キオクシアとWestern Digital、経営統合へ

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経営統合に向けて協議しているキオクシアと米国のWestern Digital が月内にも合意する見通しと報じられている。

Wall Street Journalは2021年8月25日、米半導体大手Western Digitalが、同業のキオクシアホールディングスを買収する交渉が大きく進展していると報じた。しかし、双方の資産査定で意見が一致せず、進展しなかった。

最終的には両社の株式価値を対等とするなど、大枠が固まったが、本社所在地や上場市場などで合意できず、暗礁に乗り上げたとされる。

2021/9/31 Western Digital、キオクシアを買収か?

今回は、2022年夏からのメモリー不況で両社とも赤字となり、財務悪化で投資余力が細るなか、再編せざるをえない状況に追い込まれた。

キオクシアの2023/4-6月期連結決算は売上高2511億円、1031億円の当期赤字で業績が低迷している。

Western Digital は下記の通り、ハードディスクドライブ(HDD) 専業メーカーで、2011年に日立から事業を買収して大きくなった。2015年にSunDiskを買収し、日本でキオクシアとNAND型フラッシュメモリー を共同生産する。

同社は6月決算で、業績は下記の通り(百万ドル)。前年比で大幅な減収、減益である。

2021/7-2022/6 2022/7-2023/6
売上高 Flash 9,753 6,063
HDD 9,040 6,255
合計 18,793 12,318
営業損益 2,391 -1,285
純損益 1,500 -1,730



ーーー

付記

経営統合に関し、金融機関が1兆9000億円の融資を確約したことが10月20日に判明した。

3メガバンクと日本政策投資銀行が合計1兆9000億円を融資する。このうち、4000億円は運転資金として引き出せる融資枠(コミットメントライン)

同社は2019年5月31日に日本政策投資銀行から3000億円、メガバンク3行から9000億円、合計1兆2000億円を調達しており、3行は1000億円の追加融資枠も設定した。統合に当たり、この借り換えが必要となる。


付記  交渉打ち切り

Western Digital は10月26日までに交渉打ち切りをキオクシアに通知した。

SKハイニックスの同意が得られず、キオクシア筆頭株主のペインキャピタルとも統合条件で折り合わなかった。



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報道では統合は下記の通りとなる。

持ち株会社 Kioxia Holdings の下に両社がぶら下がる形になる。統合比率はキオクシア側が49.9%、Western Digital側が50.1%だが、実質的な経営権はキオクシア側が握る見通し。

登記上の本社は米国で、本社所在地は日本となる。米ナスダック市場に上場し、東京証券取引所への上場も目指す。

統合にあたり日本の3メガ銀行と日本政策投資銀行などが1兆5千億〜1兆9千億円程度の融資を検討しており、20日までに金融機関と融資条件などを詰める。

キオクシアの大株主であるBain Capital が企業合併のために資金5000億円の拠出を検討しているとも報じられた。

キオクシアは半導体フラッシュメモリーで世界3位、Western Digital は4位。統合でシェアは31.7%となり、2位のSK hinixを抜き、首位の韓国サムスン電子33.7% に並ぶ規模となる。


合意後に各国での規制当局の承認が必要となるほか、キオクシアに間接出資する韓国 SK hinix が反発しており、実現にはまだ不透明な部分も残る。

中国が合併を承認しないだろうとの見方が強い。米国と日本は半導体製品の中国への輸出を規制しており、中国の反発は大きい。

東芝は2017年9月28日、東芝メモリのBain Capital への株式譲渡契約を締結したと発表した。

2018年5月に中国の独占禁止法当局が売却案を最後に承認したことが分かり、2018年6月1日に譲渡が完了した。2018年3月末までに中国の承認が得られる見通しがないため、3月決算で売却益を計上できず、債務過剰となるため、第三者割当による新株式の発行を余儀なくされた。その後、長年「物言う株主」に悩まされることになった。

現在はキオクシアの中国向け輸出は日本政府の規制下にあるが、合併に当たり、米国政府が中国向け輸出の規制を厳しくする可能性がある。

SK hinixはBain Capitalを通じ、14.96%を出資している。同社はNAND型フラッシュで2位のメーカーであり、合併により 1位、2位と大きく話される3位メーカーに陥落するため、統合に反対している。
韓国政府が合併に条件をつける可能性もある。

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現時点でのキオクシアの株主、出資比率は下記の通り。

2020年8月の優先株転換後の出資比率のままである。

Bain/SK hinix の出資は4口に分かれているが、そのうちBCPE Pangea Cayman2, Ltd.はSK hinix の出資分と推定される。

出資比率
東芝 40.64%
HOYA 3.13%
Bain/SK hinix BCPE Pangea Cayman, L.P. 25.92%


Bain Capital
41.28%

BCPE Pangea Cayman 1A, L.P. 9.37%
BCPE Pangea Cayman 1B, L.P. 5.99%
BCPE Pangea Cayman2, Ltd. 14.96%

SK hinix

合計 100%

東芝は2017年9月28日、東芝メモリの株式譲渡契約を締結したと発表した。

売却先はBain Capitalがこの目的のために設立し、参加各社が出資する㈱ Pangeaで、譲渡価額は2兆円。

2018年6月1日に譲渡が完了した。

東芝メモリ株式譲渡とともに、東芝は譲受会社のPangeaに合計3,505億円を再出資し、Pangeaの議決権のある普通株式を約1,096億円分(約40.2%)、転換権付き優先株式を約2,409億 円分(総数の約40.8%)取得し、その結果、約40.2%の議決権を取得した。 Hoyaは9.9%の議決権を得た。

