パレスチナ問題に関する国連事務総長の演説

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パレスチナ自治区ガザ地区のイスラム組織ハマスとイスラエルの軍事衝突をめぐり、国連のアントニオ・グテーレス事務総長は10月24日、イスラエルによる空爆と封鎖が続くガザ地区で「国際人道法違反」が見られるとの認識を示した。


イスラエルのエルダン大使は、グテレス氏が演説でパレスチナ人の苦境に触れて「ハマスの攻撃は、何もないところから起きたわけではない」と述べたことを問題視した。ハマスのテロを「容認」する発言だと主張し、グテレス氏に辞任を要求。イスラエルは発言への対抗措置として国連当局者へのビザ発給を停止するという。

これに対し事務総長は記者団に読み上げた声明で、イスラエルの名指しは避けつつ「私の発言について、まるでハマスのテロ行為を正当化しているかのような誤解があり、ショックを受けている」と言及。イスラエル側から糾弾された自身の演説は、ハマスを名指ししてテロ行為を非難したと強調し、「パレスチナの人々の不満は、ハマスによる恐ろしい攻撃を正当化することはできない」との演説の一部を再度読み上げた。

Guterres 国連事務総長はポルトガルの政治家。第114代ポルトガル首相、欧州理事会議長、第10代国際連合難民高等弁務官を歴任した後、2017年から第9代国際連合事務総長。

中東に関する国連安全保障理事会の公開討論でのAntonio Guterres 国連事務総長の声明は下記の通りだが、ハマスのテロを「容認」しておらず、非難すべき点は全く無い。

ハマスによる攻撃の背景に「パレスチナの人々は56年間の窒息的な占拠に晒されてきた」ことがあるとしつつ、
「パレスチナの人々の不満は、ハマスによる恐ろしい攻撃を正当化するものではない」としており、
市民を故意に殺害、傷害、誘拐すること、または市民を標的にしたロケットの発射を正当化するものは何もない」としている。
「ハマスによる2023年10月7日の恐ろしいかつ前例のないテロ行為を断固として非難した」と述べた。

イスラエルに対しては、「(ハマスの)それらの恐ろしい攻撃は、パレスチナの人々への集団的な処罰を正当化するものではありません」ともしており、
「イスラエル軍によるガザへの執拗な爆撃、市民の犠牲者数、地域の壊滅的な破壊は増え続けており」、「ガザで目撃している国際人道法の明白な違反に深刻な懸念を抱いている」としている。


イスラエルの不満は、「パレスチナの人々は56年間の窒息的な占拠に晒されてきた」と事実を指摘され、これが遠因であるとされたことにある。これまでに多数の非難決議が出されたが、米国の拒否権ですべて否決された。

2011年2月18日には、パレスチナ地域におけるイスラエル人入植地が違法であることを再確認し、東エルサレムを含む同地域でイスラエルがすべての入植活動を停止するよう要求する安保理決議(120を超える国々が共同提案国となった)に、14の理事国が賛成したが、米国のライス国連大使は、「続行中のイスラエルの入植活動の合法性については強く否定する」と述べながら、拒否権を行使した。



(ChatGPTの翻訳)

中東の状況は刻一刻と悪化しています。ガザ地区での戦争は激しさを増し、地域全体に波及の危険があります。分裂が社会を分断しています。緊張が爆発の危機をもたらしています。

このような重要な瞬間に、原則を明確にすることは不可欠です。それは、市民を尊重し保護するという基本原則から始まります。私は、ハマスによる2023年10月7日のイスラエルでの恐ろしいかつ前例のないテロ行為を断固として非難しました。

市民を故意に殺害、傷害、誘拐すること、または市民を標的にしたロケットの発射を正当化するものは何もありません。すべての人質は人道的に扱われ、条件なしに即座に解放されるべきです。私は、その家族のメンバーが私たちの中にいることに敬意を表します。

ハマスによる攻撃は無理に起こったものではないことも認識することが重要です。パレスチナの人々は56年間の窒息的な占拠に晒されてきました。彼らは自分たちの土地が入植地によって徐々に食い尽くされ、暴力に悩まされ、経済が窒息し、人々が避難させられ、家が破壊されてきました。彼らの窮状に対する政治的解決の希望は消えつつあります。

しかし、パレスチナの人々の不満は、ハマスによる恐ろしい攻撃を正当化するものではありません。そして、それらの恐ろしい攻撃は、パレスチナの人々への集団的な処罰を正当化するものではありません。

戦争にも規則があります。すべての関係者に国際人道法に従うよう要求し、軍事作戦の実施において市民を保護し、病院を尊重し、現在60万人以上のパレスチナ人が避難している国連施設の侵害を尊重する必要があります。

イスラエル軍によるガザへの執拗な爆撃、市民の犠牲者数、地域の壊滅的な破壊は増え続け、深刻な懸念です。

私は、ガザでの爆撃で亡くなったUNRWA(国際連合パレスチナ難民救済事業団)のUN職員、少なくとも35人以上が数えられるということを悼み、尊敬します。その他多くの類似の殺人行為に対して、私は彼らの家族に対して非難を表明します。

市民の保護は武力紛争において最優先です。市民を保護することは、彼らを人間の盾として使用することを意味してはいけません。市民を保護することは、100万人以上の人々に対して南部に避難するよう命じ、そこには避難所、食べ物、水、薬物、燃料がなく、その後も南部自体を爆撃し続けることを意味しません。

