アメリカ政府の債務上限の引き上げをめぐり、バイデン大統領と野党・共和党のMcCarthy下院議長が基本合意した。
今後は最終的に法案として上下両院で可決する必要がある。
McCarthy下院議長は5月28日に法案を完成させて大統領と再び協議し、正式に合意したうえで、5月31日に採決を行う方針を表明した。
Yellen財務長官は、債務上限の引き上げを行わなければ6月5日にもデフォルトに陥る恐れがあると指摘している。
それまでに下院と上院で可決し、大統領がサインする必要がある。
議会に提案された法案 The Fiscal Responsibility Act of 2023 の主な内容は下記の通り。
債務上限を2025年まで凍結
2023年1月19日に債務は31兆4000億ドルの上限に到達した。
下院議会は4月26日、連邦債務上限を最大1兆5,000億ドル引き上げ、連邦政府の支出を4兆5,000億ドル削減する法案を賛成217、反対215で可決した。
しかし今回、上限は変更せず、2025年1月1日まで凍結する。 (現在の上限を超えての借り入れが可能)
国防費以外の歳出制限
2024年度は2023年度と同レベルとし、2025年度は1%だけ増やす。それ以降は制限なし。
国防予算は3%増とする。
未使用のCovid 19 予算の返還 約300億ドル
福祉予算
Medicaid(医療扶助)は変わらず。
Supplemental Nutrition Assistance Program (=Food Stamp) で就業が求められる年齢を50歳から54歳に引き上げ
IRS予算
Inflation Reduction Actで決まった最富裕層への課税推進のためIRS予算(10年間800億ドル)から、2024年度と2025年度にそれぞれ100億ドルを他の予算に振り向ける。
エネルギー計画認可
化石燃料と再生可能エネルギー計画の認可を容易にする。環境レビュープロセスの簡素化
下記テーマについてはいずれか一方が希望したが、今回の合意に含まれなかった。
奨学金免除
共和党はバイデンによる奨学金免除の取り消しを求めていたが、生き残った。
増税
民主党は富裕層への増税を図ったが、含まれず。
クリーンエネルギー
共和党はInflation Reduction Actのなかのクリーンエネルギーや気候変動に関する主部分の削除を狙ったが、実現せず。
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法案をめぐっては、双方の一部の議員からは反対の声が上がっており、共和党の強硬派の委員は「法案を阻止するために何でもする」と述べた。
共和党保守強硬派の議員連盟「Freedom Caucus」メンバーの下院議員は、McCarthy議長の今回の動きは議長解任の理由になると述べた。メンバーは次々に法案への反対を同僚に訴えた。
下院が4月26日に通した法案では、連邦債務上限を最大1兆5,000億ドル引き上げる代わりに、連邦政府の支出を4兆5,000億ドル削減するもので、今回の法案は削減がゼロであり、あまりにも異なることを問題視している。
McCarthy 院内総務を下院議長に選ぶ際に「Freedom Caucus」のメンバーが反対し、過半数を取れないまま、何日もかかった。McCathyは反対派の説得のため、多くの妥協をした。議長解任動議の提出条件は会派の半数の賛成であるが、 最終的に1人で動議を出せることを承認した。
大統領と議長は29日のメモリアルデー(戦没者追悼記念日)の祝日もそれぞれの党の議員に法案を支持するよう働き掛け、可決に十分な票の確保に努めた。
McCarthy下院議長は5月31日の下院本会議で採決を行う方針で、まず5月30日に下院の議事運営委員会で審議した。同委メンバー13人中9人が共和党議員で、そのうち最右翼の3人がMcCarthy議長に批判的である が、賛成7(共和党7)、反対6(共和党2、民主党4)の賛成多数で本会議審議に進めることを可決した。
下院本会議は5月31日夜(日本時間6月1日朝) 投票を行った。その結果、賛成多数で可決し、上院に送付された。
共和党 民主党 合計 賛成 149 165 314 反対 71 46 117 棄権 2 2 4 合計
222 213 435
法案は上院で審議・採決される。6月5日(月)以前に債務上限が引き上げられるか適用停止とされなければ、前代未聞のデフォルトに陥る可能性があり、それまでに上院で可決し、大統領がサインする必要がある。
上院ではフィリバスター(議事妨害)を阻止するために60票が必要であるが、上院での法案可決はほぼ確実視されている。
議員の中には法案の一部修正を求める声もあるが、仮に修正すれば、再度下院で議決する必要があり、時間がない。
上院勢力図 無所属は元民主党員
共和党 民主党 民主系
無所属無所属 合計 49 48 2 1 100
共和党のスーン上院院内幹事は6月2日夜までの法案可決で与野党が一致する可能性に言及した。
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