バイデン米大統領は9月25日、太平洋島しょ国で構成する「太平洋諸島フォーラム(PIF)」の首脳らとの2回目の会議をホワイトハウスで開催した。(2022年9月29日に1回目を開催)
これに先立ち、太平洋の小国であるクック諸島とニウエを国家承認すると発表した。(これにより、仏領のニューカレドニアとポリネシアを除くPIFのすべての国を承認したこととなる。)
バイデン氏は声明で、米国にはクック諸島との長い協力の歴史があり、その歴史は米軍がクック諸島の環礁の1つに空港の滑走路を建設した第二次世界大戦までさかのぼると指摘。クック諸島とニウエを国家承認することで「両国の国民生活にとって最も重要な課題に取り組むため、この永続的なパートナーシップの範囲を拡大することができる」とした。
バイデン氏は歓迎式典で「米国は、自由かつオープンで繁栄し安全なインド太平洋地域の確保にコミットしている。われわれはこのテーブルを囲む全ての国と協力して目標を達成することに尽力する」と述べた。
米国は海底ケーブルによるインターネット接続の改善など地域のインフラ整備への新たな資金提供を確約した。
バイデン氏は気候変動対策、経済成長促進、違法漁業対策、公衆衛生改善を目的とする地域の事業にさらに2億ドルを拠出するため議会と協力すると表明した。
「これらの新たなプログラムや活動は今後数年にわたり、太平洋島しょ国と共に協力を拡大・深化させることへの米国のコミットメントを示すもの」としている。
共同声明によると、首脳らは2025年に再度会議を開催し、その後、2年ごとに政治的に関与していくことで合意した。
PIFの議長国であるクック諸島のブラウン首相は、今回の首脳会議は「繁栄に向けたパートナーシップを発展させる機会」と指摘。数週間後に開催する第52回PIFF首脳会議に「最高レベルで積極的に関与する」よう米政府に要請した。
今回の会議にはPIF加盟18カ国・地域全ての代表者が出席したが、全てが首脳レベルではなく、中国と関係を深めているソロモン諸島のソガバレ首相は欠席した(国連総会には出席)。米政府高官によると、米国はこれに失望したという。 バヌアツのキルマン首相も国内対応を優先し欠席した。
太平洋諸島フォーラム(PIF)は、1971年8月、第1回南太平洋フォーラム首脳会議がニュージーランドのウェリントンにおいて開催されて以来、大洋州諸国首脳の対話の場及び地域協力の核として発展してきた。
16か国・2地域が加盟し、政治・経済・安全保障等幅広い分野における地域協力を行っており、事務局はスバ(フィジー)にある。毎年1回総会を開催し、最終日に総会コミュニケを採択している。
オーストラリア、ニュージーランド、パプアニューギニア、フィジー、サモア、ソロモン諸島、バヌアツ、トンガ、ナウル、ツバル、ミクロネシア連邦、パラオ、マーシャル諸島、キリバス、クック諸島、ニウエ、仏領ポリネシア、ニューカレドニアの16か国及び2地域が参加している。
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中国もこれらの諸国との関係強化を図っており、台湾との国交を断絶する国も増えている。
中国の王毅国務委員兼外相は2022年5月に南太平洋の島しょ国など8カ国を歴訪し、5月30日にフィジーで島しょ国9カ国との外相会議をオンラインで開催した。
2022/6/1 中国、南太平洋島しょ国と外相会議、安保面の合意はできず
2022年8月にはソロモン諸島が米沿岸警備隊の巡視船の寄港を拒否した。(4月に中国と安全保障協定を締結)
バイデン大統領は2022年9月29日、太平洋島嶼国首脳を招いた会議を初めて開いた。
参加したのは14島嶼国で、豪州とNZがオブザーバーで参加した。
協力強化に向けた「米太平洋パートナーシップ宣言」に署名した。
ソロモン諸島は当初、声明に参加しないとしていたが、中国に配慮して表現を修正させたうえで署名した。
各国・地域名 | 米国交 | 台湾 国交 | 中国 国交 | Pacific Islands Forum | 2022年中国 外相会議 | 自由連合 盟約* | 米 首脳会議 | |||
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訪問 | 会議 | 2022/9/29 | 2023/9/25 | |||||||
メラネシア | パプアニューギニア | 〇 | ◯ | 〇 | ◎ | 〇 | 〇 | 〇 | ||
フィジー | 〇 | ◯ | 〇 | ◎ | 〇 | 〇 | 〇 | |||
ソロモン | 〇 | 2019/9 断絶 |
→ ◯ | 〇 | ◎ | 〇 | 〇 | 〇 | ||
バヌアツ | 〇 | ◯ | 〇 | ◎ | 〇 | 〇 | 〇 | |||
仏領ニューカレドニア | ◯ | ◯ | 〇 | |||||||
ポリネシア | サモア | 〇 | ◯ | 〇 | ◎ | 〇 | 〇 | 〇 | ||
トンガ | 〇 | ◯ | 〇 | ◎ | 〇 | 〇 | 〇 | |||
クック諸島 | 2023/9 | ◯ | 〇 | 〇 | 〇 | |||||
ツバル | 〇 | 〇 | ◯ | 〇 | 〇 | |||||
ニウエ | 2023/9 | ◯ | 〇 | 〇 | 〇 | |||||
仏領ポリネシア | ◯ | ◯ | 〇 | |||||||
ミクロネシア | ミクロネシア | 〇 | ◯ | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ||
キリバス | 〇 | 2019/9 断絶 |
→ ◯ | 〇 | ◎ | 〇 | 〇 | |||
マーシャル | 〇 | 〇 | ◯ | 〇 | 〇 | 〇 | ||||
パラオ | 〇 | 〇 | ◯ | 〇 | 〇 | 〇 | ||||
ナウル | 〇 | 〇 | ◯ | 〇 | 〇 | |||||
東南アジア | 東チモール | ◯ | ◯ | ◎ | ||||||
豪州 | 〇 | ◯ | 〇 | |||||||
NZ | 〇 | ◯ | 〇 | |||||||
米国 | 〇 | 〇 | 〇 |
*自由連合盟約: 国家としての独立を承認し、且つ経済援助を与える代わりに安全保障(主として軍事権と外交権)に関してはアメリカが統轄するというもの
期間:マーシャル諸島およびミクロネシア連邦は15年間、パラオは50年間(ただし経済援助は15年間)
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