米、EV充電ステーションの「バイ・アメリカ」要件免除問題

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米上院は11月8日、政府資金による電気自動車(EV)充電ステーションの「バイ・アメリカ」要件免除規定の撤回法案を50対48で可決した。民主党から3名、民主党を離脱した無所属議員1名が賛成した。


政府は、Buy America 要件を適用すれば建設が不可能になるとして期間を絞って免除する規則を出したが、議員が「中国製導入につながる」として規定を撤回する法案を出し、可決したもの。

これは下院に送られるが、もし下院でも可決すれば、ホワイトハウスはこれに拒否権を発動する。

  共和党 民主党 民主系
無所属
無所属 合計
賛成 46 3 1 50
反対 1 45 2 48
棄権 2 2
合計 49 48 2 1 100

民主党 Dianne Feinstein(90歳)が9月29日逝去し、欠員1となったが、後任をカリフォルニア州知事が指名した。


米下院は2021年11月5日夜、バイデン政権の2つの看板政策のうち、5500億ドル規模の超党派インフラ投資法案を可決した。

道路・橋など大型プロジェクト:1100億ドル
電力網の改修:730億ドル
鉄道・アムトラック改善:660億ドル
ブロードバンド普及:650億ドル
飲料水の水質改善:550億ドル
交通・輸送:390億ドル
港湾:170億ドル
空港:250億ドル
電気自動車充電施設:75億ドル

上院はすでに可決しており、バイデン大統領の署名で成立した。

2021/11/8 米インフラ法案、下院で可決、成立へ

同法は、道路状況の改善、よりクリーンな商用車、電気自動車(EV)のバッテリー工場、バッテリーのリサイクル、リチウムの採掘と精製など、さまざまな方法で自動車産業をサポートすることが期待されている。最大のEV予算 として約75億ドルが全米の代替燃料充填、主にEV充電器と、インフラのサポートに割り当てられている。

5万ヵ所の公共利用可能なロケーションに10万台以上の充電器が設置されている米国の現在のEV充電インフラに加えて、2026年までにさらに10万ヵ所の公共ロケーションに約60万台の充電器を追加設置する必要があると推算 がある。この数字には、住宅(主にガレージ)への設置が予測される320万台の家庭用プライベート レベル2充電器は含まれていない。

これに関し、1933年に制定されたバイ・アメリカン法が問題になった。

連邦政府の機関は、「実質的にすべて米国内で採掘、生産、製造された物品、材料、または供給品から製造された」物品を優先的に調達しなければならないというもの。

この「実質的にすべて」を
具体的に定義していないので、歴代大統領はそれを曖昧にしてきた。
「実質的にすべて」を示す範囲は、以前は50%だったが、
トランプが55%に引き上げた。現在はバイデンが60%に上げ、2024年に65%、2029年に75%に再び引き上げると約束している。

あらゆる鉄製または鋼製の充電器の筐体またはハウジングの最終組み立てとすべての製造工程を米国内で行わなくてはならないが、内部の構造フレーム、加熱および冷却ファン、電力変圧器など、その最も重要な部品のいくつかに鉄鋼が必要である。


州と企業は、EV充電器への世界的な需要が供給チェーンを圧迫し、バイアメリカン基準を満たした新しい充電器の建設を迅速に進めることが難しい、もしくは不可能であると警告している。

これに関し、政府は法案成立後、具体的なルールを発表せず、ようやく2023年2月21日にFederal Highway Administrationが以下のルールを発表した。

連邦道路局(FHWA)は、電気自動車(EV)充電器の鋼材、鉄、工業製品、建設資材に対するバイ・アメリカの要件を免除する一時的な公益免除制度を確立した。

この短期的かつ一時的な免除により、EV 充電器の取得と設置を直ちに進めることができると同時に、時間の経過とともに免除を段階的に廃止することで、EV 充電器への Buy America の適用を確実に行うことができる。

この免除は、2024 年7 月1 日までに製造され、最終組み立てが米国で行われ、2024 年10 月1 日までに設置が開始されたすべての EV 充電器に適用される。

2024 年7 月1 日に製造された EV 充電器からは、米国で製造されたコンポーネントのコストが全コンポーネントのコストの 55 パーセントを超えない場合、以前は対象となっていた EV 充電器に対するこの免除に基づく適用を段階的に廃止する。

バイアメリカ法 section 70914(d) に基づき、FHWA は発効日から5年間、免除継続が必要かどうかを検討し、決定する。

バイデン政権下でのバイアメリカンルールは実質的にすべて(すなわち60%)が米国内で採掘、生産、製造された物品、材料、または供給品から製造された物品を調達しなければならないが、今回に限り、
1) 2024年7月1日までに製造されたものには適用されず、
2) 2024年7月1日以降に製造の場合は、55%以上であればよいことになる。
さらに、免除期間の延長も可能(最高5年間)

共和党ルビオ上院議員等は、この免除により2024年10月まで中国製のEV充電器を含む外国製の製品が使用される可能性がある。しかも、Federal Highway Administrationにはその締め切りを5年間延長する権限が与えられて いると批判し、「バイ・アメリカ」要件免除規定の撤回法案を提出、それが可決されたもの。

これに対しホワイトハウスでは、共和党案のようにバイアメリカンルールをそのまま適用すれば、インフラ投資法案によるEV充電インフラは全くできないことになり、米国での生産と雇用を失うこととなると反論している。

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