9月9日及び10日にG20議長国インドの主催により、ニューデリーにおいてG20サミットが開催され、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子兼首相はインドのナレンドラ・モディ首相の招待に応じ、出席した。
米国、インド、中東、欧州連合の指導者らは9月9日、G20サミットに合わせ、欧州・中東・南アジアを結ぶ多国間鉄道・港湾構想を発表した。
「インド・中東・欧州経済回廊(IMEC:India-Middle East-Europe Economic Corridor)」に関する覚書は、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、インド、フランス、ドイツ、イタリア、米国、EUによって署名された。
米国は世界的なインフラ整備で中国主導の巨大経済圏構想「一帯一路」に対抗しようとしている。
バイデン米大統領は今回の覚書について、2つの大陸の港を結ぶ「真のビッグディール」であり、「より安定・繁栄し、統合された中東」につながると述べた。
米当局者によると、この構想は中東諸国を鉄道で結び、港でインドと接続させることで輸送時間やコスト、燃料の使用量を削減し、湾岸諸国から欧州へのエネルギー・貿易の流れを後押しすることが狙い。
覚書によるとIMECはインドとアラビア湾を結ぶ東側回廊と、アラビア湾と欧州を結ぶ北側回廊の2回廊で構成されることが想定されている。
これにより、インド、湾岸諸国、欧州間の商品やサービスの輸送が可能になる。メンバーはまた、鉄道ルートに沿って、電力やデジタル接続のためのケーブル敷設や、クリーン水素の輸出用パイプラインの敷設を計画している。
米国にとってIMECは、バイデン大統領が2022年のG7サミットで初めて発表した「グローバルインフラ投資パートナーシップ(the Partnership for Global Infrastructure Investment (PGII) 」イニシアチブの基盤となる。
2022年6月のG7ドイツ・エルマウ・サミットで立ち上げた。同サミットの際、今後5年間で、質の高いインフラに特に焦点を当てた公的及び民間投資において最大6,000億ドルを共同で動員することを目指す旨表明した。
広島で開催された今年のG7サミットでバイデン大統領は、中低所得国における質の高いインフラ整備支援に対する世界的な需要によりよく応えるため、同イニシアチブを拡大する新たな機会を特定することを約束するよう、同組織の首脳陣を説得した。
それ以来、米国は複数の国やセクターにまたがるインフラ投資を促進することを目的に、いくつかの経済回廊を構築するための構想を発表してきた。
今回、サウジ皇太子はグローバルインフラ投資パートナーシップを称賛し、そのプロジェクトにサウジアラビアが200億ドルを拠出することを発表、同時にIMECとの統合の必要性を示唆した。
ニューデリーでの約束を確実に履行するため、参加メンバーは今後2カ月間にわたり会合を開き、関連するタイムテーブルを含む行動計画を策定し、これにコミットする意向である。
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Financial Timesによると、トルコは周辺の友好国との間で、「インド・中東・欧州経済回廊」の代替策について集中協議を実施している。トルコはアジアから欧州への物流で担ってきた歴史的な役割を一段と高めることを狙っている。
トルコ政府は、インドからアラブ首長国連邦(UAE)、サウジアラビア、ヨルダン、イスラエルを通って欧州市場へと輸送するG20の経済回廊に抵抗している。 中国の影響力拡大を阻止しようとするものだが、G20案はトルコを完全に迂回するとみられている。
トルコのエルドアン大統領はG20サミット後に「トルコ抜きの経済回廊はありえない」と述べたうえで「東から西への貿易で、最適なルートは必ずトルコを通らなければならない」と付け加えた。
トルコは東西を結ぶ架け橋としての歴史的な役割を強調することに熱心で、トルコ政府は代わりに「イラク開発道路」と呼ばれる構想を推している。
「開発ルート」として知られるプロジェクトが完成すると、トルコとの北国境から南の湾岸まで1,200キロメートルに及ぶ国土に広がることになる。
170億ドル(約2兆5000億円)規模のルート案は石油資源が豊富な同国南部のグランド・フォア港から10県を経てトルコに通じる。計画は1200キロメートルに及ぶ高速鉄道と並行した道路のネットワークを想定している。3段階のスキームとなっており、第1段階は2028年、第3段階は50年の完成を目指している。
イラクのスダニ首相は、イラン、ヨルダン、クウェート、オマーン、カタール、サウジアラビア、シリア、トルコ、アラブ首長国連邦の運輸省代表との会議の中でこのプロジェクトを発表した。
イラクやカタール、UAEとの間で「今後数カ月内」に構築する方針の同構想について「集中協議」が進行中だという。
アナリストは、イラク開発道路について財政や安全の観点で実現可能性に懸念があると指摘している。
しかし、ペルシャ湾岸北西部にあるイラクの「Grand Al-Faw港」の建設はすでに着々と進んでいる。 イラク運輸大臣によると、170億米ドルのプロジェクトはほぼ3分の2が完了したという。 第1 段階の完成予定日は 2025 年に設定されており、初期能力年間 350 万Teu の 5 バースのコンテナターミナルが含まれている。 韓国の大宇が第1期工事を進めている。
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