最先端の半導体製造設備の輸出規制強化

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西村経済産業相は3月31日、最先端の半導体製造装置23品目について輸出規制を強化すると発表した。改正省令を5月に公布、7月に施行する。

「高性能な先端半導体、これは軍事的な用途に使用された場合、国際的な平和および安全の維持を妨げる恐れがある」 西村大臣はこのように話し、高性能な半導体の製造装置について輸出管理を強化すると発表した。

最先端半導体をめぐっては米中の覇権争いが激しさを増しており、米国が日本やオランダに協力を呼びかけていた。  

バイデン米政権は2022年10月7日、中国への半導体先端技術(14〜16ナノメートル以下のロジック半導体の製造などに必要な装置や技術)の新しい輸出規制を実施すると発表した。軍事開発に欠かせないAIやスーパーコンピューターに使われる先端半導体の輸出を制限、さらに特定の先端半導体を扱う中国企業の工場に対し、米国製の製造装置を販売することも原則禁止する。

2022/10/10 米国、半導体の対中輸出制限を拡大

米国は日本とオランダにも協力を求めていたが、オランダは3月8日に先端半導体製造装置の輸出規制を強化すると表明していた。2023年の夏までに公表するが、半導体製造装置のメーカー ASMLが半導体メーカーに販売している深紫外線(DUV)露光装置に関する技術が影響を受ける。

JETROによると、中国向けの半導体製造装置全体の輸出は日本が31.5%を占め、最大である。今回の規制強化はそのうちの最先端の23品目だけでる。

今回、「国際的な安全保障環境が厳しさを増すなか、軍事転用防止目的としてWassenaar Arrangementを補完すもに半導体製造装置関する関係国の最新の輸出管理動向なども総合的に勘案し、特定の貨物及び技術輸出管理の対象に追加する 」こととした。

我が国をはじめとする主要国では、武器や軍事転用可能な貨物・技術が、我が国及び国際社会の安全性を脅かす国家やテロリスト等、懸念活動を行うおそれのある者に渡ることを防ぐため、先進国を中心とした国際的な枠組み(国際輸出管理レジーム)を作り、国際社会と協調して輸出等の管理を行っている。

国際輸出管理レジーム参加国一覧表

(WA参加国は42カ国で中国は含まれない。)


ワッセナー・アレンジメントとは、通常兵器及び関連汎用品・技術の輸出管理を実施することにより、地域の安定を損なう可能性のある通常兵器の過度の移転と蓄積を防止する目的で1996年7月に成立した国際的申し合わせに基づく国際的輸出管理体制である。

1 目的
  • (1)通常兵器及び機微な関連汎用品・技術の移転に関する透明性の増大及びより責任ある管理を実現し、それらの過度の蓄積を防止することにより、地域及び国際社会の安全と安定に寄与する。
  • (2)グローバルなテロとの闘いの一環として、テロリスト・グループ等による通常兵器及び機微な関連汎用品・技術の取得を防止する。
2 設立の経緯
1994年3月末に、ココムが解消されたことを踏まえ、1995年12月、新たな輸出管理体制の設立について関係国間で政治的な申合せが行われ、1996年7月の設立総会をもって正式に「ワッセナー・アレンジメント(WA)」が発足した。
なお、WAの名称は、設立のための協議が行われたオランダのワッセナー市にちなんで名付けられたものである。

3 基本的枠組み
 WAは、法的拘束力を有する国際約束に基づく枠組みではなく、通常兵器及び機微な関連汎用品・技術の供給能力を有し、かつ不拡散のために努力する意志を有する参加国による紳士的な申合せとして存在している。


参加国は、通常兵器及び関連汎用品・技術に関してWAで合意されたリストに掲載された品目について、国内法令(我が国においては、外国為替及び外国貿易法、輸出貿易管理令、外国為替管理令等)に基づき、輸出管理を実施している。

(a)汎用品・技術リスト:9カテゴリーに分類された「基本リスト」、基本リストの中でもより機微なものと位置づけられる汎用品・技術を抜粋した「機微品目リスト」及び「特に機微な品目リスト」の3種が存在する。

 【基本リストの9カテゴリー】
  (1)先端材料(超伝導材料、セラミック等)
  (2)材料加工(工作機械、ロボット等)
  (3)エレクトロニクス(集積回路、半導体等)
  (4)コンピュータ
  (5)通信関連(ケーブル、暗号装置等)
  (6)センサー・レーザー(ソナー、暗視センサー、レーダー等)
  (7)航法装置(ジャイロスコープ、GPS等)
  (8)海洋関連(潜水艇、水中用ロボット等)
  (9)推進装置(ロケット推進装置、無人航空機等)

(b)軍需品リスト:22項目にわたって武器(通常兵器)等を全般的に網羅したリスト。


今回、下記を含む23品目を輸出を制限する「リスト規制」の対象に加える。 軍事転用の防止が目的だとしている。

東京エレクトロンやニコン、SCREENホールディングス (京都市にある半導体・液晶製造装置・印刷関連機器などの産業用機器を製造する企業グループの持株会社)など10社程度が影響を受けるとみられる。

メーカー
真空状態で不純物を除去する洗浄装置 SCREENホールディングス、東京エレクトロンなど
極端紫外線(EUV)フォトマスク向けの成膜装置 東京エレクトロン、KOKUSAI ELECTRIC、アルバックなど
EUVフォトマスク向けの防護カバー ニコン、三井化学など
フッ化アルゴン(ArF)を使う液浸露光装置   ニコンなど
記憶素子を立体的に積み上げるエッチング装置 東京エレクトロン、日立ハイテクなど


詳細は省令改正案 参照


対象品目は輸出時に経産省の審査を受ける。

審査が簡略化されるのは、Wassenaar Arrangement加盟の米国や韓国、台湾など42カ国・地域(国際輸出管理レジーム参加国一覧表 参照)に限られ、中国は含まれていない。(ロシアは含まれている)

省令改正に向けて3月31日からパブリックコメントの募集を始め、省令改正は5月の公布、7月の施行を予定する。


付記   中国外交部の反応

「日本側はこれまで中国側との意思疎通で、両国の経済・貿易関係は緊密であり、日本側は対中協力の推進に尽力し、『脱中国化』の手段を取ることはないと繰り返し表明してきた。日本側が実際の行動によってこの姿勢表明を実行に移し、公正な立場と市場原則を堅持し、自らの長期的利益の観点に立ち、グローバルな産業・サプライチェーンの安定性と円滑性を維持し、自由で開かれた国際貿易秩序を維持し、中日両国及び双方の企業の共通利益を維持することを望む」

「中国は世界最大の半導体市場であり、中国の集積回路輸入額は年間6000億ドル近くに達する。日本にとって中国は最大の半導体輸出市場であり、日本の対中輸出額は年間100億ドルを超える。中国市場は日本の半導体機器輸出シェアの4分の1を占め、中日双方はこれまで互恵・ウィンウィンの協力を実施してきた。日本側の講じようとする対中輸出管理は、この地域、さらには世界の半導体産業のサプライチェーンに影響を与えるだけでなく、日本企業にも損害をもたらすだろう」

「中国は日本の規制の影響を評価し、日本側が人為的に中日の通常の半導体産業協力に制限を設け、中国側の利益を深刻に損なった場合、中国側は座視することはせず、断固として対処する」

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