NAND型フラッシュメモリーで競合するSK hinixの参加については、下記の条件を付けた。

SK hinixは、1290億円は今後議決権がある株式に転換できる転換社債形式で、残りはBain Capitalが組成する会社に融資する形とする。

融資の一部(1290億円)については、株式(15%分)に転換する権利が付与されているが、今後10年間は 15%超の議決権を保有することはできず、当該転換権の行使には各国競争法当局の承認が必要となる。

東芝メモリとの間には、少なくとも10年間、ファイヤーウォールが設置され、SK hinixによる東芝メモリの機密情報へのアクセスは制限される。

Apple、Seagate、Kingston Technology、Dell Technologies Capitalの需要家4社が(議決権無しで)4,155億円を出資している。

2017/9/30 東芝メモリの株式譲渡契約締結


東芝メモリは2,019年5月31日、日本政策投資銀行による出資とメガバンク3行からの借り入れで、6月末までに総額1兆2000億円を調達すると発表した。3行は1000億円の追加融資枠も設定する。

今回の調達資金 1.2兆円(他に融資枠1千億円)で Apple等4社の持つ優先株(取得価額4,155億円)を約5,300億円で買戻し、消却する。
残りの資金で金融機関からの借入金 6千億円を返済する。現金700億円が手元に残ることとなる。

(単位:億円) 出資 合計 転換
社債
借入金 再計 今回 処理後
議決権株 優先株
東芝 40.2% 1,096 2,409 3,505     3,505   3,505
HOYA 9.9% 270   270     270   270
(日本側) (50.1%) (1,366) (2,409) (3,775)     (3,775)   (3,775)
Bain 49.9% 1,361 759 2,120     2,120   2,120
SK hinix     2,660 2,660 1,290   3,950   3,950
(Bain / SK) (49.9%) (1,361) (3,419) (4,780) (1,290)   (6,070)   (6,070)
Apple ほか4社
(買戻し額)
    4,155 4,155     4,155

-4,155
(-5,300)

0

金融機関           6,000 6,000

-6,000
9,000

9,000
日本政策投資銀行               3,000 3,000
INCJ
(産業革新機構)
              0  
合計 2,727 9,983 12,710 1,290 6,000 20,000 1,845 21,845
(今回のCash 増)             700  


2019/4/5 東芝メモリ、1.3兆円調達


2020年8月に優先株を転換した。

当初   現状(議決権)
東芝 40.2% 2020/8/27
優先株
 転換
210,300千株 40.64%
HOYA 9.9% 16,200千株 3.13%
Bain/SK hinix 49.9% 291,000千株 56.23%
合計 100%   517,500千株 100%

東証は2020年8月27日、キオクシアホールディングスの上場を承認した。上場予定日は10月6日であったが、上場を延期し、現在に至る。

2020/8/31 キオクシア、10月に上場 

キオクシアとWestern Digital は日本でNAND型フラッシュメモリーの生産を共同で行っている。

発端は1999年の東芝と米国のSanDiskとのNAND型フラッシュメモリ事業に関する提携の基本合意である。

2000年5月にNAND型フラッシュメモリの製造合弁会社の設立

社名:FlashVision LLC
立地:バージニア州(東芝子会社Dominion Semiconductor内に700億円の設備投資)
出資比率、製品引取比率:50/50

2002年4月に「フラッシュビジョン(旧:Flash Vision LLC)」を東芝四日市工場内に移転

以降、順次増設、両社の出資比率はたびたび変更

詳細は 2017/4/14 東芝の半導体売却に新たな難問 

Western Digial はハードディスクドライブ(HDD) 専業メーカーで、2011年に日立から事業を買収して大きくなった。

Western Digital は2015年10月21日、SunDisk を190億ドルで買収すると発表、2016年5月12日、買収手続きを完了した。

2017/5/5 Western Digital の歴史

経営再建中の東芝は2017年4月に半導体のメモリー事業を分社化し、買収を前提に新会社「東芝メモリ」を発足させた。Western Digital とのJV持ち分も移管した。

これに対し、Western Digitalがクレームを付けた。

2017/4/14 東芝の半導体売却に新たな難問

2017/5/15 東芝の半導体事業売却、Western Digital が差し止め申し立て

以降、下記の推移があり、最終的に東芝メモリとWestern Digital は和解し、このあとも共同で日本での生産を行っている。

2017/7/17 東芝とWestern Digital の法廷闘争

2017/8/8  東芝、東芝メモリの増設を単独実施

2017/9/7 東芝メモリの売却、9月13日に決定(岩手県北上市に新規拠点)

2017/9/22 東芝、東芝メモリの「日米韓連合」への売却発表

2017/12/14 東芝、Western Digital と和解

東芝メモリとWestern Digital は、係属中の仲裁および訴訟を解決し、フラッシュメモリ事業に関する協業を一層強化することで合意した
建設中の最先端メモリ製造棟で
ある四日市工場第6製造棟への今後の設備投資について共同で実施する

両社は2019年5月、北上市に東芝メモリが建設中の北上工場第1製造棟において両社共同で設備投資を実施する正式契約を締結した

2018/9/21 東芝メモリ 四日市工場 第6製造棟およびメモリ開発センターの竣工

2019/7/19 東芝メモリ、「キオクシア㈱」に改称

2020/10/29 キオクシア、四日市工場で新製造棟を建設

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