石油化学と医薬品が大幅減益となり、住友ファーマの減損損失も大きく、株主帰属損益はほぼゼロとなった。2024年3月期もこの状態が続く。
配当は前年の24円を18円に下げた。2024年3月期は更に6円引き下げる。
単位:億円 | 売上高 |
営業損益 |
税引前 損益 |
株主帰属 損益 |
配当(円) | ||||
コア | うち 持分法 |
非コア | 合計 | 中間 | 期末 | ||||
2021/3 | 22,870 | 1,476 | -125 | -105 | 1,371 | 1,378 | 460 | 6 | 9 |
2022/3 | 27,653 | 2,348 | 422 | -198 | 2,150 | 2,511 | 1,621 | 10 | 14 |
2023/3 | 28,953 | 928 | -68 | - 1,237 | - 310 | 2 | 70 | 12 | 6 |
増減 | 1,300 | -1,420 | - 490 | -1,040 | -2,460 | - 2,509 | -1,551 | 2 | -8 |
2024/3予 | 29,000 | 400 | -200 | 200 | 100 | 6 | 6 |
コア損益
19/3 20/3 21/3 22/3 23/3 増減 24/3 エッセンシャルケミカルズ 616 145 -120 535 -342 -877 -70 エネルギー・機能材料 230 203 203 201 152 -49 130 情報電子化学 262 251 397 578 476 -102 380 健康・農業関連 197 21 315 423 573 150 620 医薬品 808 753 717 617 162 -455 -610 その他 94 88 128 158 104 -54 150 全社 -164 -134 -164 -164 -197 -33 -200 合計 2,043 1,327 1,476 2,348 928 -1,420 400
石油化学をエッセンシャルケミカルズに改称住友化学が37.5%出資するPetroRabigh の影響が大きい。
2021年は大幅な黒字となったが、2022年は大赤字となった。
2023/1Q速報では税引後損益は-257百万ドルとなった。(2022/1Qは193百万ドルの黒字)
百万ドル 2022 2021 増減 売上高 14,921 12,170 2,750 粗利益 449 1,268 -819 営業損益 3 851 -848 税引後損益 -297 543 -840 2022/4~2023/3 ベースでは税引き後損益は-747百万ドル
同じサウジの石化のSABIC も 2022年決算で、石油化学製品の値下がりで3-4Q損益が激減、2023/1Qの純損益は1.8億ドルにとどまった。
医薬品は下記、住友ファーマ(旧称:大日本住友製薬)を参照。
非コア項目 住友ファーマを中心に、巨額の損失を計上した。
合計 うち 住友ファーマ 2020/3 2021/3 2022/3 2023/3 2020/3 2021/3 2022/3 2023/3 減損損失 -373 -408 -81 -1,094 -352 -357 -16 -882 条件付対価 公正価値変動 485 225 33 34 485 225 33 34 事業構造改善費用 -78 -63 -106 -220 -130 固定資産売却益 9 187 7 52 167 その他 6 -45 -51 -9 -20 -19 45 合計 49 -105 -198 -1,237 113 16 17 -933
条件付対価 公正価値変動 (2020/3 & 2021/3):
事業買収に当たり、買収額と純資産との差は「のれん」となるが、一定条件を満たした場合に追加支払いをする契約がある。
IFRS基準ではこの場合、買収時点で将来の追加予想支払額を「のれん」と負債に計上する。
大日本製薬の場合、いくつかの買収で追加支払いが不要となり、買収時に計上した負債を消し、利益に計上した。合わせて、「のれん」を評価しなおし、減損損失を計上した。
大日本製薬の売却益は既に休止している茨木工場跡地の売却益である。減損損失:
住友化学
メチオニン事業の収益予測見直しで製造設備を減損 -158億円
ポストハーベスト事業に係る有形固定資産および無形資産(米国)-32億円
住友ファーマ
キンモビ特許権全額 -556億円
TP-0903仕掛研究開発費 -206億円
