ルーマニアで小型モジュール原発炉(SMR)建設へ

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ルーマニア原子力公社(Nuclearelectrica)は6月13日、米国で小型モジュール式原子炉(SMR)の技術開発を行うNuScale Power 及びルーマニアのインフラ企業のE-INFRA、ルーマニアの電力・ガス企業のNova Power & Gas、米国のFluor Enterprises、韓国のSamsung C&T Corporationとの間で、中東欧とルーマニアに462メガワット規模のSMR建設での協力の覚書を締結した。三星は設計・調達・施工(EPC)などを担当する。

ルーマニア原子力公社は2022年9月27日、国内で米NuScale Power の小型モジュール炉(SMR)を建設するため、民間エネルギー企業のNova Power & Gasと の50/50合弁で、同計画のプロジェクト企業「RoPower Nuclear」を設立したと発表した。
今後、米国の.バイデン大統領が2022年6月にルーマニアへの提供を約束した支援金1,400万ドルを使って、この計画の予備的な基本設計(FEED)調査を実施する。具体的には、設計・エンジニアリング活動や建設サイトの詳細な技術分析、国内外の基準に適合する許認可活動を行う。 

NuScale Power は4月25日、韓国の重電大手の斗山エナビリティー(旧称 韓国斗山重工業)と韓国輸出入銀行との3社間の協力関係を強化し、SMR導入を加速するための覚書を締結したと発表 した。米国内と世界中でSMRを建設するためNuScale Power と斗山の既存の関係を活用し、強化するものとしている。具体的には、斗山はNuScale Power のSMRの生産能力拡大と製造技術の向上を通じて、米国を拠点とするサプライチェーンの確立を支援するという。

ルーマニアではDoicesti にある13年前に閉鎖された石炭火力発電所跡地にNuScale Power の技術で出力7.7万kWのNPMを6基備えた「VOYGR-6」(合計出力46.2万kW)を建設する。2028年頃の完成、2029年の商業運転を目指す。同発電所では、出力約8万kWの再生可能エネルギー源も併設する。

NuScale では、ほかにルーマニア、カザフスタン、ポーランドでの建設を計画している。

米国務省は5月20日、米国が日本と韓国、およびUAEの官民パートナーとともに、ルーマニアが進めているNuScale Power 製小型モジュール炉(SMR)の導入計画に共同で最大2億7,500万ドルの支援を提供すると発表した。

これは2022年6月のG7ドイツサミットの際、設立された発展途上国へのインフラ投資を促す枠組み「グローバル・インフラ投資パートナーシップ(PGII)」に基づく具体的な活動で、PGIIでは2027年までに世界中で6,000億ドル規模のインフラ投資を目指している。

米国では今回、輸出入銀行(US EXIM)が「エンジニアリング波及プログラム(EMP)」の中から、最大9,900万ドルの支援をルーマニアに提供するという「意向表明書」を発出。米国からはこれに加えて、EXIMがさらに30億ドル、および政府の独立機関として民間の開発プロジェクトに資金提供を行っている国際開発金融公社(DFC)が10億ドルの資金提供を行う可能性に向けて、LOIを発出している。

米国の EXIM、DFCとともに同計画への支援を表明したのは、日本国際協力銀行、韓国の資産運用会社であるDSプライベート・エクイティ、UAEの原子力導入計画を主導している首長国原子力会社(ENEC)、およびルーマニアのEXIMと ルーマニア原子力公社、Nova Power & Gasである。

米国務省によると、安全・確実な民生用原子力技術に対する今回の多国間の支援協力によって、世界規模のクリーン・エネルギーへの移行と地球の気温上昇を1.5℃に抑える上で、原子力が果たす重要な役割が明確に示された。米国としては、脱炭素化への世界的な動きに力を与える革新的なクリーン・エネルギー技術の活用を引き続き支援し、世界中のパートナー国にエネルギーの供給保証と自立をもたらしたいとしている。

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NuScale Powerが開発を進めてきた次世代原子炉の小型モジュラー炉(SMR)の仕組みは以下の通り。

核反応によるエネルギーで一次冷却水が熱せられ、対流と浮力で上昇する。

上昇した熱は、蒸気発生器の数百本のチューブの壁を通して二次冷却水を熱し、蒸気にする。この蒸気がタービンを回し、発電する。 (リアクター1基に発電機1基)

冷たくなった一次冷却水は重力で落下し、再度熱せられる。(繰り返し)

モジュールの冷却には自然対流と伝導によるので外部配管やポンプ、駆動用の電源を必要としない。

各モデュールは24カ月に一度、10日ほどかけて核燃料が補給されるが、その間、他のモデュールは稼働している。

事故で原子炉が運転停止すると 、外部電源無しに、冷却水の補充なしに、オペレータの作業なしに、自動的に無期限に冷却され炉心溶融を防ぐ。

 

NuScale Power は2017年1月12日、開発を進めてきた次世代原子炉の小型モジュラー炉(SMR)を使った初めての発電所を建設・運転するための認可申請を米原子力規制委員会(NRC)に提出した。

発電所の所有者は
Utah Associated Municipal Power Systems で、アイダホ国立研究所(Idaho National Laboratory )内に建設され、操業はEnergy Northwestが担当する。



リアクターと容器は地下につくられたプールの水のなかに置かれる。

2017/1/17 米国で次世代原子炉申請

NuScale Power は2022年12月22日、SMRの標準プラント設計(SPD)プロジェクトを完了したと発表した。これにより、ニュースケールが手掛ける「VOYGR SMR発電プラント」の導入が加速されるとしている。

出力合計308メガワット(MW)の「VOYGR-4」、出力合計462MWの「VOYGR-6」、出力合計924MWの「VOYGR-12」からなる3つのモデルがある。

SMRの標準プラント設計の活用により、「VOYGR SMR発電プラント」の汎用設計を顧客に提供したり、顧客の許認可や導入を支援したりすることが可能になるとしている。また、同プラントに関する包括的な3Dモデルの活用により、潜在的な顧客がニュースケールの技術の適合性評価を実施することが可能になるという。

米原子力規制委員会は2023年1月19日、NuScale Power Corpのアイダホ国立研究所で建設する小型モジュラー炉の設計を承認した。6基合計462MWで、2030年にフル稼働の予定。

日揮ホールディングスは2021年4月6日、海外における小型モジュール原子炉(SMR:Small Modular Reactor)プラントのEPC(設計・調達・建設)事業への進出を目指し、SMRの開発を行っている米国NuScale Power, LLCへの出資を決定したと発表した。40百万米ドルの出資を行う。

IHIは5月27日、NuScale Power, LLCへ出資し、日揮とともに SMR事業に参画すると発表した。

国際協力銀行(JBIC)は2022年4月4日、NuScale Powerの発行済み株式を米国のFluor Corporationから取得したと発表した。出資額は約110百万米ドル。

日本勢3社を合計すると出資比率は8~9%となり、最大株主のFluor Corporationに次ぐ。

2021/5/31 日揮とIHI、小型モジュール原子炉事業に参画 

NuScale Power, LLCは2022年5月2日、特別買収目的会社のSpring Valley Acquisition Corpとの企業結合を完了したと発表した。

今回の企業結合によって設立する新会社の企業価値は19億ドルに上る見込みで、ニューヨーク証券取引所への上場、株式取引は5月3日開始としている。 有力投資家からの2億3,500万ドルの私募増資を含む3億8,000万ドルの資金を得るとしている。

この資本を元手に、自社のSMR技術の商業化を加速させる。

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