スウェーデンのNATO加盟に大きな進展

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NATOのストルテンベルグ事務総長は7月10日、トルコがスウェーデンのNATO加盟を支持することに同意したと明らかにした。トルコのエルドアン大統領が「できるだけ早く加盟議定書をトルコ議会に送り、批准を確実にするため議会と緊密に協力することに同意した」と述べた。7月11~12日に開かれるNATO首脳会議を前に、大きな進展となった。

但し、エルドアン大統領がトルコ議会に加盟議定書を送る時期について、ストルテンベルグ事務総長は具体的な日程を示さなかった。議定書の送付後、トルコ議会は承認投票を実施する必要がある。

付記

トルコのエルドアン大統領は7月12日、スウェーデンのNATOへの加盟申請について、国内での批准手続きはトルコ議会が再開される10月以降になるとの見方を示した。記者会見で、トルコ議会が2カ月間の夏季休暇に入ることから批准手続きはそれ以降になると発言。「議会が始まれば、議長が優先的に扱うだろう。できるだけ速やかに手続きが終わることを望んでいる」と述べた。

エルドアン氏は会見で「今後、スウェーデンが適切な措置を取ることを信じている」と強調した。

米国によるトルコへのF16戦闘機の供与についても言及し、「バイデン大統領はできることをすべてやると言った。これまで以上に期待を持っている」と述べた。
米国のサリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)は、バイデン大統領が売却の動きを明確に支持しているとし、議会と協議を行いながら売却を進めると述べた。

エルドアン大統領はトルコのEU加盟も希望しているが、EU加盟国すべての賛成を得るのは簡単ではない。

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フィンランドとスウェーデンは2022年5月18日、NATO加盟を正式に申請した。

NATOの加盟各国は2022年7月5日、スウェーデンとフィンランドの正式加盟を承認する議定書に署名した。NATOは32カ国体制となる。

しかし実際の加盟には、EU加盟の30カ国全部の批准が必要である。

10月までに既存の全30カ国中、28カ国が国内の批准手続きを終えたが、トルコとハンガリーのみが批准をしていない。

ハンガリーのオルバン首相は、内政や外交ではリベラリズムに難色を示し、EUやウクライナのゼレンスキー大統領に批判的な姿勢を打ち出している。

トルコのエルドアン大統領は、トルコ政府と対立する国内のクルド分離主義組織「クルド労働者党(PKK)」を両国が支援しているとして難色を示していた。

スウェーデンは人道主義を尊重し人権を擁護するとの立場から、これまでも難民や政治的亡命者を多数受け入れてきているが、クルド人についてはトルコ国内政治における左右両派の対立先鋭化や1980年代の軍事クーデターを契機とする弾圧によって生まれた政治難民と認めて自国に受け入れて来た。

トルコのエルドアン大統領は、スウェーデンをテロ組織の「揺籃の中心地」であると呼び、スウェーデンにクルド労働者党 PKKと結びつきがあるクルド系国会議員がいることや、クルド系の活動家らがスウェーデンの国会に招致されたことなどを強い口調で非難した。

トルコが引き渡しを求める「テロリスト」はクルド系の活動家など数十人に及ぶとされる。

トルコ側から見ればテロリストであるが、スウェーデン側からは政治的迫害を理由に受け入れた難民で、多くは既にスウェーデン国民となっている。人権国家のスウェーデンとしては、犯罪の証拠がない政治亡命者を引き渡すことは出来ない。

スウェーデンの最高裁は2022年12月19日、トルコのエルドアン大統領が名指しで身柄移送を求めるトルコ人記者の送還は人道上の理由から「認められない」と判断した。

エルドアン大統領はスウェーデンでイスラム教の聖典コーランが燃やされた抗議活動などにも反発する。

2022/12/9 フィンランドとスウェーデンのNATO加盟 難航 


トルコのエルドアン大統領は2023年3月17日、フィンランドのニーニスト大統領と会談し、フィンランドの北大西洋条約機構(NATO)加盟を認める意向を示した。

ハンガリー議会は2023年3月27日にフィンランドの加盟批准を巡る採決を実施し、承認した。 スウェーデンのNATO加盟批准については「後日決定する」としている。

トルコ議会が2023年3月30日にフィンランドの加盟を承認し、全30の加盟国の批准手続きが完了し、フィンランド は4月4日に正式加盟した。スウェーデンだけが残った。

