原発処理水 海洋放出を開始

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東京電力は福島第一原発にたまる処理水について、海への放出に向けて大量の海水を加えてトリチウムの濃度を測定した結果、想定どおり薄められていることや気象条件に問題がないことが確認できたとして、政府の方針に基づき、8月24日午後1時ごろに放出を始めた。

政府は8月22日の関係閣僚会議で、基準を下回る濃度に薄めた上で、24日にも海への放出を開始することを決めた。

東京電力は放出に向けた準備作業を始め、大量の海水と混ぜ合わせた処理水を「立て坑」と呼ばれる設備にためた上で、トリチウムの濃度を確認した。分析の結果、トリチウムの濃度は1リットルあたり43から63ベクレルと、国の基準の6万ベクレルを大きく下回り、放出の基準として自主的に設けた1500ベクレルも下回っていて想定どおり薄められていることが確認できたと発表した。

放出の完了には30年程度という長期間が見込まれ、安全性の確保と風評被害への対策が課題となる。

福島第一原発では、事故の直後から発生している汚染水を処理したあとに残るトリチウムなどの放射性物質を含む処理水が1073基のタンクに保管され、容量の98%にあたる134万トンに上っている。

原子炉建屋への地下水・雨水の流入量を減らすため、地下水のくみ上げや凍土壁(陸側遮水壁)等、重層的な取組みを実施してきた結果、汚染水発生量は、対策前の約540m3/日(2014年5月)から、約140m3/日(2020年平均)まで低減している。

実際には、敷地内のタンクに保管されている処理水のうち、およそ7割は、トリチウム以外の放射性物質を除去しきれておらず、放出するための基準を満たしていない。

原子力規制委員会が認可した福島第1原発の実施計画では、ALPSの設置目的はトリチウム以外の放射性物質の濃度を基準値未満に下げることと明記している。

2018年8月に河北新報が、2017年度にヨウ素129が法律で定められた放出のための濃度限度(告示濃度限度)を60回、超えていたと報じた。

それまで東京電力はこれを明らかにしていなかったが、2018年9月28日、汚染水を浄化した後にタンクで保管している水の約8割に当たる75万トンで、トリチウム以外の放射性物質の濃度が排水の法令基準値を超過しているとの調査結果を明らかにした。今後、海洋放出など処分をする場合には、多核種除去設備(ALPS)などで再浄化するとした。

政府は2021年4月13日、関係閣僚会議を開き、福島第1原発の汚染処理水の放射性物質の濃度を国の放出基準より下げた後、海に流す方針を決めた。

タンクの水の7割は、放射性物質の濃度が国の放出墓準を超えているため、放出前に、濃度が基準未満になるまでALPSに通す。その後、技術的に取り除けないトリチウムについて、福島第1原発の地下水の放出基準(1リットルあたり1500ベクレル)を下回るよう、海水で100~1700倍に薄める。

2020/10/28 福島原発、汚染処理水の処分問題 

このため、放出する前にはトリチウム以外の放射性物質の濃度が国の基準を下回る濃度になるまで処理を続ける(二次処理)。

二次処理した水はタンクに入れてかき混ぜ、均質にした上で、基準を満たしているか実際に測定して確認する。

この作業には1回あたり2か月程度かかることから、作業は3つのタンク群に分けて行われ、連続して放出できるようにする。

放出作業は、原発内の免震重要棟にある集中監視室から遠隔で行われ、作業員が画面を操作してポンプを動かし、処理水を海水と混ぜたうえで「立て坑」に流し込む。

「立て坑」からあふれ出ると、沖合1キロの放出口につながる海底トンネルに流れ込んで海に放出される。

今回の放出は、7800トンの処理水を海水で薄めた上で17日間の予定で連続して行うとしており、今年度全体の放出量はタンクおよそ30基分の3万1200トンを予定している。放出期間は30年程度に及ぶ見込みで、長期にわたって安全性を確保していくことが重要な課題になる。

東電は、放出後の風評対策については、「政府とともに風評影響を最大限抑制すべく取り組んでいきたい。特に安全と品質を確保した上で海洋放出し、科学的根拠に基づき迅速で的確な情報発信を行っていきたい。そして、こうした対策を取っても風評被害が発生した場合は適切に賠償していきたい」と述べた。

漁業関係者は放出決定に、2015年の約束を破ったとして不満を表している。処理水の安全性については理解したということで、海洋放出を理解して受け入れたわけではないというのが全漁連・県漁連の考えである。

