中村修二氏ら、レーザー核融合の起業化

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2014年に青色発光ダイオードの開発でノーベル物理学賞を受賞した中村修二氏らが、2022年11月にレーザー核融合のスタートアップ企業を米国に設立した。2030年をめどに日本か米国で原発1基分相当の1ギガワットの商用炉を建設する。

設立したのはBlue Laser Fusion Inc.で、独自のレーザー、核融合炉の発明をもとに、レーザー核融合の商用化を目指すスタートアップとして、 中村修二・カリフォリニア大学サンタバーバラ校教授をCEO、早稲田大学ベンチャーズの太田裕朗共同代表をCTOとして、2022年11月に米国で創業登記された。

早稲田大学ベンチャーズは、早稲田大学の建学の精神「早稲田大学教旨」の1つである「学問の活用」を図るスタートアップ企業を創設し育成することで、学問の知見や研究成果を社会に実装し、人類社会の進化と幸福、ならびに持続可能性に貢献する事業と産業を創出することを本旨として2022年4月5日に設立されたディープテップ分野の創業投資に特化したベンチャーキャピタルである。

早稲田大学ベンチャーズは創業株主としてBlue Laser Fusion Inc.の株式を取得している。

Blue Laser Fusionは、独自のハイパワーレーザー発生方式、中性子を発生しないHB11燃料の組み合わせに基づくレーザー核融合方式を採用する方針を掲げている。 同社は創業半年で十数件の特許を米国などで出願した。強力なレーザーを繰り返し照射できる目処を理論上つけたという。燃料には重水素の代わりにホウ素を使い、中性子が出ない。

Blue Laser Fusion Inc.は、2023年7月にSPARX(未来創生3号ファンド)、JAFCOをリードインベスターとする総額25百万米ドルの初回資金調達を実施した。

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核融合は、重水素と三重水素の原子核をクーロン力を超えて融合させることでヘリウムと中性子を作り出すもの。このとき、ごくわずかな質量が失われ るが、失われた質量はすべてエネルギーとして放出される。
放出されるエネルギーは失われたエネルギーと光速の2乗の積に比例することから、莫大なエネルギーとなる。

今回はホウ素を使うため、中性子を発生しない。

核融合エネルギーには慣性閉じ込め核融合エネルギー(IFE) と磁場閉じ込め核融合エネルギー(MFE) があ る。

慣性核融合は核融合燃料を瞬間的に高温高密度に圧縮し、燃料自身の重さ(慣性力)で燃焼を維持させる方式で、レーザー核融合がその代表 。

これに対し、磁場核融合は低密度の燃料を磁場容器に長時間閉じ込めて核融合反応を起こさせる方式で、トカマク型がその代表。

世界中で様々な核融合技術の研究・開発が進められる中、レーザー核融合は、2022年12月に米国ローレンス・リバモア国立研究所が入力レーザーエネルギーを上回るエネルギーの出力を人類として初めて達成した 。


12月5日に行った制御核融合実験で、核融合を起こすために使うレーザーエネルギーよりも多いエネルギーの生成(核融合点火)に初めて成功した。この実験では、研究所に設置された施設の192個の巨大なレーザーでダイヤモンドで包んだ凍結水素を含む小さなシリンダーを爆破した。

1秒の100兆分の1未満の間に2.05メガジュールのエネルギーが水素シリンダーに衝突することで、核融合の生成分である中性粒子が流出し、約3メガジュールのエネルギーを生成した。レーザーパルス生成のためにエネルギーを消費したため、使ったエネルギーの約1.5倍のエネルギーを生成できたことになるとしている。


レーザー核融合発電では、まず炉の中心に直径5mmの球状燃料ペレットを打ち込み、これを数百万ジュールの高出力レーザーパルスで一様に照射 する。

レーザー照射を受けた燃料の外側は高温となり数千万気圧もの圧力が発生するので、球状の燃料はその中心に向かって圧縮され る(爆縮)。

こうして瞬間的に核融合反応を起こさせ、これを1秒間に数回の割合で繰り返すことにより、連続的にエネルギーが発生するので、これを外部へ導くことにより数百万キロワットの発電を行うことができ る。

   

レーザー核融合技術振興会 

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