井戸水からダイオキシン、近くに農薬工場跡

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福岡県久留米市荒木町のJR荒木駅前にある住宅地や商店街の井戸水から、環境基準の数倍にあたる高濃度のダイオキシンが検出されている。

住民は、近くの農薬工場跡地の土からしみ出していると訴え、敷地を調査して汚染土を廃棄するように求めているが、工場側は拒んでいる。

荒木町周辺では、上水道が整備された今も日常生活に井戸水を使っている住民も多い。市は年に2回、地区ごとに井戸水の水質のサンプル調査を実施。この検査で2020年12月、1本の井戸水から基準値を超すダイオキシンが検出された。

2022年8月には同じ地点で基準値の約6倍、近くの別の地点でも3倍と住宅街から相次いでダイオキシンが検出された。以来、この2本の井戸で超過検出が続いている。濃度は最大で1リットル当たり1兆分の6.1グラムに達し、環境基準の「1兆分の1グラム」の6倍を超えた。

駅を挟んだ反対側では1983年まで、三井化学の子会社の三西化学工業の農薬工場が稼働していた。

九州新幹線の建設に伴う調査で2007年、荒木駅構内で土壌や地下水から最大で基準の95倍のダイオキシンが検出された。

調査の結果、

(1) 三西化学工業の農薬の埋設が推定される箇所(3箇所)のうち、埋設A地点で、基準値等を超えるダイオキシン類、BHC、PCPが検出された。
  埋設B・C地点では、基準値を超えるダイオキシン類は検出されず、BHC、PCPが基準値等を超えて検出された。

(2)住民からの要請箇所の13箇所のうち、ダイオキシン類が6箇所、BHCが7箇所、PCPが9箇所、CNPが3箇所、基準値等を超えて検出された。

地元の抗議を受けて、同社と三井化学は2009年、住民側と覚書を交わして対策にあたり、工場敷地内の汚染土を囲って漏れ出しを防ぐ「遮水壁」を地下に設ける工事などをしてきた。

2009年2月23日 三西化学工業 / 三井化学 三西化学工業(株)工場跡地のダイオキシン類等土壌汚染対策計画(骨子)及び荒木校区住民との覚書の締結について

これにより、ダイオキシンは一旦、検出されなくなった。

なぜ、いまになって再び基準値を超えるダイオキシンが検出されているのか。

環境保全課では「地下水の流れは非常に遅い。1年間に20メートルくらいしか進まない。取り残された汚染地下水が今になって駅西側の住宅街に流れたんだろう。基準超過したものが出ているので対策をと再三、工場側に話しているが『いったん広まってしまった汚染地下水に何かするのは非常に難しい』という回答 で、直接的な対策は難しい」としている。

地元の自治会長(ダイオキシン等対策委員長) は、「この遮水壁が16年の熊本地震で壊れ、新たな汚染が出ているのでは」と話す。

これまでに周辺住民の健康被害は確認されていない。 環境保全課では「今検出されているのは飲み水ではありません。生活用水、庭のまき水。庭の撒き水につかったとしても、健康への影響はありません」としている。

住民組織「校区まちづくり振興会」は昨年11月、両社に「汚染土壌廃棄要求書」を提出し、遮水壁では効果に限界があるとして、汚染土をすべて廃棄処分することを求めた。

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