公取委は2月28日、東京五輪・パラリンピックの運営業務をめぐる談合事件で、電通グループ、博報堂など6社と、各社の担当幹部と大会組織委員会元次長の計7人を独禁法違反容疑で検事総長に刑事告発した。
森元次長と電通など6社の幹部らは2018年2~7月、組織委が競争入札や随意契約で競技会場ごとに発注するテスト大会や本大会の運営業務について、受注予定業者をあらかじめ決めるなどして競争を制限した疑いが持たれている。
テスト大会の計画立案業務を落札した企業はその後、随意契約の形で同じ競技の本大会の運営業務なども受注しており、公正取引委員会は東京地検特捜部と連携して、各社がより金額が大きい本大会の業務の受注を視野に談合を行っていた疑いがあるとみて実態解明を進めていた。
公取委は、談合の対象となる市場規模は437億円に上ることを明らかにした。
東京地検特捜部はこれを受け、同日、起訴した。
告発した法人は、電通、博報堂、東急エージェンシー、イベント制作会社の「セレスポ」と「セイムトゥー」、番組制作会社「フジクリエイティブコーポレーション(FCC)」の計6社。
業務を受注した9社・1共同事業体のうち、広告3位「ADK」(アサツー ディ・ケイ)も談合への関与を認定されたが、課徴金減免制度(リーニエンシー)に基づいて違反行為を最初に公取委に申告したため告発を免れた。残る広告大手「大広」と電通のグループ企業「電通ライブ」の2社は、談合に関与しなかったとして告発対象から外れた。
個人では、特捜部が今月8日に同容疑で逮捕した組織委大会運営局の元次長・森泰夫(56)、電通の元スポーツ局長補・逸見晃治(55)、セレスポ専務の鎌田義次(59)、FCC専務の藤野昌彦(63)の4容疑者と、在宅で捜査してきた博報堂DYメディアパートナーズの横溝健一郎元スポーツビジネス局長(55)、東急エージェンシーの安田光夫執行役員(60)、セイムトゥーの海野雅生社長(56)の3人の合計7名を告発した。
公正取引委員会の奥村豪第二特別審査長は「本件は発注者である組織委員会側の容疑者と、広告代理店業界の売上高第1位の電通が主導していた。巨大な国家的プロジェクトである東京2020大会の運営業務などを対象とした入札談合で、社会的な影響が大きい。市場規模も大きく、国民生活に広範な影響を及ぼす悪質かつ重大な事案に該当すると判断した」と述べた。
同罪の法人に対する罰則は5億円以下の罰金。個人は5年以下の懲役か500万円以下の罰金となる。
公取委による刑事告発は、2020年12月の医薬品納入をめぐる入札談合事件以来、約2年2カ月ぶり。
公取委は2020年12月9日、医薬品卸大手4社「地域医療機能推進機構」が全国で運営する57の病院の医薬品入札で談合したとされる事件で、アルフレッサ、東邦薬品、スズケンの3社と、各社の幹部ら7人を、検事総長に告発したと発表した。メディセオも談合に関与していたが、課徴金減免制度(リーニエンシー)で事前に違反を自主申告しており、告発されなかった。
3社は2021年6月独占禁止法違反の罪で、東京地裁からそれぞれ罰金2億5000万円の有罪判決を受け、公取委からアルフレッサに1億7500万円余り、東邦薬品に1億6100万円余り、スズケンに8600万円余りの課徴金納付命令を受けた。
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