敦賀原発2号機の安全審査を再中断

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日本原子力発電の敦賀原発2号機の再稼働に向けた審査について、原子力規制委員会は4月5日、日本原電が審査資料の誤記を繰り返し 、改善がみられなかったとして、審査を一時中断することを決めた。

2020年2月にデータの無断書き換えが発覚、審査が約2年中断したが、2022年12月に再発防止の社内態勢が整ったとして審査を再開した。 しかし、審査が再開した後も、昨年12月に157件、3月には更に8件の誤りを報告した。資料の誤りは累計で約1300件に上り、実質的な審査ができていない。

今後の方針として、
①申請書をいったん取り下げさせ、内容を精査した上で再申請させる
②申請書のうち、誤りが多数見つかっている原子炉直下の断層に関する部分を修正し、8月末までに補正を提出させる――の2案が示された。  

規制委はこの日の議論で、②案を採用することを決定 した。

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同原発は原子炉建屋の直下の断層が活断層かどうかが焦点となっている。

原発敷地内の断層を調査した原子力規制委員会が2012年12月10日、外部の専門家4人を交えた評価会合で、原子炉建屋直下の断層を活断層の可能性が高いと判断した。

敦賀原発には、1、2号機の原子炉建屋直下を含め、敷地内に約160の断層がある。さらに、活断層の「浦底断層」が原子炉建屋の約200メートル東を通っている。このため、浦底断層が動くとき、原子炉建屋直下の断層が連動するかどうかが焦点になっていた。

現地調査では、2号機直下を通る断層「D-1」と浦底断層の合流地点付近を重点調査。D-1の近くに新たな断層 (K断層及びG断層)が確認され、K断層、G断層及びD-1破砕帯は、一連の構造である可能性が高い。断層ができた原因は浦底断層の活動とほぼ同じ力が加わったためとの見方で専門家らが一致した。力のかかり方は現在も変わらないとみられ、評価会合では、この断層は将来も動く可能性が否定できないと結論づけた。

これに対し日本原電側は、K断層は途中で消滅し、2号機原子炉建屋の方向に延びていないこと、また、G断層及びD-1破砕帯は一連の構造であるが、K断層は一連ではないと主張する。

日本原電は2015年11月に敦賀原発2号機の安全審査を規制委に申請した。規制委は2号機直下の破砕帯は活断層であるとの判断を下しているが、日本原電はこれに反発し適合性審査の場の論争の決着を狙う。

2012年9月に発足した規制委は旧原子力安全・保安院から検証作業を引き継ぎ、地質や地形、地震などの専門家からなる有識者会合を6つの原発ごとに設置、現場調査も含めた審査を開始した。
検証が始まった段階では、原子炉直下にある破砕帯が「活断層である」、あるいは「活断層であることを否定できない」と有識者会合が認定すれば、再稼働に向けた審査には入れず、事実上、廃炉が確定すると受け取られていた。

しかし規制委の姿勢は変わった。 委員会の設置法には有識者会合に関し法的な権限を定める記載がないため、有識者会合の結論を「重要な知見のひとつとして参考」とし、最終的な判断は適合性審査の場でを下す方向に転じた。

日本原電は申請に合わせて、地震など自然災害や電源喪失に備えた追加的安全対策を公表した。追加工事に約750億円を投じる計画で、すでに施した対策と合わせて約900億円を敦賀2号機の再稼働に投じる。


日本原電が提出した資料に関し、2019年に1000カ所以上の記載不備が見つかった。

2020年2月、同社が提出した「ボーリング柱状図」と呼ばれる断層岩の状態を観察記録したデータを無断で書き換えていたことが発覚し た。無断の書き換えは計80カ所に上った。

原電が、原子炉建屋直下に活断層があるかどうかの判断に必要な調査資料の記述を書き換えていた 。

書き換えられたのは、原電が2012年に敷地内で実施したボーリング調査の結果 の採取した地層の観察記録で、2018年の審査会合の資料では「未固結」などとしていた記述が、この日は「固結」に変わっていた。原電の説明はなく、規制委が計900ページに及ぶ資料の中から見つけた。

記述が変わった部分は少なくとも十数カ所あるという。観察記録は科学的な「生データ」で本来変えてはいけない。

原電によると、昨秋以降、同じ地層を顕微鏡などで詳しく調べたところ、肉眼で見るなどした元の観察記録と合わなかったため、記述を書き換えたという。規制委の石渡明委員は「基本的なデータについて、前の記述を残すのではなく、削って書き直すのは非常に問題がある。この資料をもとに審査はできない」と厳しく指摘した。

規制委は2021年8月、資料の信頼性が確保される必要があるとして審査を中断、原電本店に立ち入り検査するなどして業務の確認を進めてきた。

この結果、2022年10月26日の定例会合で「資料を作成するプロセスの改善が確認できた」として、1年以上中断していた再稼働に向けた審査を再開することを決めた。

規制委は社内規定が整備されたことなどを踏まえ「継続的に(審査資料の)品質を確保する取り組みがなされている」と評価した。

書き換えの背景として資料作成の体制が不十分だった点を指摘したが、「審査官を錯誤させる目的で意図的に審査資料の書き換えを行ったことは確認できなかった」とした。

規制委は2022年12月9日、再発防止の社内態勢が整ったとして審査を再開したが、新たに提出資料の誤りが157件見つかった。

本年3月17日の審査会合で、原電は再び審査資料の誤り8件を報告した。観察する地層の場所を間違えるという基本的なミスだった。しかも、規制委からの指示で資料の再精査をする中で見つかった。

原子力規制庁の審査担当者は「こちらから指摘しなければ、今回の誤りも見つからなかった。非常に遺憾」と憤った。

規制委の山中委員長は3月29日の会見で「審査の打ち切りも含め、最後の決断をする」と述べた。

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