経営不安が広がったSilicon Valley Bankでは預金保護の対象とならない非付保預金が大量に流出し、経営破綻に追い込まれた。同行は長期財務証券に巨額の資金を投資していた。
米国では金融機関が加盟する連邦預金保険公社(FDIC)が1口座あたり25万ドルを上限に保護する仕組みがあるが、Silicon Valley Bankはスタートアップ業界を顧客としており、2022年末の預金残高約1750億ドルのうち89%に当たる約1560億ドル(約21兆円)は預金保護の対象外だった。
First Republic BankはSilicon Valley Bankと同様、非付保預金が全体に占める割合が高かった。
Silicon Valley Bank破綻後に米金融当局は預金の全額保護を打ち出したが、顧客から預金保険制度の限界を見抜かれて預金の流出を止めきれなかった。 顧客は数日のうちに約1,000億ドルの預金を引き出した。
3月16日には11の大手金融機関から経営への異例の支援策として合わせて300億ドル預金を受け取った。
JPMorgan Chase、Bank of America、Citibank、Wells Fargoが各50億ドル、GoldmanとMorgan Stanleyが各25億ドル、その他5行が各10億ドルを預金した。
しかし、4月24日に発表した1Q 決算で、3月末時点の預金残高が減少したことが明らかになると、再び、経営への懸念が高まった。
First Republic Bank の預金は2022/12/31時点では2,126億ドルであったが、4/13には1,039億ドルとなっており、破綻時には920億ドルになっている。
米国の銀行の資産残高 2022/12/31時点 億ドル
資産残高 1 JPMorgan Chase 32,019 First Republic Bankの資産、負債を買収 2 Bank of America 24,185 3 Citibank 17,668 4 Wells Fargo 17,175 14 First Republic Bank 2,126 2023/5/1 破綻 JPMorgan Chaseが資産、負債買収 16 Silicon Valley Bank 2,090 2023/3/10 破綻 First Citizens BancSharesが買収 Signature Bank 1,104 2023/3/12 破綻 New York Community Bancorpが買収
JPMorgan ChaseはFDICが実施した緊急入札で落札、First Republicの下記の資産と負債を引き受け、対価として106億ドルをFDICに支払う。
資産 融資債権(約1730億ドルを約13%の割引で)、保有証券(約300億ドル)
負債 預金(約920億ドル)、米連邦住宅貸付銀行(FHLB)制度による借入れ(約280億ドル)
さらに、JPMorgan とFDICは、First Republicの一戸建て住宅向けローンと商業用ローンの損失と回収額を分け合う。
1994年に成立させた法律では、銀行が買収などにより米国内で10%以上、州内で30%以上の預金シェアを持つことを禁じている。すでに全米シェアが10%超のJPモルガンは通常であれば銀行の買収はできないが、「破綻した銀行の買収は例外」となる。
JPMorganはこの買収によって約26億ドルの一時利益と2023年~24年で約20億ドルのリストラ費用を見込む。
FDICとJPMorganは今回の買収で、FRCから引き継ぐ住宅ローンや商業用ローンで損失が発生した場合、今後5〜7年はFDICが損失の8割を負担する契約を結んだ。
FDICはJPMorganに5年固定金利で500億ドルの融資も提供する。
コメントする