2015年にサブドレン計画が出された。第一原発の山側からは地下水が建屋側へ流れ込み、これが内部の溶融燃料に触れて汚染水が増える要因となっている。「サブドレン計画」は、建屋内に流れ込む地下水を減らし高濃度汚染水の増加を抑えることなどが目的で、原子炉建屋を囲む41本の井戸から地下水をくみ上げ、浄化装置で処理し、放射性物質の濃度を基準以下にして海に放出する。地下水を150トンに半減できると試算した。

これについていろいろあったが、最終的に福島県漁連は2015年8月11日、条件付きで計画を容認する文書を国と東電に提出した。

東電は2015年8月25日付で廣瀬直己社長名で回答している。

東京電力(株)福島第一原子力発電所のサブドレン水等の排水に対する要望書に対する回答について
 
4 建屋内の水は多核種除去設備等で処理した後も、発電所内のタンクにて責任を持って厳重に保管管理を行い、漁業者、国民の理解を得られない海洋放出は絶対に行わない事
   
(回答)
 ・ 建屋内の汚染水を多核種除去設備で処理した後に残るトリチウムを含む水については、現在、国(汚染水処理対策委員会トリチウム水タスクフォース)において、その取扱いに係る様々な技術的な選択肢、及び効果等が検証されております。また、トリチウム分離技術の実証試験も実施中です。
   
 ・ 検証等の結果については、漁業者をはじめ、関係者への丁寧な説明等必要な取組を行うこととしており、 こうしたプロセスや関係者の理解なしには、いかなる処分も行わず、多核種除去設備で処理した水は発電所敷地内のタンクに貯留いたします。

      https://www.tepco.co.jp/news/2015/images/150825a.pdf


香港政府は8月22日、処理水の放出が始まる24日から、福島など10都県の水産物を禁輸にすると発表した。禁輸対象は福島のほか、東京、千葉、栃木、茨城、群馬、宮城、新潟、長野、埼玉の10都県で、中国本土がすでに実施している規制にあわせた。

中国政府は福島原発事故の発生にともない、日本から輸出される食品などについて、福島県など10都県産のものは輸入停止、それ以外については日本の政府機関による証明書を求めている。
さらに、7月のALPS処理水放出に関する国際原子力機関(IAEA)の報告書公表を受け、水産品を中心とする日本からの輸入食品に対する税関での検査を強化している。7月の日本からの生鮮の魚の輸入額(ドルベース)は前年同月比 56.8%減となった。

今回の放出を受け、中国政府はこれまでの10都県の水産物の輸入禁止を、24日から全面的禁輸とする。

税関総署告示2023年第103号(日本産水産物の輸入全面停止)

福島原発からの放射性物質を含む廃水の海洋放出による食品の放射性汚染リスクを防ぐため、中国の消費者の健康を守り、輸入食品の安全を確保するために、『中華人民共和国食品安全法』およびその施行規則、『中華人民共和国輸入・輸出食品安全管理規定』の関連規定、および世界貿易機関の『衛生および植物防疫措置に関する協定』の関連規定に基づき、2023年8月24日以降、中国税関総署日本産の水産物(食用水生動物を含む)の輸入を全面的に一時停止することを決定した。

付記

中国の国家市場監督管理総局は8月25日、食品生産事業者に対して日本産の水産物を使った加工食品の製造や調理や販売を禁止すると発表した。さらに、食品の安全に関する検査を強化し、違反があれば厳重に対処するとしている。
また、中国各地で塩の買占めが発生していることを受け、関係各所と連携して異常な価格変動や違法行為に関する監視を強化すると発表した。

2023年8月25日 水産物の食品安全監視および食塩価格監視の取り組みを強化

8月24日、日本政府は国際社会の強い疑念と反対を無視し、一方的に福島の核汚染水の海洋放出を強行した。これは極めて自己中心的で責任を持たない行動である。

市場監督総局は、日本産の水産物(食用水生動物を含む)を原料とした加工食品や調理済み食品の販売(オンライン販売を含む)を厳しく禁止し、市場で販売される輸入水産物の食品安全抽出検査を強化し、関連する違法行為が発見された場合には法律に基づき厳正に対処する。



韓国の韓悳洙首相は「基準に合わない放流をした場合、中断および説明を要求して二国間協議違反と判断されれば国際的提訴を行う」と明らかにした。

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