AGC (旧称 旭硝子)の合成医農薬CDMO製造子会社であるAGC若狭化学は11月17日、福井県三方上中郡の上中工場において大型製造ラインの竣工式を行った。同社の製造能力を 1.5 倍に拡張する増設で、2024年第1四半期の稼働開始を予定している。
AGC若狭化学はフッ素・ヨウ素を含むハロゲン化学、新規製法の開発力、廃棄物およびレアメタルのリサイクルによる資源の有効活用とそれらによるコスト低減技術等を強みとし、新規開発品を含めた原料から原体までのワンストップの受託製造を行っている。また、cGMP対応の医薬品製造ラインも持つ。
CDMO (Contract Development and Manufacturing Organization) は、医薬品製造および製造プロセス技術の開発を受託・代行する事業。
AGCグループは、化学品事業で培ったフッ素化合物合成など多様な化学合成技術を強みに、1985年に合成医農薬のCDMO事業を開始し、以来、高付加価値かつ高品質な製品の開発・製造を目指し、積極的な買収・設備投資を行い、事業を拡大してきた。
同社の説明:
AGCは「素材をつくる技術開発力」がベースとなっている会社で、その技術力で世界や社会にどのように貢献できるかと考えたときに、ライフサイエンス事業に注力することになった。
化学合成による低分子医薬品から微生物・動物細胞を用いた遺伝子組み換え技術によるタンパク質医薬品など、薬物の構造が多様化・複雑化している今日において、これらすべての工程を製薬会社一社が担うのは、現実的ではなく、「創薬」とその後の「開発・製造」の水平分業化が進んでいる。医薬品も製造プロセスを分離してアウトソースすることで、新たな医薬品を市場に送り出すまでのスピードを加速させることができる。分離したプロセスに求められる精密な技術力をAGCが担っている。
AGCグループの ライフサイエンス事業は下記の通り。
シアトル | 2017年、CDMO大手のCMC Biologicsを買収 (約600億円) 動物細胞と微生物を用いた CDMO |
2020年設備増強、新設 |
バークレー (カリフォルニア) | 2018年増強 その後、上記と統合? |
|
コペンハーゲン(デンマーク) | 2018、2020、2024年増強 | |
ハイデルベルグ(独) | 2016年、Biomeva Gmbhを買収 バイオ医薬品の開発・製造受託サービス |
2023年増強 |
ボルダー(コロラド) | 2020年、AstraZenecaのバイオ医薬品原薬製造工場を買収 | |
ロングモント(コロラド) | 2021年、Novartis Gene Therapiesから遺伝子治療薬工場を買収 | 2022年増強 |
マルグラート・デ・マール(スペイン) | 2019年、合成医薬品原薬製造会社Malgrat Pharma Chemicals, S.L.U.買収 | 2022,2024年増強 |
ミラノ(イタリア) | 2020年、遺伝子・細胞治療CDMOのMolecular Medicine S.p.A 買収 | |
AGC若狭化学 | 1998年、旭硝子100%で若狭エイ・ジー・シー・ファインケミカルとして設立 医薬品中間体等,ファインケミカル製品の受託製造及び開発 |
2024年増強 |
千葉工場 | 2019年 買収したCMC Biologics社の技術を導入し、動物細胞を用いたcGMP対応バイオ医薬品(抗体医薬品等)開発・製造受託設備を新設 |
2020年増強・新設 |
横浜テクニカルセンター | デュアルユース設備新拠点 2025年予定 平時:動物細胞利用バイオ医薬品、mRNA医薬品、遺伝子・細胞治療薬 パンデミック時:ワクチン製造 |
同社は2023暦年から報告セグメントを変更した。従来、化学品に包括されていたライフサイエンスを独立させた。
従来 | 今後 |
ガラス | 建築ガラス |
オートモティブ | |
電子 | 電子 |
化学品 | 化学品 |
ライフサイエンス(合成医農薬中間体・原体、バイオ医薬品等) |
業績 ライフサイエンス部門の2023年1~6月の半期決算は下記の通り。
2023/1-6 | 2022/1-6 | 増減 | |
売上高 | 667億円 | 692億円 | -25億円 |
営業損益 | 6億円 | 102億円 | -97億円 |
売上高は、コロナ特需の消滅、米国バイオCDMO新規ライン立ち上げ遅延等で減収
バイオCDMO能力増強に伴う先行費用発生もあり、減益
コメントする