フロリダ州で反ESG法成立、民主党と共和党の対立が激化

| コメント(0)

Ron DeSantis フロリダ州知事は5月2日、ESG(環境・社会・企業統治)投資の活動を制限する「反ESG法」に署名した。同法は7月1日に発効する。

知事は2月13日に法案を提案した際に、「ESGは、我が国の存立基盤である経済と個人の自由にとって脅威であり、フロリダでは即座に亡きものする」と述べた。

フロリダ州の政府や関連の年金基金が実施する投資に対し、金銭的なリターンを最優先するように求め、気候変動対策や多様性の向上といった要素を投資の評価に組み込むことを事実上禁止した。ESGの価値観を掲げる銀行を公的資金の預金先から外す方針も示した。

ESG関連の地方債を発行することも禁じた。債券全体の評価を下げるようなESGスコアを出す格付け会社とは契約そのものも禁じるとした。

法律の概要は下記の通り。

・大手銀行、信託銀行、その他の金融機関が、国境警備、銃器の所持、エネルギー独立の促進を含む、宗教的、政治的、社会的な信条によって、顧客を差別することを禁止する。

・金融機関が、銀行業務や融資業務において、フロリダ州民がローンや信用枠、銀行口座を取得できないようにすることを目的とした、いわゆる「社会的信用スコア(Social Credit Scores)」を考慮することを禁止する。

・企業アクティビズムに従事する銀行が、適格公的預託機関(Qualified Public Depository)として政府資金を保有することを禁止する。

・州および地方レベルのすべての投資決定においてESGを使用することを禁止し、ファンドマネージャーが最高収益率を最大化する財務要因のみを考慮することを保証する。

・全ての州および地方自治体、およびそれが直接支援する団体が、調達および契約プロセスの一環としてESGに関する情報を考慮、優先、または要求することを禁止する。

・国や地方公共団体が債券を発行する際にESG要素を使用することを禁止する。これには、ESG格付けが、発行体の債券格付けに悪影響を及ぼすような格付け機関に対する契約を禁止することが含まれる。

・司法長官および金融規制庁長官に対し、これらの規定を法の及ぶ限り執行するよう指示する。

米の保守州では、ESG投資はリベラル・左派の影響を強く受けすぎているとみなす傾向がある。既にインディアナ州とカンザス州が州の退職金口座が ESG 関連ファンドに投資することを禁止している。

カンザス州は4月24日、公的資金の運用や政府契約の締結を決定する際に、環境・社会・ガバナンス(ESG)要因を考慮することを制限・禁止する法を成立させた。

同法は、州の公務員退職金制度において、加入者と受益者の経済的利益のみを考慮して資金運用すべきだとし、州がESGの基準を取り入れることや個人や企業に当該基準に従うよう働きかけることを制限している。

「反ESG」の旗頭であるDeSantis 知事の動きを受けて、ほかの保守州でも同様の動きが広がる可能性がある。

知事は3月16日に、「Ron DeSantis 知事、18州の同盟を率いてBiden大統領のESG金融詐欺と闘う」という声明を発表した。下記の各州知事と提携し、米国経済とグローバルな金融システムを不安定にするバイデン大統領のESG政策を押し戻すとしている。

Alabama, Alaska, Arkansas, Georgia, Idaho, Iowa, Mississippi, Missouri, Montana, Nebraska, New Hampshire, North Dakota, Oklahoma, South Dakota, Tennessee, Utah, West Virginia, Wyoming の18州

共和党は、気候変動対策の一環で政権が進めるESG投資促進への反発を強めている。

今回、バイデン大統領はESG投資関連で就任後初の拒否権を発動した。

バイデン政権は昨年11月、退職年金基金の運用担当者が、投資先選定や議決権行使に際し、ESG投資の観点を反映させることを認める規則を決定し、今年1月末に発効した。

米議会下院は2月28日に、上院は3月1日に、この規則の無効を求める決議を、賛成多数で採択した。上院では民主党系が多数を占めるが、民主党から有力議員を含む2人が賛成に回り、50対46で可決した。
なお、上院での可決には通常60票以上の賛成が必要となるが、単純過半数で可決できるという議会審査法の仕組みが利用された。

バイデン大統領は3月20日、この決議について、大統領就任後初めてとなる拒否権を発動した。

バイデン大統領が今回拒否権を発動したことで、政権・民主党と共和党との対立構造が一層深まった。

Ron DeSantis 知事は18州と提携して、州レベルで対抗しようとしている。3月16日の声明では、下記の通り述べている。

今月初め、連邦議会はアメリカ人の退職金に政治を介入させないための法案を可決する行動に出たが、バイデン大統領は自身の進歩的なアジェンダを推進するため、この法案に拒否権を発動すると約束している。フロリダ州と18の州は、アメリカ経済の活力とアメリカ人の経済的自由を脅かすESGの動きから個人を守るために、州レベルの取り組みを主導することを約束する。例えば、「受託者の義務よりも政治を優先する」というESGモデルに従う会社からすべての州年金基金と州が管理する投資を取り除いていくことだ。

コメントする

月別 アーカイブ