新地質年代「人新世」の代表地点選定

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国際地質科学連合(IUGS)の人新世作業部会は7月11日、1950年代からの新たな地質時代となる「人新世(じんしんせい)」(Anthropocene)の地質上の代表地点("Golden Spike")にカナダのオンタリオ州MiltonのCrawford Lakeを選んだと発表した。 正式に決まれば、気候変動など人類活動の多大な影響を象徴する場所となる。

人新世とは、人類が地球の地質や生態系に与えた影響に注目して提案されている地質時代における現代を含む区分で、特徴は、地球温暖化などの気候変動、大量絶滅による生物多様性の喪失、人工物質の増大、化石燃料の燃焼や核実験による堆積物の変化などがあり、人類の活動が原因とされる。

これまでの完新世(Holocene)は、地質時代区分のうちで最も新しい時代で、最終氷期が終わる約1万年前から現在までを指し、その境界は、大陸ヨーロッパにおける氷床の消滅をもって定義された。

選定では地質の保存状態の差が明暗を分け、大分県の別府湾は落選した。地震や台風が影響した可能性がある。

クロフォード湖はカナダのオンタリオ湖近くにある。代表地に選ばれた要因に「堆積物が年ごとに層をなし、生物の活動で乱されていない」「堆積物が厚く、人新世の開始前後の変化を見やすい」「1000年規模の記録があり、先住民の活動の痕跡も含む」ことなどを挙げた。

1950年代の地層には化石燃料を高温で燃やしたときに発生するすす「球状炭化粒子」のほか、米国や旧ソ連による核実験で拡散した微量のプルトニウムも含まれていた。地球環境に大きな影響を与えた人間活動の痕跡が湖底の地層に残っている。

研究チームはこれらのデータから、人新世が始まった時期を1950年とし、最初の年代名を「Crawfordian age」と提唱した。

今後、IUGS内で三度の審議を経て、2024年にも正式に決定される見通し。

今回、IUGSの作業部会は世界各地の12カ所の候補地点からクロフォード湖を複数回の投票などを経て選んだ。

   一覧表 https://www.anthropocene-curriculum.org/the-geological-anthropocene/site/

    クリックすると、その地点の写真と説明が出る。

クロフォード湖は底にある堆積物の地層が明確で年代の分析がしやすく、分析データも多角的で、検討の初期段階から研究者の評価は高かった。

2022年12月に作業部会の投票メンバー約20人が実施した1回目の投票でクロフォード湖は過半数を獲得した。2位は中国北東部の湖で、大分県の別府湾は3位だった。最終的に1位のクロフォード湖と 2位の吉林省の四海龍灣湖(Sihailongwan Lake下図)とで決選投票し、クロフォード湖が60%以上を得て代表地になった。

日本で唯一の候補だった別府湾の海底地層は愛媛大学などの研究チームが分析した。ごく微量のプルトニウムや 化石燃料を燃やしたときに出る灰、富栄養化の影響を受けたカタクチイワシのうろこ、プラスチックごみが小さく砕かれた「マイクロプラスチック」など人類活動の関わりが明らかな物質を数多く見つけた。

別府湾の海底の一部はくぼ地で海水が上部と混ざりにくいため、生物がすみづらく地層が乱されにくいという特徴もあった。ただ、別府湾の地層には過去の台風による洪水や地震で堆積物が乱された層があることをIUGSの作業部会のメンバーらが論文で指摘していた。

一度できた堆積物が地震によって海底を流れ下ってできた層などがあり、堆積物の層が一部削り取られる可能性が懸念されるためと思われる。

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