北海道の新興企業、究極の半導体:ダイヤモンド半導体の実用化へ

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札幌市の大熊ダイヤモンドデバイスは、「究極の半導体」と呼ばれるダイヤモンド半導体の実用化を目指し、2026年度末にも福島県大熊町で工場を稼働する。総事業費は約50億円で、年間数万個の半導体デバイスを製造できる規模にする。

東電HDとIHIが2022年に設立した東双みらいテクノロジー(福島県大熊町)へ半導体基板に人工ダイヤモンドを使ったダイヤモンド半導体デバイスを納品する予定で、東双みらいテクノロジーは福島第1原発のデブリ(溶融燃料)取り出しに向けた設備の基本設計や研究開発を担っている。

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ダイヤモンド半導体はシリコン・SiC・GaNに代わる「究極の半導体」と言われ、1980年代に日本が世界に先駆けてガスからの人工ダイヤモンド合成に成功し、以降30年以上に渡って世界中で研究開発がされている。

ダイヤモンド半導体は、これまで多く使われてきたどの材質よりも大きな電力を無駄なくつかえるようになる性質を持っている。



既存半導体デバイスは自己発熱で 性能が劣化するため大型冷却装置が必須であるが、ダイヤモンド半導体では除熱不要により小型化軽量化が可能となる。

また高出力高周波素子としてのポテンシャルも持っている。

 1. 高温(300℃)、放射線(3MGy)環境下での動作

 2. 反転、非反転増幅した出力を同時確認

 3. 信号を4.5倍に増幅

原子炉過酷事故や廃炉作業、基地局用途における自己発熱のような高温環境下・放射線環境下での動作(耐過酷環境)や、データ通信量爆発・高速化(Beyond 5G)に対応するアナログデバイスの製造に必要不可欠である。

大熊ダイヤモンドデバイスは、福島第一原発廃炉プロジェクトへ適応する要素技術をきっかけとして、世界初となるダイヤモンド半導体の社会実装を目指す、北海道大学および産業技術総合研究所を基とする2022年3月創業のスタートアップ。

東日本大震災による福島第一原発での事故の後、高温かつ高放射線環境下に耐えうるダイヤモンド半導体へのニーズが急速に高まり、北海道大学の金子純一准教授を筆頭に北海道大学、産総研、物材機構、高エネルギー加速器研究機構など国内の研究機関が一丸となって研究開発に取り組んできた。金子氏は日本原子力研究開発機構の廃炉国際共同研究センター客員研究員も務める。

10年超に及ぶ研究を経て、世界で初めてダイヤモンド半導体が実用的な増幅器として動作するレベルに達したため、2022年3月1日に同社が創業した。(金子氏が取締役で技術指導)

2021年12月に世界初の実用型ダイヤモンド半導体プロトタイプ完成

同社が作るダイヤモンド半導体は、「演算」や「記憶」を行うマイコン・メモリではなく、電源(電力)の制御・供給を行うパワー半導体。その中の、電気信号を増幅するトランジスタに該当。

50以上の製造工程の歩留まりを高め、半導体素子の量産化にめどを付けた。

ダイヤモンド半導体を使った部品での研究では、最大温度セ氏450度でも作動し、高い放射線濃度の環境下でも正常に機能したという。

事業内容は下記の通り。

廃炉対応/耐放デバイス事業 原子力発電所や宇宙等、極限環境下における放射線測定・中性子検出 ・過酷事故対応計測/前置増幅器/マルチプレクサ/伝送器 他
衛星通信・レーダー事業 衛星通信機器・レーダー産業向け、ダイヤモンド半導体の製造・販売 ・衛星通信(地球局・衛星)/航空管制/船舶監視/気象観測/防衛 他
通信機器事業
(Beyond 5G)
Beyond 5Gを見据えた、基地局向けダイヤモンド半導体の製造・販売
 ・携帯電話基地局
 ・携帯電話基地局間通信

工場稼働までの総事業費は約50億円と見込む。国の「自立・帰還支援雇用創出企業立地補助金」などを活用する方針。

ベンチャーキャピタルから2023年5月に総額1.4億円の資金調達を実施した。

研究開発でも、福島県の復興につながる技術開発などを対象に上限7億円の補助事業にも採択された。ほかに内閣府からも年1億〜3億円、最長3年間の交付を受ける。


次世代パワー半導体材料の1つ、ガリウムの2022年の世界生産量は550トンで、うち中国が98%を占めるが、中国商務部と税関総署は2023年7月3日、ガリウムや関連製品を輸出規制の対象にすると発表した。

2023/7/6 中国が半導体材料ガリウムなど輸出規制

一方、ダイヤモンド半導体に使用する人工ダイヤモンドはメタンガスから生成しており、大熊ダイヤモンドも現在はこの方法を採用している。将来的には二酸化炭素(CO2)と水素から合成したメタンで製造することも可能だという。

原発廃炉を機に同社はダイヤモンド半導体の量産化を狙う。衛星通信への応用も目指し、三菱電機などとも研究を始めた。年内にも国内メーカーとEV向けのデバイス開発も進めていく。

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