事業構造改善費用:
住友ファーマ 北米事業構造改善費用 -127億円
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住友ファーマ(旧称 大日本住友製薬)
2005年10月1日に住友製薬と大日本製薬が合併し、大日本住友製薬となったが、2022年4月1日付で住友ファーマに改称した。
コア営業損益が大幅減となり、多額の減損損失等を計上して株主帰属損益は745億円の赤字となった。住友化学の出資比率は 50.22%で、株主帰属損益の50.22%が住友化学連結決算に反映されている。
2024年3月期予想では非コア損失は減少するが、コア営業損益は大幅赤字となる。
単位:億円 | 売上高 |
営業損益 |
税引前 損益 |
株主帰属 損益 |
配当(円) | |||||
コア | 非コア | 合計 | ||||||||
一般 | Sumitovant | 計 | 中間 | 期末 | ||||||
2021/3 | 5,160 | 1,332 | -636 | 696 | 16 | 712 | 779 | 562 | 14.0 | 14.0 |
2022/3 | 5,600 | 1,454 | -869 | 585 | 17 | 602 | 830 | 564 | 14.0 | 14.0 |
2023/3 | 5,555 | 1,132 | -968 | 164 | -933 | -770 | -479 | -745 | 14.0 | 7.0 |
増減 | -45 | -322 | -99 | -421 | -951 | -1,372 | -1,309 | -1.309 | - | -7.0 |
2024/3予 | 3,620 | -620 | -160 | -780 | -810 | -800 |
無配 |
1)北米で儲け頭であったラツーダが2023年2月に独占販売期間が終了、出荷数量の減少や販売価格の低下等で減収、今後は更に大幅減収減益となる。
北米ラツーダ売上高 2022年度1,465百万ドル→2023年度 161百万ドル
北米市場で2022年度の売上高は3285億円で、前年比87億円の増であったが、うち為替差益が560億円の益で、
数量の影響は473億円の減収である。2023年度にはこれが2088億円に下がる。
2)問題は、ラツーダ後継が間に合わなかったこと。いろいろの候補医薬品が登録に成功しなかった。
3)Sumitovant Biopharmaを買収したが、まだ本格販売に至らず、多額の仕掛研究開発費の償却で大きな赤字となっている。仕掛研究開発費として2,659億円を資産計上している。
大日本住友製薬は2019年10月31日、米国のRoivant Sciences との間で、戦略的提携に関する正式契約を締結し、米国に運営会社Sumitovant Biopharmaを設立した。
更に、このうちのMyovant Sciences Ltd.( 約52%買収)を2022/10/23に 総額17億米ドルを支払い、100%とした。 合計投資額は6000億円となった。
2019/11/4 大日本住友製薬、Roivant Sciences と戦略的提携、30億ドルを投資
スミトバント社関連(億円)
2021/3 2022/3 2023/3 売上収益 78 357 897 販売管理費 465 903 1,395 研究開発費 246 243 337 コア営業利益 -636 -869 -968 営業利益 -636 -865 -977 当期利益 -636 -874 -1,039 株主帰属利益 -443 -716 -817
4)2023/3 非コア損益
キンモビ特許権全額 減損損失 -556億円 TP-0903仕掛研究開発費 減損損失 -206億円 北米事業構造改善費用 -127億円 その他 -44億円 合計 -933億円
キンモビは、パーキンソン病に伴うオフ症状の治療剤として、米国で初めて発売された新規の舌下投与フィルム製剤。サノビオン社が2020年9月に米国で販売を開始。上市後2年が経過したが、売上計画を下回る状況が続いていた。TP-0903(dubermatinib)は、急性骨髄性白血病(AML)を対象としたフェーズ1/2試験(外部研究機関主導治験)が中止となった後、開発方針検討中であったが、開発を継続しないことを決定した。
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