日本産業パートナーズ、東芝にTOB

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日本産業パートナーズは3月23日、東芝を株式公開買い付け(TOB)で非公開化することを目指すと発表した。

東芝もTOBを受け入れると発表したが、価格が想定より低かったことから、現時点で応募を推奨するか否かについては意見を表明せず、TOB開始までに方針を決める。

付記

東芝は6月8日、日本産業パートナーズなど国内連合による東芝へのTOBについて、株主に対して応募を推奨すると発表した。


また東芝側は他陣営からの、より有利な買収提案を引き続き受け付けるとしている。

日本産業パートナーズは、発行済株式全て(自社株を除く)の買収を目指す。買付の下限を66.7%に設定した。1株4620円の買付で、総額は約1兆9987億円となる。     

買付予定株数 432,630,045株
下限(66.7%) 288,564,300株

  TOBが成立しても100%でない場合は、完全子会社とするためのスクイーズアウト手続を実施する。

TOB価格4620円は 、3月23日の終値4213円に9.7%のプレミアムを乗せた水準となる。

日本産業パートナーズが優先交渉権を得た2022年11月に提示した価格は5200円だった。
その後、東芝が業績見通しを下方修正したことを受け、2023年2月に4710円に引き下げた。
東芝は再度見通しを下方修正したため、3月に4610円に下げた。

単位:億円 2021年度実績

2022年度予想

2022/5/13 2022/11/11 2023/2/14
売上高 33,370 33,000 33,500 33,200
営業損益 1,589 1,700 1,250 950
当期純損益 1,947 1,750 1,900 1,300


その後の交渉で10円を上積みし、4620円とした。

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2021年4月7日に英投資ファンドのCVC Capital Partnersが買収を提案した。前日6日の終値3830円に31%のプレミアムを加え、1株5000円での買い取り価格を提案した。
東芝は4月19日に
CVCから新たな書面を受領したもののなんら具体的な詳細情報が記載されておらず、東芝は買収交渉の中断を発表した。

2021/4/14 英投資ファンド、東芝に買収提案 

今回のTOB価格4620円は3月23日の終値4213円に9.7%のプレミアムを乗せた水準となるが、現在の株価は既に買収を折り込んでいる。

2021年のCVC Capital の買収提案前の株価との対比では20.6%の上乗せとなる。

今回の発表を受け、3月24日の東芝株は一時前日比6.4%高の4483円を付けた。

日本産業パートナーズは、出資金1兆円、銀行融資1兆2000億円の合計2兆2000億円を集めたとされる。このほか、新東芝が運転資金を引き出せる2000億円のコミットメントライン(融資枠)も得ている。

関係者の話では、参画する企業は下記のとおりとされる。

オリックスが出資と融資で最大3000億円程度
中部電力が1000億円弱を出資
JIP自身も1000億円を出資
ロームの投資額は最大で3000億円規模と参加企業で最大級  半導体の原材料調達や生産での協業を探る
スズキも数百億円を出資  東芝から車載リチウムイオン電池を調達
大成建設も出資する見通し

付記

オリックスは5月10日、東芝買収について2000億円を拠出すると明らかにした。内訳はエクイティ出資を1000億円、劣後ローンなどを1000億円としている。同社は「東芝の企業価値と経営改善計画の実効性を評価」とコメントした。


東洋経済によると、融資の内訳(融資枠を含む)は次のとおり。合計1兆4000億円のうち、三井系の2行が過半数を負担することで、折り合いがついた。

三井住友銀行(主力行) 5,150億円
三井住友信託(準主力) 2,200億円
(三井系 合計) 7,350億円 52.5%
みずほ銀行 (主力行) 4,600億円 33%
三菱UFJ銀行 1,600億円
あおぞら銀行 450億円
合計 14,000億円 100%

2023/2/14 日本産業パートナーズ、東芝買収の最終提案を提出

今回、2兆円を新東芝への出資に充てるが、出資社は、国内・海外のファンドのほか、国内事業会社17社、国内金融機関6社としている。海外事業会社も出資する。


日本産業パートナーズは7月下旬をめどにTOBを開始する見込みだが、競争法に関連した各種認可が一つ目の壁になり得る。

国外では、米国、カナダ、ドイツ、チェコ、ルーマニア、英国、モロッコ、モンテネグロ、ポーランド、スペイン、ベトナム、インド、サウジアラビア、エジプト、メキシコ、トルコ、オーストリアにおいて競争法上の手続が必要になる。

