MP Materialsはネバダ州ラスベガスを拠点とし、レアアース(希土類)採掘と処理施設の所有・運営を手がける。
北米最大のレアアース鉱山のカリフォルニア州Mountain Pass鉱山を所有・運営するほか、その周辺地域の鉱業権、希土類鉱物処理・開発に伴う知的財産権を保有。セリウムやランタン、ネオジム、プラセオジム、サマリウムなどを提供する。
最終的にはレアアースメタル、アロイ、磁石を製造するプラントを建設中で、Mountain Passで採掘した原料をここで加工し、完全に国産の垂直統合の磁石のサプライチェーンを2024年に完成させる。
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Mountain Pass鉱山は1949年に発見され、Molybdenum Corporation of Americaが1952年に小規模の生産を開始した。
1962年にカラーTVに使うユウロピウムの需要拡大に対応し、生産を拡大した。
1965年から1995年まで、大規模生産を続け、世界のレアアースの需要の大部分を賄った。
1977年にUnocal が同社を買収、2005年にChevron子会社となったが、1998年に排水問題で分離工程を停止、2002年に環境規制と中国品の低価格攻勢により採鉱を停止した。
2008年にこの鉱山の再開のためMolycorp Minerals LLCが設立され、Chevronから鉱山を買収した。2011年から生産を再開した。
住友商事は2010年末、Mountain Pass鉱山の再開を準備中のMolycorp, Inc に投融資することを決めた。しかし、Molycorpは2011年9月16日、住友商事との間で上記の交渉を打ち切ることで合意したと発表した。
Mountain Pass鉱山の拡張・近代化のための781百万ドルの資金が増資や売上収入で完全に確保でき、住友商事の出資融資が必要ではなくなったとし、当初交渉した時と状況が著しく変わり、両社の株主にとり価値のある取引ではなくなったため、交渉打ち切りを決めたとしている。
2011/9/22 住友商事の米国レアアース企業への出資取り止め
2014年にWTOが中国のレアアース輸出規制を規定違反と認定し、中国は2015年からレアアース輸出枠を撤廃、2015年4月には輸出関税を撤廃した。これを受け、ネオジムやジスプロシウムの5月下旬の価格は4月比で20~30%下がり、2010年以前の水準に戻った。Molycorpは苦境に陥った。
Molycorpは2015年6月25日、連邦破産法11条の適用を申請した。破産法の適用下で、米・カナダ事業の債務17億ドルを再編する。
2017年にMP Materials がMountain Pass鉱山と他のMolycorp の資産を買収した。
MP Materials は2020年7月31日、国防総省との間で米国でのHeavy Rare Earths 生産再開で契約を結んだと発表した。
国防総省は2020年12月にMountain Pass鉱山で軽希土類元素の処理を復活させるため960万ドルを出している。
2020/7/31 米国防総省、レアアース事業へ資金支援
バイデン米大統領は2022年2月22日、レアアースなど重要鉱物の国内生産を後押しするための投資計画を発表した。
北米唯一のレアアース鉱山を米西部カリフォルニア州で運営するMP Materialsに対し、国防総省の支援プログラムから3500万ドルを投資し、Mountain Pass鉱山で重希土類元素(HREE) の採掘から分離・精製まで自前でできるようにする。
軽希土類に加え、重希土類の処理が出来ることで、MP Materials は高機能永久磁石を製造するのに必要な全てのレアアースを抽出・精製できるようになる。
Mountain Pass全景
Mountain Passでの採掘、処理に加え、MP Materialsは7億ドルを投じ、テキサス州Fort Worthでレアアースメタル、アロイ、磁石を製造するプラントを建設中である。Mountain Passで生産した原料をここで加工し、完全に国産の垂直統合の磁石のサプライチェーンを2024年に完成させる。
ネオジム磁石合金はおおよその重量比で、ネオジム(Nd) 23~30%、ディスプロシウム(Dy) 2~10%、鉄(Fe) 60~65%、ホウ素(B) 1%、コバルト(Co) 3%、および微量の銅(Cu)、アルミニウム(Al)などの成分から構成されている。
Nd、Dyなどの希土類元素は酸化物やフッ化物の形で希土鉱石の中に複数種含有されている。Montain Passの鉱石はNd2O2を多く含む。
https://www.neomag.jp/mailmagazines/topics/letter200906.html
2022/2/25 米、レアアース国内生産
米General Mortorsは2021年12月9日、米国内でレアアース材料の供給網を形成するため、MP Materialsと戦略的な提携を行うと発表した。これにより、ネオジム磁石の原材料を国内の鉱山から安定的に調達し、電気自動車(EV)の駆動モーターに使う高性能磁石に加工する体制を確立する。
またGMは同日、ドイツVacuumschmelzeとも協力し、「アルティウムモジュラーEVプラットフォーム」を使用する12以上のモデルで使用される電気モーター用永久磁石を製造する工場をアメリカに建設する計画を発表した。
ネオジム焼結磁石(NdFeB)は、モーターの重要部品だが、現在米国内にネオジム磁石を製造する能力は事実上ないという。
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ネオジム・プラセオジム (NdPr) などのレアアース材料は、世界で最も強力なネオジム鉄ボロン磁石と呼ばれる永久磁石の原料で、この永久磁石は、脱炭素化に向けて需要拡大が見込まれる電気自動車や風力発電用モーター、各種電子機器などの先端産業に欠かせない部品である。
日本は中国からの輸入を主な供給源としているが、MP Materials製米国産レアアースの供給を通じて日本における調達の多様化、安定化に貢献する。
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