間飛行船だと主張している。) 関連企業の製品目録を調べると気球・無人機から太陽光・イメージセンサー・半導体まで網羅されている。


山西鷹門航空科技集団はEMASTが100%株式を所有する子会社である。

(以上、各社概要は韓国の中央日報日本語版2023.02.16 による)


今回の指定を受け、中国商務部の報道官は2月14日、コメントを発表した。

米国は中国企業6社が『中国軍の飛行船など航空宇宙事業への支援を行った』として、この6社を輸出規制対象の『エンティティリスト』に加えた。中国はこれに対し断固たる反対を表明する 。

長期間にわたり、米国は国家安全保障の概念を拡大し、輸出規制措置を乱用し、他国の企業を抑圧・抑制し、正常な経済貿易往来を人為的に妨害し、企業の合法的権利に重大な損害を与え、グローバルサプライチェーン・産業チェーンの安全と安定を破壊し、世界経済の回復と発展を阻害してきた。

中国は、米国が中国企業に対する理不尽な抑圧を停止することを望むとともに、今後必要な措置を取って、中国企業の合法的権利を断固守り抜く 。

昨年5月以降、米国は本土で大量の高空気球を飛行させて(気球が)持続して全世界を回っており、中国関連部署の承認なく、新疆・チベットなどを含めて少なくとも10回余り中国領空を不法飛行した。

コメントする

月別 アーカイブ