議会下院では多数派を占める共和党の内部対立で、予算案の成立が見通せて おらず、政府閉鎖となれば、トランプ前政権だった2018年12月~2019年1月以来となる。
2023/9/29 米政府機関閉鎖の可能性 強まる
米議会下院は9月29日、野党・共和党による独自のつなぎ予算案を反対多数で否決した。
10月1日から1カ月の連邦予算を賄うもので、下院で多数派を握る共和党トップのマッカーシー議長が支持した案。共和党内の保守強硬派に配慮し、大幅な歳出削減や国境警備強化を盛り込む一方で、ウクライナ支援は外した。
それでも「身内」である共和党の保守強硬派から造反が相次いだ。
共和党 民主党 合計 欠員 賛成 198 198 反対 21 211 232 棄権 2 1 3 合計
221 212 433 2
しかし、翌9月30日に下院は11月半ばごろまでの45日分の予算を確保する「つなぎ予算案」を賛成多数で可決し、与党・民主党が多数派の議会上院に送られた。
今回の案には民主党が求め、保守強硬派が反対していたウクライナ支援の予算60億ドルが盛り込まれていないが、これまで共和党が主張していた支出の削減が修正され、バイデン政権が求めていたものと同程度の予算額となったことなどから民主党の賛成をとりつけたものとみられている。ホワイトハウスが求めた緊急災害援助160億ドルが認められた。
投票は賛成335、反対91で、超党派での可決となった。賛成票の多くは民主党票で、つなぎ予算案を主導した共和党のマッカーシー下院議長が共和党内の反対を押し切った形となった。
共和党 民主党 合計 欠員 賛成 126 209 335 反対 90 1 91 棄権 5 2 7 合計
221 212 433 2
米上院は同日、10月1日午前0時の期限を数時間後に控え、下院が通した11月17日までのつなぎ予算案を可決した。政府機関閉鎖を土壇場で回避した。
共和党 民主党 民主系
無所属無所属 合計 欠員 賛成 39 46 2 1 88 反対 9 9 棄権 1 1 2 合計 49 47 2 1 99 1 無所属は元民主党員
民主党 Dianne Feinstein(90歳)が9月29日逝去、後任は今後、カリフォルニア州知事が指名する。
バイデン大統領は同日、つなぎ予算案に署名した。大統領は声明で、「今夜、上下両院の超党派の多数決によって政府機能を維持し、何百万人もの勤勉な米国民に無用な苦痛を与えることになる不必要な危機を防ぐことができた」と評価した。
つなぎ予算案にはウクライナへの新たな支援は含まれていないが、民主・共和両党は、より長期的な連邦政府予算について交渉する時間を確保した。
9月29日に下院が共和党マッカシー議長が支持した案を共和党の強硬派の反対で否決した時点で政府機関の閉鎖は必至と見られたが、一気に逆転した。
起点は下院の野党・共和党を率いるマッカーシー議長の「変心」だった。
裏切られた形の強硬派が議長罷免を求める可能性があるが、罷免実現には民主を含めた下院議員の過半数の同意が必要となる。仮に民主の一部が投票で欠席すれば罷免は失敗する。
但し、マッカシー議長の下院運営は更に難しくなると思われる。
付記
解任に民主党議員全員が賛成した場合、共和党から5人の造反者が出れば、動議が可決される可能性があるが、民主党全員が解任に賛成するとは思えない。
マッカーシー氏は記者団に「これは国家に混乱をもたらすと思う。私は自分の仕事をこなすことに専念するだけだ」と述べた。
今年1月にマッカーシー氏を下院議長に選出するための採決でもゲーツ氏は何度も反対票を投じ、マッカーシー氏が反対派の説得のため、多くの妥協をした。その一つとして、議長解任動議の提出条件は会派の半数の賛成であるが、McCarthy 議員は最終的に1人で動議を出せることを認めた。これが今回のゲーツ氏の動きにつながっている。
米国の議会史上、これまでに下院議長が解任された例はない。
付記
議会下院は10月3日、共和党のマッカーシー下院議長の解任動議を可決した。下院議長の解任動議の可決は歴史上初めて。
共和党 民主党 合計 欠員 賛成 8 208 216 反対 210 210 棄権 3 4 7 合計
221 212 433 2
共和党での賛成者は以下の8人
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- Andy Biggs of Arizona
- Ken Buck of Colorado
- Tim Burchett of Tennessee
- Eli Crane of Arizona
- Matt Gaetz of Florida
- Bob Good of Virginia
- Nancy Mace of South Carolina
- Matt Rosendale of Montana
民主党にとって議長は共和党ではあるが、共和党強硬派の反対を押し切って「つなぎ予算」を通してくれた恩人でもある。解任に全員が賛成するとは、どういうことだろうか。
今後、本予算を通す必要があるが、強硬派を勢いづかせるだけであり、今後の運営が非常にむつかしくなるだろう。
当面、次期議長の選任が必要だが、難航必至で、予算編成や対ウクライナ支援の遅滞といった悪影響が懸念される。
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