シェブロン、東地中海で洋上LNGを検討 

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日本経済新聞は7月24日の夕刊でシェブロンの天然ガス営業部門のトップとのインタビュー内容を報じている。


それによると、シェブロンは東地中海で洋上LNGプラントの設置を検討する。イスラエル沖の天然ガスをLNGにして欧州やアジアに輸出する。

年産能力は数百万トンで、事業費は少なくとも数千億円に上るとみられる。

2020年にNoble Energy の買収でシェブロンが取得したLeviathan大型ガス田などで生産したガスはパイプラインでイスラエルに出荷しており、同国はガス火力を増やして2025年までに石炭火力を廃止する計画であるが、Leviathan ガス田の回収可能な埋蔵量は6050億立方メートル(LNG換算で4億4000万トン:日本の需要の約6年分に相当)で、イスラエルだけでは消費しきれないため、余剰分のガスの行方に注目が集まっていた。

2022年9月の S&P とのインタビューで、シェブロンの担当副社長は米国と地中海のLNG事業を拡大する方針を明らかにしていた。

Chevron eyes US, East Mediterranean as key to LNG business growth

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米石油大手 Chevronは2020年に独立系石油ガス開発企業のNoble Energy, Inc.を買収した。

買収は、Chevronが Nobleの全株式取引額の50億ドル相当を買い取る株式交換方式で行う。Nobleの企業価値は130億ドルとされているが、同社の負債額は87.4億ドルに及ぶため、Chevronは50億ドルで買収し、債務を引き次ぐ。

Chevronはこの買収で、コロラド州のデンバー/ジュレスバーグ盆地、テキサス州とニューメキシコ州にまたがるパーミアン盆地の油田・ガス田を獲得した。シェブロンはこれらのシェールガス由来のLNGの取り扱いも強化する。

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Nobleはこのほか、イスラエル沖のLeviathan ガス田(2019/12 生産開始)、Tamarガス田(2013/3 生産開始)を持つほか、キプロス沖のBlock 12 ガス田を持っており、Chevronが引き継いだ。

イスラエル沖のTamarガス田からの天然ガスパイプラインがYam Tatisガス田で既存のパイプラインに接続され、2013年3月30日にAshdod天然ガス基地への天然ガス輸送が始まった。

これらの外側にはキプロスの鉱区がある。

同地区でのガス田探査は当初 British Gasが行ったが、ギブアップした。

2007年に米国のNoble Energyが36%出資し、イスラエルの Delek Drilling (31%)、Isramco (29%)、Dor Alon (4%)の3社が加わるコンソーシアムが引き継ぎ、2年間の努力の末に2009年にTamarガス田を発見した。 

Tamarガス田のほか、Nobleは下記に参加している。

Leviathanガス田:
   Noble Energy 39.66%、Avner Oil & Gas 22.67%、Delek Drilling 22.67%、Ratio Oil Exploration 15%

キプロス Block 12:
   Noble Energy 100%(DelekとAvner が15%ずつ取得するオプション)

Leviathanガス田についてはキプロス(Cyprus) のBlock 12の分と合わせて海底パイプラインでキプロスに送り、キプロスで液化してLNGにして海外に輸出する構想があった。

なお、キプロスについては問題を含んでいる。

キプロス島は1974年以来、南北に分断されており、島の北部約37%をトルコ系住民による北キプロス・トルコ共和国(トルコのみが承認)が占めている。
南側のギリシャ系住民が住むのがキプロス共和国で、EUに加盟している。

トルコ政府はこれに参加する企業はトルコのエネルギー事業から締め出すと警告している。

2013/4/4 イスラエルで新ガス田からの天然ガス輸送開始  (出資比率等はこの時点のもの)

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