オランダの半導体製造装置大手ASMLは9月28日、北海道に技術支援拠点を新設する方針を明らかにした。
ラピダスが2025年に予定する千歳市の「千歳美々ワールド」の工場の試作ラインの稼働前に新工場周辺に拠点を設ける。
2024年中に40~50人の技術者を配置する計画で、EUV露光装置の設置のほか、生産支援や保守・点検業務などを担う。
ASMLは、半導体基板に電子回路を焼き付ける露光装置の世界シェア首位で、回路線幅が微細な先端半導体の生産に不可欠な「極端紫外線(EUV)露光装置」を製造できる世界唯一の企業 。ラピダスは、まだ技術が確立されていない回路線幅 2ナノの最先端半導体を2027年に量産する計画を掲げている。実現にはASMLのEUV露光装置が不可欠となる。
ASMLは世界各国で主要な半導体工場の周辺に技術支援拠点を設けており、台湾積体電路製造(TSMC)が熊本県に建設中の工場周辺にも設置している。( TSMCは熊本では2ナノは生産せず、EUVは使用しない。)
「極端紫外線(EUV)露光装置」の導入には高圧ガス保安法の改正が必要である。
EUV露光装置は、PPL(Plasma-Produced Laser)方式の光源を採用
真空内を時速320km前後で移動する100万分の30mの大きさのスズの小滴を射出、レーザーを2回照射、1回目で高温にし、2回目で小滴を破壊、50万度のプラズマを発生させる。
スズを破壊させるプロセスを1秒当たり5万回繰り返すことで、半導体製造に必要な量のEUVが得られる。強力な炭酸ガスレーザーが必要。
炭酸ガスレーザーの生み出すエネルギーの8割は熱で、この除去が必要。 磁石でファンを浮上させ、熱を吸い出す。この高圧状態のスズとその容器(タンク)が高圧ガス保安法の適用対象である。
高圧装置は、完成時の検査のほか、高圧ガス保安法に基づく年1回の保安検査が義務付けられている。このため、24時間365日稼働し続ける半導体製造装置を何日か停止させねばならず、超高額装置の稼働率の低下をきたすことになる。
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ラピダスは新千歳空港のすぐ東部にある「千歳美々ワールド」の一画で 工場を建設している。
約 65ヘクタールの敷地を確保し、敷地内に工場と研究施設を併設する。今後増築となった場合も、周辺の土地を約35ヘクタール取得可能で、最終的な敷地面積は100ヘクタールを想定しており、国内最大規模の半導体生産工場となる。
ラピダスは千歳美々ワールドの第2期A、Bブロックを確保した。
第1期Dブロックでは、セイコーエプソンが高温ポリシリコンのTFT液晶パネルを生産している。
現在はIIM-1の建設準備中。
同社はプラント(ファブ)をIIM (Innovation Integration for Manufacturing)と呼んでおり、ここには2ナノを手掛ける「IIM-1」と、Beyond 2ナノを目指す「IIM-2」を設ける。
なお、2027年の本格稼働後に洗浄用の水として1日数万立方メートル必要で課題となっていたが、北海道は9月28日、道企業局の苫小牧地区工業用水道を活用し、安平川から取水する方針を固めた。 豊富な供給量に加え、水利権の調整が必要ないことが決め手となった。
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