韓国の大統領室は10月9日、米政府がサムスン電子とSKハイニックスの中国工場を「検証済みエンドユーザー」に指定したと発表した。
「検証済みエンドユーザー」は、事前に承認された企業の指定された品目の輸出について個別の手続きを不要とするもので、米国による2022年の中国への輸出規制の適用が無期限で猶予される形となる。
但し、米国は米政府から補助金を受け取った半導体企業の中国工場での生産能力拡大を10年間にわたり先端プロセスで5%、旧式プロセスでは10%に制限する措置をとっており、韓国はこれの緩和を求めたが、受け入れられなかった。
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バイデン米政権は2022年10月7日、中国への半導体先端技術の新しい輸出規制を実施すると発表した。
米国は日本とオランダにも協力を求めた。
オランダ政府は2023年6月30日、追加の輸出管理規制を9月1日から施行すると発表した。経済産業省は2023年7月23日、先端半導体分野の23品目を輸出規制の対象に加えた外為法の改正省令を施行した。
2023/7/24 先端半導体の中国向け輸出規制を強化
中国企業に輸出するライセンス付与は厳格に抑制される一方、中国で半導体を生産する韓国などの外国企業への輸出の場合は、「ケースバイケース」でライセンスが審査されることになる。
サムスン電子は、NAND型フラッシュメモリーの40%を中国の西安工場で、SKハイニックスは、DRAMの40%を無錫工場、 NAND型フラッシュメモリーの20%を大連工場で、それぞれ生産している。新しい半導体装置が中国の工場に導入できなくなった場合、サムスン電子とSKハイニックスの中国工場への被害は避けられないとの懸念が出ていた。
米政府は、中国に大規模工場を持つ韓国のサムスン電子や台湾のTSMC(台湾積体電路製造)など一部企業には1年間、適用を免除した。(1年後にどうなるかが問題であった。)
2022/10/10 米国、半導体の対中輸出制限を拡大
米紙は2023年6月12日、米政権が、中国に対する最先端半導体の輸出規制に関し、韓国と台湾の企業への適用免除措置を延長すると報じた。
今回の「検証済みエンドユーザー」指定で米国による中国への輸出規制の適用が無期限で猶予される形となる。
報道にはないが、米国の要請を受け米国に進出している台湾のTSMC(上海と南京に工場)に対しても同様の措置が取られると思われる。
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米上院は2022年7月27日、国内半導体産業向けの527億ドルの補助金を含む「The CHIPS and Science Act of 2022」(CHIPSプラス法)を64対33の賛成多数で可決した。
下院は翌28日、これを可決した。バイデン大統領は8月9日、国内半導体産業支援法「CHIPSプラス法」案に署名し、同法が成立した。
2022/7/29 米議会、「CHIPS法」を可決
米国商務省は2023年2月28日、CHIPSプラス法に基づく、半導体産業に対する第1弾の資金援助申請の受け付けを開始すると発表したが、補助金支給の条件を明らかにした。
特に問題なのは、懸念国での半導体製造能力の拡張を伴う重要な取引を10年間行わないという条件である。
現在、サムスンは西安で128層NAND型フラッシュメモリー、SKハイニックスは無錫と大連でそれぞれ10ナノメートル台後半のDRAMと96・144層のNAND型フラッシュメモリーを生産している が、「先端製造プロセスへの転換が不可能になれば、サムスン電子とSKハイニックスが中国で生産する半導体は来年から20%程度減る」とされる。
特にSKハイニックスはインテルから買収したNAND型フラッシュメモリーの大連工場が問題となる。インテルに昨年、買収代金の第1期分として70億ドルを支払い、2025年に残る20億ドルを支払うことになっているが、工場をアップグレードできない場合、相当な被害を受けることになる。
米商務省は3月21日、懸念国での半導体製造能力の拡張を伴う重要な取引を10年間行わないという条件の詳細を発表した。(この時点では仮案で、2023年9月23日、最終条件を発表した。)
懸念国=中国、ロシア、イラン、北朝鮮
- 最新鋭設備の禁止:10万ドル以上で(→ 個々の企業への資金供与を検討する中で「重要」取引を定義する)生産能力を5%以上増やすもの。違反すれば資金援助全額取り消し。
- 28ナノメートル以上の古い半導体技術については10%の増産に制限される。
2023/3/13 米商務省、CHIPSプラス法による第1弾の資金援助申請の受け付け開始
韓国はこれの緩和を求めたが、今回、受け入れられなかった。
先端プロセスで5%、旧式プロセスでは10%という設備拡張制限条項さえ守れば、中国 子会社への輸出規制の適用が無期限で猶予される形となった。
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