中国通信機器大手の華為技術(Huawei)は現地時間の8月29日午後0時8分、事前の予告なくオンラインストアで新型スマートフォン「Mate 60 Pro」の販売を開始した。価格は6999元(約14万円)で、初回販売分は午後1時5分までに完売した。
華為技術は9月8日、中国本土で新たに上位モデル「Mate 60 Pro+」を売り出した。Mate 60 Proに比べてメモリーを増やしたもので、10月9日までの納品を予定している。Pro+には1テラバイトの最大ストレージオプションが加えられ、メモリーはMate 60 Proよりも4ギガバイト増えている。
Mate 60 Proは衛星通話ができる世界初の消費者向けスマホで、地上のネットワークが利用できない場合でも、衛星通話の発着信が可能となる。また、同社の大規模言語モデル「盤古(Pangu)」を導入し、よりスマートなインタラクション・サービスを提供するという。
新たに発表となった「Mate 60 Pro+」は、120Hzリフレッシュレートに対応した1.5K解像度のOLEDディスプレイと、ディスプレイ上部に3D顔認識用の3D深度カメラが搭載されたフロントカメラを備え、リアカメラはOIS(光学式手振れ補正)に対応した48MPカメラを採用している。
「Mate 60 5G」シリーズには中国国内の半導体企業SMIC(中芯国際集成電路製造)により製造・設計された回路線幅7nmの先端製品「麒麟(Kirin) 9000s」が搭載されており、米国制裁により数年もの間「非対応」となっていたファーウェイスマホの「5G対応」を克服し、衛星通信サービスにも対応する形となった。
米国は、中国に対して14nm以下の最先端プロセス技術を採用した半導体の輸出を規制している。競合するTSMCに大きく引けを取る7nmではあるが、完全国内生産というインパクトに注目が集まる。
旧モデルとなる『Kirin 9000』は、元々TSMCが製造を行っていたが、アメリカの追加制裁が発動したことで、TSMCはHuaweiからの新規受注を停止した。
厳しい半導体技術の輸出規制が行われているにもかかわらず、中国が独自の7nmプロセスチップを開発したことは大きな衝撃を与えた。Bloombergは、「中国の最先端技術へのアクセスを阻止しようとするアメリカ主導の世界的キャンペーンの有効性に疑問を投げかけるもの」と指摘している。Appleの最新のiPhoneに採用されている4nmのチップと比べると見劣りするものの、7nmチップは2018年のiPhoneのチップに相当する速さであり、中国の技術が台湾TSMCのすぐそこにまで迫っていることが明らかになった 。
また同機は最新のiPhoneなどの5Gデバイスに相当するほどの通信速度に達している。
新たにTechInsightsの分析から、Mate 60 Proには韓国のSKハイニックス製のモバイル用DRAM「LPDDR5」と176層4D NANDフラッシュストレージが搭載れていることが判明した。Mate 60 Proに搭載されている部品のほとんどは中国のサプライヤーによって提供されており、SKハイニックスの部品は例外的だとしている。
SKハイニックスは声明で、「SKハイニックスはアメリカによるHuaweiへの規制導入以降、Huaweiとの取引を停止しており、この問題について詳細を知るために調査を開始した。また、SKハイニックスはアメリカ政府の輸出規制を厳守している」と述べ、事態の解明に乗り出したことを明かした。
SKハイニックス製の部品は幅広いベンダーによって取引されているため、Huaweiが入手するのはそれほど難しいことではないと述べている。中国のエレクトロニクス産業は非常に大きいため、意図しない最終顧客にこの種の部品が流出するのは珍しいことではなく、このようなことを防ぐのは非常に困難とされる。
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米商務省は2019年5月15日、安全保障上の懸念があるとして輸出を規制する外国企業のリスト(Entity List ) に華為技術(Huawei)を追加した 。米国製ハイテク部品などの事実上の禁輸措置である。
2019/5/16 米国、Huawei を対象に2施策
米商務省は2019年8月19日、華為技術(Huawei)への米国製品の禁輸措置を強化すると発表した。今回、制裁回避を防ぐため世界各国の子会社を含む関連会社46社を追加した。これらの企業への米国製品の輸出は商務省の許可が必要で、今後も企業の申請は原則却下される。
2019/8/21 米、Huawei 禁輸強化
米商務省の産業安全保障局 (Bureau of Industry and Security ) は2020年5月15日、Entity Listによる華為技術(Huawei)に対する輸出禁止措置を強化すると発表した。
米国に由来する技術を使った半導体は、外国製でも同社への輸出ができなくなる。Huaweiはもちろん、Huawei傘下の半導体メーカーHiSilicon向けに半導体を供給する台湾の台湾積体電路製造(TSMC.)にも影響を与える。これを受け、台湾積体電路製造(TSMC)はHuaweiからの新規受注を止めた。
2020/5/18 米商務省、Huawei向け輸出規制を強化
米国の規制によりチップの調達が困難になったことなどが原因で、Huaweiの売上高に占める消費者事業の割合は減り続けた。
米調査会社IDCのデータによると、2023年1~3月期に世界で出荷されたスマフォは、前年同期比約15%減の約2億7000万台だった。
Huaweiはかつては世界出荷トップを競っていたが、675万台で、市場シェアは2.5%だった。在庫のチップを使用した5Gモデルを限定的に販売することしかできなくなった。
今回の「Mate 60 Pro」発売で、米政府は「Mate 60 Pro」について、詳しく調査する方針を示した。ホワイトハウスの5日の記者会見で大統領補佐官(国家安全保障担当)は、半導体に対する米国の輸出規制をかわして新型チップが製造されたのかどうか判断するために、「特徴と構成に関する正確な情報」が必要だと述べた。
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中国政府は逆に西側諸国の企業による市場アクセスを制限しようとする動きうを始めた模様。
ウォール・ストリート・ジャーナルは9月6日、中国当局が政府職員によるiPhoneの使用を制限していると報じた。
中国はここ数週間、政府職員によるiPhone規制を拡大し、一部の中央政府機関の職員に対し、公務でのiPhone使用を禁じた。
中国当局は米Appleのスマートフォン「iPhone」を巡り、機微な内容を扱う部門を対象としている使用禁止を拡大し、政府系機関や国有企業にも適用することを計画している。一部の政府機関はiPhoneを職場に持ち込まないよう職員に指示し始めた。中国当局はこの制限についてさらに踏み込み、多くの国有企業や他の政府系組織にも対象を広げる意向だと関係者は述べた。
Appleにとって売上高の約5分の1を占める中国市場で、同社の立場が脅かされる恐れがある。また、世界で販売されるiPhoneの多くは中国各地に広がる工場で製造されている。 鄭州市にある巨大工場はアイフォーンの世界生産台数の半分を手がけているとされる。
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