EUは10月20日、ウクライナに対し2024~27年に500億ユーロの支援を提供すると表明した。フォンデアライエン委員長は「世界のパートナーと民間部門と共に、EU加盟への道を歩むウクライナに予測可能な資金を提供していく」ことが目的だと述べた。
EU欧州委員会は2023年6月、2024~27年にウクライナに500億ユーロを支援することを提案した。
EUは10月20日、ブリュッセルで開催された首脳会議で「ウクライナとその国民に必要な限り、強力な財政・経済・人道・軍事・外交支援を提供し続ける」と明記する声明を採択した。
今回表明した支援のうち170億ユーロは無償で、残りは低金利融資として提供される。
しかし、全会一致が必要となる12月の詳細合意を前にハンガリーとスロバキアが難色を示し、EU内に亀裂が生じている。
ハンガリーはこれまでもウクライナ支援に懐疑的な姿勢を表明した。オルバン首相は、ウクライナに資金と軍事支援を提供するEUの戦略は失敗したとし、「ウクライナは戦場で勝てない」と述べた。 その上で、ウクライナに対する500億ユーロの新たな支援を含むEU予算の改定案を現在の形では支持しないと表明した。ただ、交渉の余地はあるとの姿勢も示した。
オルバン首相は中国の「一帯一路」の国際会議に出席し、10月17日にロシアのプーチン大統領と会談した。
プーチン氏は冒頭、戦時下で対話と関係強化のチャンスは非常に限られていると指摘、「立場が必ずしも一致しないのは承知しているが、意見交換の機会を持つことは非常に重要だ」と述べた。
スロバキアのフィツォ首相もオルバン氏に同調、ウクライナでは汚職が蔓延していると指摘し、EUの新たな支援に資金が不正利用されない保証を盛り込むよう求めたほか、ウクライナに対する軍事支援を停止すると表明した。
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既報の通り、ウクライナはウクライナの穀物輸出をめぐり、周辺のEU各国と争っている。
欧州委員会は9月15日、ポーランド、ブルガリア、ハンガリー、ルーマニア、スロバキアの東欧5カ国に認めていたウクライナ産穀物の輸入規制を、期限の15日以降、延長しないことを決めた。
ポーランド政府は9月12日、自国農業への打撃を防ぐために実施しているウクライナ産穀物の輸入規制を15日の期限後も継続する方針を発表した。
ポーランド政府に続き、ハンガリー政府も9月15日、ウクライナの農産物24品目について独自の輸入禁止措置を発表。
スロバキア政府もウクライナ産穀物の輸入禁止措置を発表した。
3カ国とも、ウクライナ産穀物の国内通過は引き続き、認める方針。
ウクライナは9月18日、ウクライナ産農産物の禁輸措置を巡りポーランド、ハンガリー、スロバキアの3カ国を世界貿易機関(WTO)に提訴した。
これに対し、ポーランドはウクライナへの武器供給の停止を宣言した。
9月30日のスロバキアの選挙ではウクライナへの軍事支援停止を主張する左派政党が第1党を確保した。
このため、ウクライナのカチカ通商代表は10月5日、3カ国に対するWTOでの訴訟手続きを中断すると述べた。穀物輸出を巡る緊張を緩和し、支援継続を図りたい考え。
一方、ルーマニア政府はウクライナの行動計画の発表を待ち対応を決めるとしていたが、10月13日にルーマニアの農民を保護する仕組みを採用、小麦、トウモロコシ、ひまわり、大豆の輸入のみを許可した。
ウクライナのゼレンシキー大統領は10月10日、まもなくウクライナの穀物をモルドバとルーマニアを経由して輸出する新しい「穀物回廊」が運用されると発表した。
ブルガリア議会は9月14日、輸入規制の撤廃を議決している。
2023/8/16 ウクライナ産穀物の輸出問題
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米国議会下院では、多数派を占める共和党の内部対立で議長が今月3日に史上初めて解任され、3週間以上にわたって法案の採決などができない状況が続いていた。
下院は10月25日に本会議を開き、投票を行った結果、トランプ前大統領に近いMike Johnson 議員が正式に議長に選出された。
バイデン政権はイスラエルとウクライナへの軍事支援と、米・メキシコ国境警備強化の資金として、1060億ドル(約15兆8900億円)近い緊急予算案を公表している。
予算案には 、イスラエルに対する軍事支援などとしておよそ140億ドル、ウクライナに対する軍事支援などとしておよそ610億ドル、ウクライナやイスラエル、ガザ地区などに対する人道支援として91億ドルが盛り込まれている。
これについて ジョンソン米下院新議長は、ウクライナとイスラエルへの支援策は別々に扱うべきだと述べ、1060億ドル規模の予算案を支持しないことを示唆した。「ウクライナ支援での最終目的は何かを知りたい」とし、「ホワイトハウスはそれを示していない」と述べた。
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