2024年問題 

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トラックやバスの運転手、建設作業員の「2024年問題」が話題になっている。このほかに医師についても「2024年問題」がある。

これらの業務に従事する人の時間外労働の規制が2024年4月1日から始まり、その結果、これまで残業で処理していた仕事ができなくなる。

総務省の調査では、トラックドライバーの拘束時間が3300時間を超える会社の割合は21.7%となっている。今後は上限が3040時間(法定時間 2080 + 残業 960) となり、追加雇用が必要だが、簡単ではない。

建設業界も、少子高齢化による若手労働者不足、長時間労働による労働者の定着率悪化などにより、深刻な人手不足に悩む。当面、建設の遅れ、建設費アップは必至である。

医師については、日本全体での医師の数は少なくないが、医師免許があれば好きな場所に開業でき、診療科も原則自由なため、これが偏りを生む主因になっている。地域医療の縮小を懸念する声が上がっており、非常勤医師の応援で成り立つ産科有床診療所の中には、分娩の取り扱い中止を検討する所も出ているという。

これらの業界は時間外労働の規制の施行を5年間延長したが、その間、ほとんど対策が取られていない。

政府も規制施行を延長した時点で、5年後には実施できるよう対策を講じ、業界を指導し、その後は毎年チェックして進展がなければ対策を取るべきであったが、何もしていない。

政府は10月6日、物流業界の人手不足が懸念される「2024年問題」に関する関係閣僚会議を開き、緊急対策をまとめた。

通販の配送時に置き配や、ゆとりをもった配送日時を指定した消費者にポイントを付与する実証事業に取り組み、運送業者の負担となる再配達を減らす。

鉄道や船舶の輸送量を今後10年で倍増する。輸送手段を鉄道やフェリーなどに転換、トレーラーなどを運べるフェリーやRORO船貨物を積んだトラックやシャーシごと輸送する船舶を活用する。

荷役作業や輸送の効率化につながる機器やシステムの導入を促す。高速道路で自動運転トラックが走行できるよう環境を整える。

一定以上の物流量を扱う荷主企業には新設する「物流経営責任者」を選任するよう義務づける。

いくつもの下請け企業が物流を担う構造を改善するため、書面で契約することなどを求める。

このほか、次の対策をドロナワ式に打ち出した。

個人タクシーのドライバーの上限年齢について、開業は「65歳未満」、更新は「75歳未満」とされているが、地方でのタクシー不足解消のために、過疎地等に限って80歳まで引き上げる。高齢者の免許自主返納の動きに反する。

外国人労働者の在留資格である「特定技能」の対象に、2023年度中にトラック、タクシー、バスの運転手といった自動車運送業を対象に追加することを目指している。

2025年大阪・関西万博を運営する日本国際博覧会協会が、2024年4月に建設業界に適用される時間外労働の上限規制を万博関連の工事には適用しないよう政府に打診していたと報道された。 建設は遅れており、間に合わない可能性もあるが、規制は5年前からわかっていたことであり、それに合わせた対策を取るべきであった。 想定外の災害への対応ではなく、例外措置はとるべきでない。これを認めれば、自動車運転や医師にもということになってしまう。

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「働き方改革関連法」(「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」)が2019年4月1日に施行された。

内容は、

時間外労働の上限規制 (2019/4/1施行、中小企業は2020/4/1施行)

建設事業/自動車運転業務/医師については、長時間労働の背景に業務の特殊性や取引慣行の課題があることから、時間外労働の上限について適用が5年間猶予され(2024/4/1施行)、また、一部特例つきで適用される。

②年次有給休暇の取得義務化(2019/4/1施行)

③雇用形態に関わらない公正な待遇の確保 (2020/4/1施行、中小企業は2021/4/1施行)

時間外労働の上限規制は下記の通り。

従来は行政指導のみで、法律上は規制なし。「働き方改革関連法」で残業時間の上限を規制する。

 
(法定労働時間は1日8時間、週40時間)

従来の行政指導

「働き方改革関連法」 (医師は下記)

一般 (2019/4/1 中小企業は 2020/4/1)

建設事業 (2024/4/1)

自動車運転業務 (2024/4/1)
月45時間、
年360時間
原則:月45時間、年360時間

臨時的な特別の事情があり、労使が合意する場合
1) 年720時間以内
2) 複数月平均80時間以内(休日労働を含む)
3) 月100時間未満(休日労働を含む)
4) 月45時間を超えることができるのは年間6か月まで

下記以外:一般の上限規制

災害時の復旧・復興事業の場合

1) 年720時間以内 
2) 適用なし
3) 適用なし
4) 月45時間を超えることができるのは、年間6か月まで





1) 年960時間
2) 適用なし
3) 適用なし
4) 適用なし


医師のケース

A水準:診療に従事するすべての医師対象(他の水準に当てはまらない医療機関が全て該当)

B水準:地域医療暫定特例水準(救急医療機関や救急車の受け入れが年間1,000台以上の医療機関などが該当)

C水準:集中的技能向上水準(研修などを行う医療機関)

  

  • 時間外労働と休日労働の合計について、月100時間未満、2~6ヶ月平均80時間以内とする規制が適用されない。
  • 時間外労働が月45時間を超えることができるのは年6ヶ月までとする規制は適用されない。
  • 医療法等に追加的健康確保措置に関する定めがある。

36協定とは、労働基準法第36条により、会社が法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超える時間外労働及び休日勤務などを命じる場合、労働組合や労働者の過半数代表者などと書面による協定を結び、労働基準監督署に届け出ることが義務付けられた「時間外・休日労働に関する協定届」のこと。

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