私たちはガザで目撃している国際人道法の明白な違反に深刻な懸念を抱いています。はっきり言いますが、武力紛争のいかなる関係者も国際人道法の上に立つことはありません。

幸いなことに、ガザには遂に人道的支援が届きつつあります。しかし、UNのガザでの燃料供給は数日で切れてしまうでしょう。それは別の災害です。燃料がなければ、援助物資を届けることができず、病院には電力が供給されず、飲料水を浄化または供給することもできません。

ガザの人々は、巨大な必要に対応する程度の連続的な支援物資が必要です。その支援は制約なしに提供されなければなりません。ガザで危険な状況下で働き、命を危険に晒すUNの同僚や人道団体に敬意を表します。彼らはインスピレーションです。

壮絶な苦しみを和らげ、支援物資の提供を容易かつ安全にし、人質の解放を促進するために、私は即時の人道的停戦を再度訴えます。

この重大で直ちに危険な瞬間にさえ、真の平和と安定の唯一の現実的な基盤を見失ってはなりません:二国家解決。イスラエル人は安全保障の正当な必要性が具体化し、パレスチナ人は国連決議、国際法、過去の合意に従った独立国家の正当な志向が実現することを見なければなりません。

最後に、人間の尊厳を尊重する原則を明確にしなければなりません。偏向と非人間化は、ディスインフォメーションの津波によって助長されています。反ユダヤ主義、反イスラム主義、およびあらゆる形態の憎しみの勢力に立ち向かわなければなりません。

今日は国連の日であり、国連憲章が発効してから78年が経過しました。その憲章は平和、持続可能な発展、人権の推進への共有の約束を反映しています。この国連の日に、この重要な瞬間に、暴力がさらに多くの命を奪い、広がりをますます広げる前に、皆さんに崖から退くよう訴えます。

ーーー

国連安全保障理事会では、米国やロシアなど常任理事国が拒否権行使の応酬を繰り広げ、4度目の採決も決議成立に至らなかった。

決議採択には少なくとも9票の賛成と、常任理事国5カ国(米・英・仏・露・中)が拒否権を行使しないことが必要。

採決日 提案国 内容 賛成 反対 棄権
10/16 ロシア 人道危機を回避するための即時停戦を求める。
  ハマスが拘束する人質の解放、人道支援を可能にする、
  市民の安全な退避

米国反対:ハマスへの非難無し、テロリスト擁護
中、露、UAE
など5国
日、
米、英、仏
6カ国
10/18 ブラジル ガザ地区での人道危機回避のため戦闘中断を求める。
ハマスによる凶悪なテロ攻撃非難

米国反対:決議案はイスラエルの自衛権に言及していない。
12カ国 露・英
10/25 米国 すべての国の自衛権を確認
ガザ地区への人道支援を行うために「戦闘の一時的な停止」を含むあらゆる措置

露反対:停戦の呼びかけなし。ガザの民間人への恣意的な攻撃に対する非難なし。米の中東政策の強化狙い。

中国反対:"即時停戦"要求なし。「先週、米が拒否権を行使したことを誰もが覚えている」
10カ国 露、中、
UAE
2カ国
10/25 ロシア ガザ地区の封鎖を非難
人道目的での「即時停戦」
中、露、UAE
など4国
米、英 9カ国


付記

国連総会(193カ国)は10月27日、「人道的休戦」などを求めたヨルダン提出の決議案を採択に必要な投票全体(賛否のみ)の3分の2以上にあたる121カ国が賛成し、賛成多数で採択した。

休戦や人道回廊の設置に加え、イスラエルに「占領国」としてパレスチナ自治区ガザ北部の住民や国連職員などに対して出した避難命令の撤回を求める。

最初の草案では即時停戦を求めていたが、採決を前に「人道的な休戦を求める」と変更した。

ハマスによる攻撃を非難する内容が含まれていなかったことから、アメリカやイスラエルは反対、日本やイギリスなどは棄権した。

一方、その前に行われた、イスラエルを支持する米国の意向が反映されたカナダ提出の修正案は必要な賛成票数に届かなかった。

ヨルダン提出案にハマスの攻撃や人質の拘束を非難する文言を加える。

カナダの国連大使は、ハマスの責任を明記しないヨルダン案を採択すれば、総会が「世界最悪のテロ攻撃の一つ」から目をそらすことにつながると主張した。

パキスタンの国連大使は採決前、ハマスを名指ししたカナダ案について「片方だけを非難するのは公平ではない」と表明。「イスラエルによる(パレスチナの)占領が問題の原罪だ」と訴えると、議場から大きな拍手が起きた。  

投票全体(賛否のみ)の3分の2以上(66.7%以上)で採択される。安保理と異なり、常任理事国の拒否権がないが、総会決議は強制力がない。

賛成 反対 棄権 無投票 採択
カナダ案 ハマス明記 88 55 23 27 X  88 / (88+55)= 61.5%
ヨルダン案 ハマス明記なし 121 14 44 14 ◯ 121 / (121+14)=89.6%



付記

10月30日の安保理の緊急会合では、10月27日に国連総会で人道目的での休戦などを求める決議が採択されたことを受けて、各国からイスラエルに対し、ガザ地区の住民の保護を求める意見が相次いだ。

アメリカのグリーンフィールド国連大使は「イスラエルにはテロから自国を守る権利はあるが、国際人道法を順守しなければならない」と述べる一方、先の国連総会の決議については「ハマスの行動が非難されていないのは不合理だ」として、改めてイスラエルを擁護する姿勢を示した。

これに対してロシアのネベンジャ国連大使は、総会決議の翌日にイスラエル軍が地上作戦を拡大したと非難したうえで「アメリカはイスラエルによる大規模な報復を支持しているのか」と詰め寄りアメリカも非難した。

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