米最高裁、アラバマ州で新たな黒人選挙区を支持

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米連邦最高裁判所は6月8日、共和党が策定したアラバマ州の選挙区割りを退け、黒人が多い地域に2つ目の選挙区を割り当てるよう求めた下級裁の決定を支持した。


同州の有権者の4分の1以上は黒人だが、2021年に改定された区割りで黒人有権者が過半数を占めた選挙区は7つのうち1つだけだったため、黒人やリベラル派の有権者らが違法だとして提訴していた。

最高裁は保守派の判事が9人中6人を占め、近年は1965年の「投票権法」の権利保障対象を限定的に解釈する傾向があったため、米メディアは「予想外の判決」と報じた。バイデン大統領は「投票を巡って人種差別があってはならないとする基本原則が確認された」と歓迎する声明を出した。

決定は5対4だった。ここ10年で2度、投票権法に関して否定的な判断を示した最高裁にとって、大きな方針転換となる。今回の決定ではリベラル派3人に保守派のロバーツ長官とカバノー判事が賛成した。

性別 born 人種背景

指名した大統領

就任日 判断傾向
Clarence Thomas 男性 1948/6 アフリカ系 George H. W. Bush 1991年10月23日 保守
John Roberts  (長官) 男性 1955/1 白人系 George W. Bush 2005年9月29日 保守
Samuel Alito 男性 1950/4 イタリア系 2006年1月31日 保守
Sonia Sotomayor 女性 1954/6 ヒスパニック系 Barack Obama 2009年8月8日 リベラル
Elena Kagan 女性 1960/4 ユダヤ系 2010年8月7日 リベラル
Neil Gorsuch 男性 1967/8 白人系 Donald Trump 2017年4月10日 保守
Brett Kavanaugh 男性 1965/2 白人系 2018年10月6日 保守
Amy Coney Barrett 女性 1972/1 白人系 2020年10月26日 保守
Ketanji Brown Jackson 女性 1970/9 アフリカ系 Joe Biden 2022年6月30日 リベラル

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米国では10年に1度の国勢調査を踏まえ、連邦議会下院選の新しい選挙区割りが適用される。

アラバマ州は、2020年の国勢調査後に、共和党が多数派の州議会が新しい選挙区割りを決め、2022年11月の下院選に適用された。

アラバマ州選出の下院議席は7席で、州人口のうち黒人が全体の27%を占める。 下図の通り、黒人の居住地区は限定されている。


それに対し、従来の選挙区、改定後の選挙区は下図の通りで、あまり変わらない。

登録有権者のグループは、異議を申し立て、裁判となったが、最終結論は未定のまま、2022年11月の選挙はこれによることとなった。(2022年2月に最高裁で、保守派の判事5人の賛成で現行の区割りで11月の下院選を実施するよう命じた。)

選挙結果は黒人の支持する民主党が当選したのは7区の1人だけである。共和党が6人を確保した。

登録有権者の60%近くが黒人の黒人居住区(Blackbelt) のうちの東側が白人層の多い2区、3区、6区に分散され、各地区の黒人有権者は31%未満になり、共和党が当選している。


黒人区を1つだけは認めるが、他の選挙区では黒人が多数派にならないように分散させる「人種的ゲリマンダー」だと指摘された。

1812年のマサチューセッツ州のGerry知事による選挙区割りが、架空の火竜「salamander」に似ていることから、Gerrymanderと命名された。

民主党関係者や公民権活動家は投票権法(特に南部における人種的少数者の投票権を確保)を根拠に同州で黒人が多い地域に2つ目の選挙区が割り当てられるべきだと主張した。

立法府は黒人が多数を占める第2選挙区を創設することができたはずであり、そうすべきであり、州がそうしなかったのは第2条に違反すると主張した。


下級審は、現行の区割りは違法である可能性が高いとした。

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