韓国の国会は3月30日、半導体などへの投資を促進するために企業に税制優遇措置を与えることにより、同国の半導体産業をさらに後押しする法律案「租税特例制限法の一部改正法律案」を承認した。


「K-CHIPS法」とも呼ばれる同法は、国家戦略技術の投資税額控除率を引き上げる。

同法における国家戦略技術には半導体、二次電池、ワクチン、ディスプレイ、電気自動車など未来型移動手段が含まれた。

同分野の大企業と中堅企業は現行の8%から15%に、中小企業は16%から25%に税額控除率が拡大される。

更に、 直前3年間の年平均投資金に対する投資金の増加分に対しては、今年に限って10%の臨時投資税額控除の恩恵も提供する。

適用期間は、今のところ2024年12月末まで。

政府の企財部は、「半導体への投資に25%の税額控除の恩恵を与えることで、米国など半導体強国に対して世界最高レベルの税制支援が可能になった」と説明した。


米国商務省は2月28日、The CHIPS and Science Act(CHIPSプラス法)に基づく、半導体産業に対する第1弾の資金援助申請の受け付けを開始すると発表した。


韓国では申請内容に不満を持ち、各社は申請するかどうか、ためらっている。韓国政府も米政府に懸念を伝えている。


申請は3段階に分かれ、第1弾となる今回は商業用の半導体製造施設の建設、拡張、現代化が資金援助の対象となる。今春後半には素材や製造装置施設、今秋には研究開発施設に関する申請を受け付ける。

CHIPSに関する527億ドルの予算の内訳は次のとおり。

  1. 商務省製造インセンティブ(390億ドル):
    半導体の設計、組み立て、試験、先端パッケージング、研究開発のための国内施設・装置の建設、拡張または現代化に対する資金援助。
    うち、60億ドルは直接融資または融資保証に使用可能。
  2. 商務省研究開発(110億ドル):商務省管轄の半導体関連の研究開発プログラムへの予算充当。
  3. その他(27億ドル):労働力開発や国際的な半導体サプライチェーン強化の取り組みへの予算充当。

また、上記のほか、半導体製造に関する投資に対して25%の税額控除を導入するとしている。

米政府はCHIPS法に基づく補助金を申請する半導体企業に対し、ウェハの生産能力、製造歩留まり、ウェハの予定販売価格およびその推移予測、長期利益計画などの詳細な財務予測情報を国立標準技術研究所に提出するよう求めており、企業は、さまざまな営業秘密情報の開示要求やペーパーワークなどに翻弄されているという。

米商務省は3月27日、半導体補助金を申請する企業が予想キャッシュフローなど収益性指標を明らかにする際に単純に数字だけでなく算出方式を検証できるエクセルファイル形態で提出しなければならないと明らかにした。

商務省が提示した例示には半導体工場のウエハーの種類別生産能力、稼動率、予想歩留まり、生産初年度販売価格、その後の年度別生産量と販売価格増減などが含まれた。半導体を生産するのに使われる素材、消耗品、化学薬品と工場運営に必要な人件費と公共料金、研究開発費用も入力しなければならない。このほかにも従業員の類型別雇用人数と製造に使われる素材別費用まで生産に関連した詳細なデータをすべて公開するよう求めた。

公表されている半導体の歩留まりの大部分は推定値であり正確な歩留まりは核心営業秘密に属する。

「半導体は原価構造を公開すればどのような技術をどのように使い、どのような工程を導入したのか敏感な情報が推定できる。競合相手である米マイクロンにこうした機密が伝われば韓国企業の競争力に相当な打撃になりかねない」との声がある。

米国政府は又、補助金受給企業は10年間にわたり中国にある半導体工場への投資に制限を受けることとなる。

米韓政府の交渉で、先端プロセスで5%、旧式プロセスでは10%という設備拡張制限条項さえ守れば、ひとまず10年間は中国工場を安定して稼働できることになった。

また、当初合意した基準以上に利益を上げた場合にその一部を米政府と共有することが義務付けられている。

2023/3/13 米商務省、CHIPSプラス法による第1弾の資金援助申請の受け付け開始

SKグループは、最先端の半導体パッケージング工場の建設を含め、米国の半導体部門に150億ドルの投資を計画している。SK Hynixは、米国工場建設そのものは計画通り実行するが、米国のCHIPS法の補助金申請プロセスが厳しすぎると感じており、補助金を申請するかどうかまだ検討していると している。

Samsungも、米テキサス州に総工費250億ドル超の半導体工場を建設中だが、SK Hynix同様、補助金を申請するか否かの姿勢を示していない。

産業通商資源省は「半導体法で定められた条件が事業の不確実性を高め、企業の経営権や技術権を侵害し、投資先としての米国の魅力を損ねる可能性がある」と述べた。

尹大統領は3月30日、ソウルを訪問した米国通商代表部(USTR)のタイ代表と会談し、「過剰な情報提供」を巡る企業の懸念を考慮するよう米政府に求めた。韓国産業通商資源省の通商交渉本部長は、タイ代表との会談で、サムスン電子やSKハイニックスなど韓国半導体企業にとって、米国の新しい半導体補助金の受給条件は重荷となる可能性があると述べた。