1月25、26日に開かれた衆院本会議の代表質問で、自民、日本維新の会、国民民主の3党がそろって、子どもの多い世帯ほど所得税が軽減される「N分N乗方式」の導入に言及した。
「N分N乗方式」はフランスで1946年に始まった税制で、フランスが先の大戦後、戦争で減った人口を増やそうと導入した。英語ではfamily-quotient system(家族係数システム)という。
日本の所得税が個人の所得に課税するのに対し、世帯単位なのが特徴で、世帯の総所得を家族の人数で割り出した「所得」に課税するため、子どもが多いほど税率は低くなる。
フランスでは、世帯所得を家族の係数である「N」で割り、家族係数1あたりの所得税額を算出する。この所得税額に再び「N」をかけ、世帯全体の所得税額を算出する。「N分N乗」
子供は2人までは各0.5、3人目以降は各1で計算する。
「N」は夫婦だけなら2,子供1人なら2.5(2+0.5)、2人なら3(2+0.5+0.5)、子ども3人なら4(2+0.5+0.5+1) になる。
子供が多いほど税金が安くなり、少子化対策に有効とされる。
1月25日の衆院本会議で自民党の茂木幹事長はN分N乗方式を「画期的な税制」と指摘した。26日には日本維新の会の馬場代表が 「日本は人口危機という有事に直面している。個人ごとの課税方式を改め、N分N乗方式を導入すべきだ」と主張、国民民主党の玉木代表も「政府として検討すべきだ」と述べた。
今後、岸田文雄首相が掲げた「異次元の少子化対策」を巡り、この方式の導入が与野党の政策連携のテーマとなる可能性があるが、首相官邸は自民党側から「事前の説明を受けていない」としており、党主導の発信に警戒感も広がっているとされる。
国民民主党は、日本の税制のもとで年収1200万円の世帯(片働き及び共稼ぎ、夫婦と子供2人:N=3)を例に所得税を試算している。
片働きの場合 112万円
共稼ぎの場合 66万円(夫61万円、妻5万円)これに対し、N分N乗では48万円となり、現方式での片働きと比べ64万円、共稼ぎと比べ18万円だけ税金が安くなる。
因みに、子供が3人になった場合(N=4)、税金は38万円となり、子供1人増で税金が10万円減ることになる。
(実際には子供が3人になった場合、扶養家族控除が増えるため、現在の税金もN分N乗ケースの計算も異なる。)
計算の詳細は下記の通り。 課税所得の計算は省略(社会保険料は年収の15%)
例1 | 例2 | 例3 N分N乗 N=3 | 例4 N=4 | ||||
夫 | 妻 | 合計 | |||||
年収 | 1200万円 | 900万円 | 300万円 | 1200万円 | 1200万円 | 1200万円 | |
課税所得 | 762万円 | 517万円 | 109万円 | 626万円 | 762/3=254万円 | 762/4=190.5万円 | |
税金 | 税率 | (23%) | (20%) | (5%) | (10%) | (5%) | |
計算 | 175.3 | 103.4 | 5.45 | 25.4 | 9.5 | ||
控除 | -63.6 | -42.8 | 0 | -9.75 | 0 | ||
合計 | 112万円 | 61万円 | 5万円 | 66万円 | 16万円x3=48万円 | 9.5万円x4=38万円 | |
例3との差 | 64万円 | 18万円 | |||||
例4との差 | 74万円 | 28万円 |
税額計算
課税所得 | 税率 | 控除額 |
~1,949千円 | 5% | ゼロ |
1,950~3,299千円 | 10% | 97,500円 |
3,300~6,949千円 | 20% | 427,500円 |
6,950~8,999千円 | 23% | 636,000円 |
9,000~17,999千円 | 33% | 1,536,000円 |
18,000~39,999千円 | 40% | 2,796,000円 |
40,000千円以上 | 45% | 4,796,000円 |
コメントする