ジャパンディスプレイ、株式転換や債権放棄で無借金会社へ

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ジャパンディスプレイ(JDI)は2月10日、筆頭株主のいちごトラストの支援をうけ、借入金1016億円を圧縮し、ゼロにすると発表した。

加えて、いちごを引受先とする新株予約権を発行し、最大1735億円を調達する。


財務体質を強化するのと同時に成長投資の原資を確保する。

2026年に向けた基本方針は下記の通り。

 https://www.j-display.com/ir/news/pdf/20230210_j_2235353_02.pdf

 
①いちごトラストから新規に200億円を借入れ、筆頭株主のINCJ(元 産業革新機構)からの同額の借入金を弁済する。

②上記①の実行後にINCJの保有するA種優先株式の全ての無償取得、消却

③これらの実行後に、INCJ からの債務536.8億円をいちごトラストに譲渡

(①~③で、INCJ は貸付金736.8億円を実質的にいちごを通じて返済を受け、見返りにINCJの優先株を無償で放棄する。)

④その後、いちごトラストの貸付金債権合計1016.8億円のうち、150億円を債権放棄 (残る債権866.9億円)

その後、いちごトラストの貸付金債権合計 868億円を資の目的とするDES(Debt Equity Swap):普通株19.3億株と交換

(いちごは200億円を追加貸付した上で、INCJの貸付金を肩代わりし、すべての貸付金を放棄して、いちごの普通株19.3億株を無償で受け取る。)

この取引のすべてが完了した時点で、いちごトラストの議決権割合は現状の49.28%から91.57%になる。その場合、東京証券取引所の上場維持基準に抵触する可能性があり、JDIのCEOは「どこかのタイミングでいちごの保有株を減らす方法を考えている」と説明した。

まとめると、借入金、株式は下記のとおりとなる。

借入金 株式
INCJ いちご 合計 INCJ いちご 合計
優先株 普通株 優先株 普通株 新株予約 普通株
2022/12/末 736.8 280 1016.8億円 4.5億株 2.1億株 29.7億株 4.5億株 6.3億株 47.2億株
借入/返済 -200 200
譲渡 -536.8 536.8 -4.5億株 -4.5億株
債権放棄 -150
(小計) (0) (866.8) 866.5億円
転換 -6.6億株 +6.6億株
Debt/Equity Swap -866.8 0 +19.3億株 +19.3億株
予約 +38.5億株 +38.5億株
残高 0 0 0 0 2.1億株 23.1億株 30.4億株 38.5億株 6.3億株 100.4億株

ーーーーーーー

経緯は次の通り。

経営再建中のジャパンディスプレイは2019年8月9日、4-6月期の決算を発表した。

顧客の在庫調整や米中貿易摩擦の影響を受けた需要減により売上高が減少したほか、白山工場の減損を含む517億円の事業構造改善費用を特別損失として計上した。

この結果、連結純損益は833億円の赤字となり、債務超過となった。

2019/8/14 JDIが債務超過に


ジャパンディスプレイ(JDI)は2019年12月12日、
独立系投資顧問のいちごアセットグループからの資金調達に関する基本合意書を締結したと発表した。

いちごアセットは、日本開発銀行客員研究員やモルガン・スタンレー証券の株式統括本部長を務めたScott Callon 氏が2006年5月に設立した

社名の「いちご」は千利休が説いた茶人の心構え「一期一会」から採った。経営理念は、 「日本を世界一豊かに。その未来へ心を尽くす一期一会の『いちご』」である。

Callon 社長の投資スタンスは長期保有が原則とされる。

2019/12/19 ジャパンディスプレイ、いちごアセットグループからの資金調達に関する基本合意書締結 


JDIは2020年7月21日、いちごアセットからの追加出資受け入れで最終契約を締結したと発表した。

  2020/7/21最終契約
払い込み 金額 転換 株数
B種優先株 2020/3 504億円 @50 10.08億株
D種優先株 2020/8/28 50億円 @50 1.00億株
C種優先株        
E種優先株 2020/10~
2024/6
554億円 @24 23.08億株
合計   1108億円 @32.44 34.16億株


2020/7/24 JDI、いちごアセットと追加出資受け入れの最終契約締結

ジャパンディスプレイ(JDI) は2022年1月12日、資本金を2152億円から1億円に減資すると発表した。

減資の2151億円と資本準備金の247億円、その他資本剰余金の一部で累積赤字の2882億円を一掃する。

資本金を1億円とすることで、税務上は「中小企業」(資本金1億円以下)と位置づけられ、軽減税率適用、年800万円以下の交際費枠等々、いろいろのメリットを得る。

資本勘定の異動は次の通り(百万円)。
  処分前 処分 処分後
資本金 215,223 -215,123 100
資本準備金 24,660 -24,660 0
利益剰余金 -288,193 288,193 0
その他資本剰余金 73,310 -48,410 24,900
合計 25,000 0 25,000

 
2022/1/14 JDI、減資で累損一掃


同社の損益推移は次の通り。

最近は、世界的なインフレ高進による民生機器の需要減ウクライナ情勢や中国のコロナウイルス対策に起因するサプライチェーンの混半導体等の部材不足の継部材エネルギー輸送費の高騰等によ厳しい経営環境となっている。

スマートフォン向けなどの需要が鈍く、在庫調整が長引いている。


ジャパンディスプレイ(JDI) は2022年1月12日、資本金を2152億円から1億円に減資すると発表した。

減資の2151億円と資本準備金の247億円、その他資本剰余金の一部で累積赤字の2882億円を一掃する。

2022/1/14 JDI、減資で累損一掃

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