慰安婦訴訟 ソウル高裁が1審を破棄、日本政府に賠償命じる 

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韓国のソウル高裁は11月23日、元慰安婦の女性らが日本政府に損害賠償を求めた訴訟の控訴審で、原告の請求を却下した1審判決を取り消し、日本政府に1人当たり2億ウォン(約2300万円)の慰謝料の支払いを命じた。

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韓国の元従軍慰安婦らが日本政府を相手取り損害賠償を求めた訴訟で、ソウル中央地裁は2021年4月21日、国家は外国の裁判権に服さないとする国際法上の「主権免除の原則」を認め、訴えを却下した。

「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯」が支援する元慰安婦の李容洙氏や遺族ら20人が2015年の韓日慰安婦合意から1年後の2016年に提起した。「精神的、肉体的な苦痛を受けた」として計約30億ウォン(約2億8千万円)の損害賠償を日本政府に請求した。

日本政府が、国際法上の「主権免除」の原則を理由に訴訟に応じてこなかったため裁判が進展していなかったが、裁判所が公示送達の手続きを取ったことで、2020年から動き始めた。

当初1月13日に元慰安婦や遺族の20人による訴訟の判決が言い渡される予定であったが、判決は延期され、裁判所は追加の審理の必要性があるとみて弁論を再開した。

1審のソウル中央地方裁判所は判決で、「国際慣習法や韓国の最高裁判所の判例にのっとり、外国の主権行為について損害賠償の訴えは認められない」として、「主権免除」の原則が適用されるとの判断を示し、原告側の訴えを退けた。

「主権免除を認めなければ、外交的衝突は不可避だ」とし、慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的な解決」を確認した2015年の日韓合意の有効性も認め、原告側が控訴していた。

2015年12月28日、岸田文雄外務大臣は日韓外相会談直後の共同記者発表において,慰安婦問題について以下のとおり発表した。
ア 慰安婦問題は,当時の軍の関与の下に,多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり,かかる観点から,日本政府は責任を痛感している。
 安倍内閣総理大臣は,日本国の内閣総理大臣として改めて,慰安婦として数多の苦痛を経験され,心身にわたり癒しがたい傷を負われた全ての方々に対し,心からおわびと反省の気持ちを表明する。

イ 日本政府は,これまでも本問題に真摯に取り組んできたところ,その経験に立って,今般,日本政府の予算により,全ての元慰安婦の方々の心の傷を癒やす措置を講じる。具体的には,韓国政府が,元慰安婦の方々の支援を目的とした財団を設立し,これに日本政府の予算で資金を一括で拠出し,日韓両政府が協力し,全ての元慰安婦の方々の名誉と尊厳の回復,心の傷の癒やしのための事業を行うこととする。

ウ 日本政府は上記を表明するとともに,上記(イ)の措置を着実に実施するとの前提で,今回の発表により,この問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する。
 あわせて,日本政府は,韓国政府と共に,今後,国連等国際社会において,本問題について互いに非難・批判することは控える。

2021/4/21 韓国地裁、慰安婦訴訟2件で原告側の訴えを却下

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日本政府は、国家は他国の裁判権に服さないとする国際法上の「主権免除」の原則から、訴えは却下されるべきだという立場である。

しかし、2審のソウル高裁は11月23日の判決で、「現在までに形づくられた国際慣習法を考慮すると、日本に対する韓国の裁判権が認められる」と判断し、1審判決を取り消し、原告に1人あたり日本円でおよそ2300万円の慰謝料を支払うよう、日本政府に命じた。

「訴訟は被告(日本政府)が当時占領していた朝鮮半島で、国民である原告に働いた不法行為への損害賠償を請求した事案だ」と指摘。国際慣習法は、主権免除を認める範囲を狭める方向に変化しているとして、「領土内での国民に対する不法行為では、(主権)免除は否定される」と断じた。

一方、慰安婦問題の解決をうたう2015年の日韓合意について、ソウル高裁は「日本政府が裁判で意見を主張しなかったので争点にならなかった」と説明した。

今回、外務省は下記の発表を行った。

  1. 11月23日、岡野正敬外務事務次官は尹徳敏駐日韓国大使を召致し、元慰安婦等が日本国政府に対して提起した訴訟の韓国ソウル高等裁判所における控訴審において、2021年1月8日の判決に続き、国際法上の主権免除の原則の適用が否定され、原告の訴えを認める判決が出されたことは、極めて遺憾であり、日本政府として本判決は断じて受け入れられない旨強く抗議を行いました。
  2. 慰安婦問題を含め、日韓間の財産・請求権の問題は、1965年の日韓請求権・経済協力協定で「完全かつ最終的に解決」済みです。また、慰安婦問題については、2015年の日韓合意において「最終的かつ不可逆的な解決」が日韓両政府の間で確認されています。
  3. 韓国政府に対して国際法違反を是正するために適切な措置を講じることを改めて強く求めます。

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元慰安婦をめぐる裁判では、2年前にもソウル中央地裁が「主権免除」の原則を認めず日本政府に賠償を命じていて、この時は日本政府が裁判への関与を拒んで控訴せず、判決が確定した。

韓国で旧日本軍の元従軍慰安婦の女性らが日本政府に損害賠償を求めた訴訟で、ソウル中央地裁は1月8日、請求を認め日本政府に賠償支払いを命じる判決を出した。

調停申請時、原告は12人だったが、多くが他界し、生存者は5人となっている。

ソウル中央地裁は、原告1人あたり1億ウォン(約948万円)の支払いを命じる原告勝訴の判決を出した。

日本政府は国家は外国の裁判権に服さないとする国際法上の「主権免除」の原則から、 調停にも審理にも、一度も出席していない。

日本政府は賠償の支払いに応じていない。

2021/1/8 元慰安婦訴訟で日本政府に賠償命令 

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