韓国LGグループ創業家のお家騒動

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韓国LGグループ具光謨会長の義理の母と妹2人が2月28日、ソウルの裁判所にLGグループの具本茂前会長の2018年5月の逝去に伴う相続の取り消しを求める訴えを行った。

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LGグループの具本茂前会長は2018年5月20日に死去した。73歳だった。具会長は3代目で、LGを20年余りでテクノロジーおよび化学分野の世界的企業に育て上げた。

グループの持ち株会社・LGは6月29日、臨時株主総会で具光謨・LG電子常務を取締役に選任し、総会後の取締役会で代表取締役会長に選出した。

具光謨氏は具本茂会長の弟の具本綾氏の長男で、事故で息子を亡くした具本茂氏が2004年に養子に迎えた。 初代以降、長男がグループの会長を引き継ぐことになっており、後継者として養子に迎えた。
グループの中核会社・LG電子で常務として、B2B(企業間取引)事業本部の Information Display事業部長を務めていた。

2018/7/7 韓国のLG、具光謨氏が4代目の会長就任 


今回、訴訟を行ったのは具本茂前会長の妻の金英植と長女と次女の3人。

具本茂前会長はLG Groupの株の11.28%を所有していた。

逝去に伴い、具光謨現会長はこのうちの8.76%を相続し、保有の 6.24株と合わせ15%とし、最大株主となった。現在の持株は15.95%である。

長女が2.01%(3300億ウオン相当)、次女が0.51%(830億ウオン相当)を相続した。妻の金英植は株は相続していない。

LGによると、数回の交渉の結果、妻と2人の娘は上記のLG株式のほか不動産や美術品など合計5000億ウォン相当の遺産を相続した。(1ウオンは約0.1円)

遺産総額は2兆ウオンとされ、現会長はそのうち1兆5000億 ウオン、他3人が合計5000億ウオンを相続したとみられる。

現会長は、相続税7200億ウオンを6年分割で支払っており、最終分を本年末に支払う。 (全体の相続税は9215億ウォン)

2020年10月に死去したサムスン電子の李健熙前会長の相続税は12兆ウォンである。

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今回、3人は遺産を法律に基づき遺産の再配分を求める訴訟を起こした。 訴訟の理由については明らかでない。

韓国では下記による相続が可能である。

1. 指定分割 遺言書による分割
2. 協議分割 相続人全員で協議
3. 調停分割 家庭裁判所の調停
4. 審判分割 裁判官による決定

韓国の相続法では相続者は下記のとおりとなっている。

第一順位 配偶者と直系卑属 配偶者は常に他の相続人より1.5倍 
第二順位 配偶者と直系尊属  直系卑属のいない場合
  直系卑属、直系尊属がいない場合は全額を配偶者が相続 する。
第三順位 兄弟姉妹 配偶者も直系卑属、尊属もなしの場合
第四順位 四親等内親族

韓国紙は、原告が「養子は相続権無し」としていると報じているが、これは誤りで、養子も相続権を持つ。

相続法に基づけば、相続人は配偶者と子供3人(養子1、実子2)のため、配偶者が3/9、子供3人は各2/9 となる。

今回、3人は相続法の規定どおりの遺産相続を要求したとみられる。

これによると、グループ株式(11.28%)も配偶者に3.76%分、娘2人にも各2.51%分が相続され 、養子の現会長の相続は2.51%分にとどまることになる。

亡くなった具本茂前会長は、長子相続の原則維持のために養子を迎え入れたのであり、当然、LGの株式を養子に譲る遺言書を残したと思われる。

しかし、この場合、配偶者と娘2人は遺留分の請求ができる。

配偶者と直系卑属の遺留分は相続財産の1/2であり、これにより、配偶者は全体の1/6、娘2人は各1/9ずつ権利を持つ。

グループ株式(11.28%)も配偶者に1.88%分、娘2人にも各1.25%分が相続される。相続税の支払いのため売却されることも考えられる。


LGグループではグループの会長は具一族の長子が相続することとしており、後継者はグループ企業の株式の最大株主である必要がある。

このため、グループとして3人と5ヶ月にわたって交渉を重ね、上記の案(協議分割)で合意を得たと思われる。


LGでは、「相続が完了して4年も経った今、なぜこんなことを言い出したのか理解できない。LGグループの伝統と経営権をゆるがす試みは我慢できない」と述べた。

法的に認められた協議分割に合意し、相続財産分割協議書に署名し、既に4年も経ち、3年の除斥期間も過ぎているため、裁判所が取り上げることはないと思われる。

但し、協議の過程で錯誤・強要・詐欺のような契約無効、取り消しの理由があったとすれば、除斥期間が過ぎても合意無効・取り消しを主張することができるとなっており、除斥期間が過ぎた後も相続回復請求訴訟を認めた前例があるという。

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