三菱ケミカルグループ、経営方針「Forging the future 未来を拓く」に関する今後の実行計画

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三菱ケミカルグループは2月24日、2021年度から2025年度までの経営方針「Forging the future 未来を拓く」に基づき、今後の詳細な実行計画を明らかにした。

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三菱ケミカルホールディングスは2021年12月1日、新経営方針「Forging the future 未来を拓く」を策定した。

経営戦略における最重要ポイントとして下記を挙げた。

  1.市場の成長性、競争力、サステナビリティにフォーカスしたポートフォリオ
  2.分離・再編し、独立化を進める事業
  3.グループ全体におけるコスト構造改革
  4.戦略遂行のためのスリムな組織
  5.戦略的なキャピタル・アロケーション


3つの評価基準(市場の魅力度、グループの強み、カーボンニュートラル)に基づき注力事業を選別した。

 1) 最重要戦略市場

①エレクトロニクス
 EV:軽量化材料、車載電池材料、Wide Band Gap半導体
 デジタル:半導体材料、高速通信関係

②ライフサイエンス
 ヘルスケア
 食品:機能性食品材料、ニュートリション、長期保存材料


 2) 強みを有する市場は下記の通り。

①強固な機能性素材事業群
 
 ケミカル:MMA、機能性モノマー

 ポリマー:バイオプラスチック、EVOH、機能性樹脂

 フィルム:光学フィルム、バリアフィルム、工業フィルム

 モールディングマテリアル:炭素繊維・複合材料、スーパーエンプラ

②産業ガス

 3)残る石油化学事業及び炭素事業については、分離・再編し、独立化を進めることで、国内基礎化学産業の再編を主導する。

2024年3月期をめどに分離する。他社との事業統合などを検討する。両事業とも、採算が低く、温暖化ガスを大量に排出する。業界も伸びていない。

2021/12/2 三菱ケミカルホールディングス、石油化学事業及び炭素事業を分離・再編へ

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三菱ケミカルグループは2月24日、2021年度から2025年度までの経営方針「Forging the future 未来を拓く」に基づき、今後の詳細な実行計画を明らかにした。

同社のビジネスの成長とパフォーマンスの主要ドライバー

機能商品
すべての製品ラインアップをグローバル展開
・ マーケット志向型の組織に転換
産業ガス
世界4極で成長拡大
競争力さらなる強化
ヘルスケア
日米を中心とした重点製品の価値最大化
開発・販売におけるパートナーシップ強化とアライアンス構築

メディカゴ社の事業撤退など、一部事業の再編
効率的な研究開発投資

MMA
世界ナンバーワンの地位を確立
アルファ展開拡大


産業ガスとMMAは既に一定市場を押さえているが、それそれで国際競争が熾烈な機能商品で「
すべての製品ラインアップをグローバル展開 」するのは難しいのではないか。(どれを選択するかが難しいが。)

ヘルスケアをどのように展開していくかが問題だろう。

田辺三菱製薬は2月3日、Medicago Inc.の全事業から撤退することを決定したと発表した。

植物由来のウイルス様粒子(VLP:Virus Like Particle)技術を用いた新規ワクチンの研究開発に特化したバイオ医薬品会社として注目されたが、量産できず、撤退を決めた。減損損失480億円を計上する。

2023/2/4 田辺三菱製薬、新型コロナワクチンから撤退、カナダ子会社を精算へ 

・現在の同社の利益のほとんどは過去の技術供与のライセンス収入である。

この内の過半を占める多発性硬化症治療剤「ジレニア」 (年間500億円程度の収益)については、特許上の紛争で3年間、収益計上を取りやめていた。

今回、仲裁廷より同社に有利な仲裁判断を受領し、遡及して合計1,260億円の利益を計上する。

2023/12/15 国際商業会議所の仲裁判断で田辺三菱製薬のロイヤリティ収入が復旧

しかし、これは前身の吉富製薬は1997年9月にライセンスしたもので、いつまでも続かない。

・2020年9月中間決算では、田辺三菱製薬が買収したイスラエルのNeuroDerm Ltd. が開発を進めているパーキンソン病の治療薬の仕掛研究開発費つい845億円減損損失を計上している。

(なお、開発は継続しており、2023年1月10日に、事前に設定した重要な評価項目を達成するトップライン結果を取得したと発表した。)

2020/11/7 三菱ケミカルHD、医薬品で減損損失計上

・医薬品は多額の投資をして開発に成功し、登録が取れ、その上で他社との競争に打ち勝って初めて利益が計上できる。買収には数兆円単位の資金が必要である。実質的にこれからのスタートで、ヘルスケアを事業の柱の一つにするのは簡単ではない。


成長とサステナビリティの期待に合致しない事業からはエグジットする。

石化事業については当初案の分離・再編から、JV化に変更した。ギルソン社長は、「日本の主要石化プレーヤーとの統合のほか、新規株式公開や株式売却も選択肢で、中期的なゴールは石化・炭素事業を完全に切り離すこと」と述べた。

日本の石化事業が国際競争力を持たないのは明らかである。

但し日本の市場の特殊性(需要家が在庫を持たないカンバン方式、需要に合わせたグレード開発等)から輸入品が市場を押さえることにはならない。工場数を減らして能力を国内需要相当まで落とせば、収益は期待できる。

雇用の問題もあり、工場が減らないのが問題で、恐らく当初の売却案が潰れたのもこれが原因ではないかと思われる。

買い手は商権が欲しいのであって工場が欲しいのではない。

三菱の場合、鹿島と水島を持つほか、ポリエチレンでは旧日本ポリオレフィン(川崎、大分)とのJV、ポリプロの場合はチッソ(千葉、四日市)とのJVであり、簡単ではない。

さらなるJV化は解決に結びつくであろうか。




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