東芝は原子力事業や防衛事業など国の重要政策に関わる複数の事業を手がけていることから、外国為替法に基づいて国が外資による買収などを規制する対象となっているが(東芝は改正外為法で国が特に重要な「コア業種」として位置付ける原子力事業を抱えている)、今回は日本連合のため、問題はないとみられる。


焦点は、株主の約3割を占める物言う株主らがTOBに応じるかどうかである。

大量保有報告書によると、下記各社を含め全株主の3割強となるとされる。

Effissimo Capital Management 9.9% 筆頭株主
Farallon Capital Management (Chinook Holdings との共同で)5.37%(うちFarallonは2.12%)
3D Investment Partners (Singapore) 2.5% → 7.2% 2位株主に
Elliott Investment Management  買い増しで5%

付記 本発表前に3D Investment Partnersが株式の一部を売却、4.9%になっていたことが判明した。本TOB価格より低価格での売却。

東芝は2022年6月の総会で、Farallon CapitalElliott Investment から1名ずつ、社外取締役を受け入れた。

彼らは2017年12月5日払込の6000億円の第三者割当で株主となった。(その後の買い増しも)

東芝の将来に期待して株主になったのではなく、早期に高値で売りぬくことを目指している。後記のとおり、そのために東芝は振り回された。

この際の払込価格は(その後の株式併合の結果)2628円で、当時のレート(112.59円/$)で換算すると23ドル程度となる。

その後の買い増しなどで簿価は変わっていると思われるが、今回の4620円は130円/$ベースで35.5ドルとなり、損はしていない。 東芝の現状からみて、これよりも有利な案が出るとは考えにくい。多数が応じると思われる。

TOBで発行済株式の2/3以上を取得できれば、株主総会の特別決議で残りの株主から強制的に株式を買い取ることができる。(スクイーズアウト手続 )

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2015年4月に東芝の不正会計問題が発覚した。

2016年12月には米の原発事業で巨額損失が発覚した。当初の見通しよりさらにおよそ2000億円拡大し、7000億円規模に上る可能性があるという見通しを取りまとめた。

2017/1/24 東芝の原子力事業の損失の実態

東芝株式は2017年8月1日、東京証券取引所の第1部から第2部に「降格」となった。2017年3月末時点で債務超過となり、1部上場基準に抵触した。来年3月末までに債務超過の解消、2017年3月期有価証券報告書での適正意見、特定注意市場銘柄指定解除の3つのハードルの全てをクリアできないと上場廃止となる。

2017/8/2 東芝、東証2部降格

東芝は2017年9月20日の取締役会で、東芝メモリの売却先について、Bain Capital が率いる「日米韓連合」にすることを決議した。

売却額は2兆円、税引前利益で1兆800億円を見込む。メモリ事業承継に係る課税影響を加味しても約7400億円の増益が見込めるため、2017年度末には債務超過状態を解消できるとみた。

2017/9/22 東芝、東芝メモリの「日米韓連合」への売却発表 

しかし、各国の独禁法当局の承認が2018年3月末までに取得できなければ、売却益を計上できず、2期連続の債務超過となり、上場廃止となる。

中国の独占禁止法当局が売却案を承認したことが2018年5月17日に分かった。既に日米欧など他の全ての国の独禁法当局の承認は得ている。2018年6月1日に譲渡が完了した。(増資がなければ上場廃止となっていた。)

このため、東芝は11月19日開催の取締役会において、第三者割当による新株式の発行を決議した。新株式の発行総額は約 6000億円で払込みは12月5日に完了する予定。

経営再建の途上にある東芝が、公募増資を実施するのは事実上 困難なため、第三者増資を行う。旧村上ファンド出身者が設立したシンガポールのEffissimo Capital Management や米King Street Capital Managementなど、Goldman Sachs が集めた海外約60社の投資家に割り当てた。

2017/11/24 東芝、増資を決定 

東芝の将来に期待して株主になったのではなく、早期に高値で売りぬくことを目指している。これ以降、東芝は「物言う株主」対策に振り回されることとなった。

2021年4月7日に英投資ファンドのCVC Capital Partnersが買収を提案した。前日6日の終値3830円に31%のプレミアムを加え、1株5000円での買い取り価格を提案した。

2021/4/14 英投資ファンド、東芝に買収提案 

東芝の車谷社長兼CEOが4月14日付で辞任した。

CVCによる買収は車谷社長兼CEOが持ちかけたとみられ、永山治・取締役会議長らは、こうした動きを「私物化」と判断し、取締役会に車谷氏の解任動議を提出する予定だったとされる。

