米FRB が0.25%利上げ

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米連邦準備理事会(FRB)は3月21~22日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)で、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0.25%ポイント引き上げ 4.75~5.00%とした。

一部では、米銀2行(3月10日のSilicon Valley Bank、12日のSignature Bank)の経営破綻を受け、追加利上げを一時停止する可能性も噂されていたが、金融システム不安がくすぶるなかでも、インフレを抑えこむ決意を打ち出した。

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2018/12 2.25%~2.50% +0.25%
2019/7 2.00%~2.25% -0.25%
2019/9 1.75%~2.00% -0.25%
2019/10 1.50%~1.75% -0.25%
2020/3 1.00%~1.25% -0.50%
2020/3 0.00%~0.25% -1.00%
2022/3 0.25%~0.50% +0.25%
2022/5 0.75%~1.00% +0.50%
2022/6 1.50%~1.75% +0.75%
2022/7 2.25%~2.50% +0.75%
2022/9 3.00%~3.25% +0.75%
2022/11 3.75%~4.00% +0.75%
2022/12 4.25%~4.50% +0.50%
2023/2 4.50%~4.75% +0.25%
2023/3 4.75%~5.00% +0.25%

決定は全会一致。ただ、金融市場が混乱する中、利上げが近く一時停止される可能性があることを示唆した。

インフレを抑制するために今年あと1回の利上げが必要と想定、2023年末の政策金利の予想中央値は5.1%で、昨年12月時から変わらなかった。

しかし、2022年3月のゼロ金利解除以降の声明に「継続的な利上げが適切」との文言を含めていたが、今回、この文言を削除し、代わりに「幾分の追加的な金融政策引き締めが適切になるかもしれない」との文言を採用した。

あと1回の0.25%ポイントの利上げ後は、利上げがいったん停止される可能性があることが示唆された。

物価情勢について「インフレ率は引き続き高止まりしている」と指摘し、インフレ率を2%に引き下げることに引き続き強くコミットすると述べた。但し、「重要なことはインフレ率を2%に引き下げるのに十分な引き締め政策を取ることだ」と強調し、引き締めは利上げだけでなく、金融環境の引き締まりによってももたらされる可能性があるとした。

労働市場については「雇用の伸びはここ数カ月間で上向き、堅調なペースで進んでいる」としている。


パウエル議長は記者会見で金融システム不安に言及し、「この問題がどれだけ深刻で持続的かを検証する」とし、「マクロ経済に重大な影響を及ぼす可能性は十分にあり、それを政策に踏まえることになる」と述べた。

一方で、米金融システムの安定性について繰り返し自信を表明した。

Silicon Valley Bankの経営は大失敗だった。この銀行は非常に急速に事業を拡大させ、流動性リスクと金利リスクにさらした上、そのリスクを回避することをしなかった。保険で保護されない預金の割合や国債などの金利リスクを抱えた有価証券の保有量が異常に高く、アメリカの銀行システム全体の問題ではない。」 

Silicon Valley Bankはスタートアップ業界を顧客としているが、ここ数年で預金残高を急増させ、2018年の約4倍にあたる約27兆円の預金残高となっていた。
同行は2022年からこれを長期債を中心に投資したが、FRBによる繰り返しの利上げで価値が下がり、含み損が増大した。

満期までもっておれば損失は発生しないが、顧客からの解約を受け、売却せざるを得なくなり、巨額の損失を出した。

これが明らかになり、不安を感じた顧客による預金の引き出しが相次ぎ、破綻した。「過度な短期調達、長期運用」が破綻の原因で、事前に問題が指摘されていたが、同行は対策を打たなかった。

「FRBは財務省などと協力して、断固とした行動を取った。これらの行動はすべての預金が安全であることを示す」とし、Silicon Valley Bankの破綻は経営が「ひどく失敗」していたことが原因で、銀行部門の全般的な脆弱性を示すものではないと強調した。

米国では金融機関が加盟する連邦預金保険公社(FDIC)が1口座あたり25万ドルを上限に保護する仕組みがあるが、 Silicon Valley Bank2022年末の預金残高の89%は預金保護の対象外だった。

今回、米規制当局は金融システムの不安を払拭するため、Silicon Valley BankとSignature Bank両行の預金を全額保護する措置をとった。


なお、イエレン米財務長官は3月22日の上院小委員会公聴会で、銀行破綻時の預金の全額保護は検討していないと述べた。

今回の2行の全額保護は例外的な措置であり、今後も個別の影響を踏まえて判断する。

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