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今回、NATOのストルテンベルグ事務総長は記者会見で、スウェーデン、トルコ両国は「トルコの正当な安全保障上の懸念に対処するため緊密に協力した」と説明。その一環として、スウェーデンが改憲や法律の改定、PKKに対するテロ対策の協力拡大、トルコへの武器輸出の再開といった措置を取ったことに言及した。

スウェーデンは今年6月、PKKを含むテロ組織への参加や支援を禁止する「反テロ法」を施行した。7月にはPKK支援のため実業家に金銭を要求した男に有罪判決 が出ており、スウェーデンは「トルコの要求を満たした」と主張している。


米国や欧州各国、NATOはいろいろな形でトルコを説得した。

トルコは米国に対し、F16戦闘機の売却を求めている。またEUに対し、トルコのEU加盟を求めている。

今回の合意にあたり、これらが協議対象になった可能性があるが、これらが実際に実行できるかが問題である。


バイデン米大統領は7月5日、スウェーデン首相と会談し、トルコの反対で難航しているスウェーデンのNATO加盟を早期に実現するよう自ら関与していくと明言した。加盟を認める代わりにF16戦闘機の売却を米国に要求するトルコの条件を受け入れるため、売却に慎重な米連邦議会の説得に向けた調整を続ける。

トルコは米国が反対するロシア製ミサイル「S400」を購入し、米国が報復として次世代戦闘機「F35」の開発プロジェクトからトルコを排除した。トルコはF35に代わる措置として米国に新型のF16の売却を求めてきた が、トルコの人権対応を問題視する米議会上院のメネンデス外交委員長(民主党)らに反対論が残る。 メネンデス委員長はエルドアン大統領について「国際法を損ない、人権と民主主義を無視している」と非難、「信頼できる同盟国としてあるべき行動をとるまで売却を承認しない」と唱えてきた。

バイデン大統領は7月9日、トルコのエルドアン大統領と45分にわたり電話会談をおこなった。バイデン大統領はスウェーデンのNATO加盟を「できるだけ早く」実現させたいとの意向を表明した。

エルドアン大統領は、クルド人の独立国家建設を目指す武装組織クルディスタン労働者党の支持者がスウェーデンでデモを続けてい ることを問題視した。スウェーデン政府がデモを許可したことは、解決のための措置を「無効にするものだ」と改めて述べた。

両首脳は、リトアニアで開催されるNATO首脳会議で直接会談し、二国間関係や地域問題について詳しく話し合うことで合意した。

バイデン大統領は電話後の記者会見で、「スウェーデンに関する取引を望んでいる」と述べた。

トルコのエルドアン大統領は7月10日、同国の議会がスウェーデンのNATO加盟を承認する前に、EUはトルコのEU加盟に道を開くべきだと述べた。

トルコは1987年、EUの前進である欧州共同体(EC)に加盟を申請し、1999年に加盟候補国になった。2005年に正式な加盟交渉が始まったものの、トルコの人権侵害問題をめぐり2016年に交渉が中断された。

トルコは、EU加盟に向け大胆な改革を進めているが、キプロス問題が加盟のガンとなっ ている。

キプロスはギリシャ系住民とトルコ系住民が混住しており、1974年以来、南北に分断されている。EUに加盟する南部ギリシャ系のキプロス共和国に対し、トルコだけが承認する北部トルコ系の北キプロス・トルコ共和国(北キプロス)が対立、トルコはキプロス共和国の船舶や航空機の自国乗り入れを拒否しており、EUは開放を加盟交渉の条件にしてい る。

また、トルコの司法制度が依然として西欧法治国家の水準に達していないことなどから事実上停止している。

エルドアン大統領は、「一つの事実を強調したい。トルコはEUの門前で50年間待ち続けている。NATOのほぼ全加盟国がEU加盟国だ。私は今、トルコを50年以上待たせているこれらの国々に呼び掛けている。そしてまた呼び掛けるつもりだ」と述べた。

「まずトルコのEU加盟への道を開いてほしい。そうすればわれわれは、フィンランドに対してそうしたように、スウェーデンのNATO加盟への道を開くだろう」と述べた。 バイデン大統領と電話会談を行った際にも、この要求を伝えたと明らかにした。  

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