2021/4/14 東芝 車谷社長辞任

東芝は2021年6月、前年7月の株主総会に関する調査報告書を公表し、同株主総会では、経済産業省と一体となって筆頭株主Effissimo の株主提案権の行使を妨げようと画策したなどと指摘されたことを明らかにした。報告書は、株主総会は「公正に運営されたものとはいえない」と結論付けている。

東芝は6月13日に臨時取締役会を開き、6月25日に開催する定時株主総会に諮る取締役選任案や、その後に開催する取締役会で正式に決める執行役選任案の変更を決定し、計4人が退任すると発表した。

2021/6/15 東芝、異例の取締役候補者変更 

6月25日の定時株主総会で、永山治取締役会議長と監査委員会の小林伸行委員の再任案が否決された。当初の13人の候補のうち、2人を事前に下したが、更に2人が否決された。
会長兼社長CEOと副社長1人以外は全て社外取締役となった。

2021/6/26 東芝、株主総会

東芝は2021年11月12日、事業をスピンオフし、3つの独立会社とする方針を決定した。

インフラサービス Co.デバイス Co. をスピンオフし、残る東芝は事業は営まず、キオクシアと東芝テックの株式を保有するというものであった。

2021/11/15 東芝、3つの独立会社に戦略的再編

しかし、「モノ言う株主」から3分割案に反対意見が出るなか、2022年2月7日に「会社を3つに分割する」という方針を一転して見直し、半導体などのデバイス事業だけを分離して2分割とすると発表した。

2022/2/8 東芝 「3分割」を「2分割」に見直し

しかし、3月24日の東芝の臨時株主総会で会社を2分割にするという会社提案は反対多数で否決された。

「2分割案」でビルソルーション3社と東芝テックを「非注力事業」とし、早期の売却対象としたのは、実は、物言う株主(アクティビスト)を満足させようと編み出された側面が強かった。

2022/3/25 東芝株主総会、2分割案を否決 

東芝は2022年4月7日、取締役会を開き、社外取締役で構成する特別委員会を設置し、株式非公開化を含む戦略的選択肢を検討することを決めた。買収を検討する投資家との交渉にも関与し、最良の非公開案を特定するという。

2022/4/8 東芝、2分割案の検討中断、非公開化も検討 エレベーター事業等の売却を再検討

東芝は2022年7月19日の取締役会で、複数のパートナー候補を選定した。非公開化関する提案と、上場維持を前提とした戦略的資本業務提携に関する提案が含まれている。

報道では、下記の各社が選ばれたとされる。

1.産業革新投資機構(JIC) / 日本産業パートナーズ(JIP)

その後、産業革新投資機構(JIC)が日本産業パートナーズ(JIP)との連携を解消する方針であることがわかった。

日本産業パートナーズ(JIP)は国内企業の出資を募り2次入札に臨む方針で、オリックスなどの10社超に対し、東芝への出資に参加するよう打診し、日本企業を交えた連合体での落札を目指している。これに対し、産業革新投資機構(JIC)は、事業会社の参加に消極的で、国内外のファンドとの連携を模索しており、同じく2次入札に進んでいる米Bain Capital と連合を組む方向で調整しているという。

2. 米大手投資ファンド Bain Capital

3. 欧州拠点のCVC Capital Partners

4. カナダのBrookfield

2022/7/22 東芝再編、4陣営に絞り込み? 

日本産業パートナーズ(JIP)などの連合が2023年2月9日、東芝に買収の最終提案を提出した。

2023/2/14 日本産業パートナーズ、東芝買収の最終提案を提出


今回のTOBは、「物言う株主」から株を買い戻すためのものである。

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なお、三菱ケミカル元会長の小林喜光氏は東芝の不正会計が発覚した2015年9月に社外取締役就任、2017年10 月から2020年7月末に退任するまで取締役会議長も務めた。
6000億円増資を決め、後に社長CEO解任直前に辞職した車谷氏を会長として招聘した2017年11月の取締役会では議長であった。

2020年7月の退任会見で「会社が存続するかどうかの中でよくここまで回復した」と語った。

2020年9月の日経ビジネスは「東芝復活までの5年、社外取退任の小林喜光氏が明かす真実」というインタビュー記事を載せている。

6000億円の増資:「債務超過2年で上場廃止になるという制度には問題があると思う。」
 「海外投資家が6割以上を占める状況になり、いい影響もありました。経営が極めてサイエンティフィックになった。」

車谷会長招聘:「議論を進める中で、金融出身者にCEOを担ってもらい、株主との対話を重視しながらも成長戦略を実行できる人物がいいという話になった。」


 https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00112/090200015/


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