米政府は11月2日、ウクライナ侵攻を続けるロシアへの追加制裁を発表、ロシアの将来のエネルギー能力や制裁逃れ、自爆ドローンなどを標的に数百の個人・団体を制裁対象に加えた。
ロシア軍がウクライナで使用している自爆ドローンの設計、製造などに関わった個人・団体も制裁対象に指定。商務省はドローンを巡りロシア軍を支援したとして同国の企業約10社を禁輸リストに加えた。
財務省は軍事転用可能な製品を引き続きロシアに輸出し制裁を回避しているとしてアラブ首長国連邦、トルコ、中国に拠点を置く企業に制裁を科した。
制裁対象には北極圏のLNG開発事業「Arctic LNG 2」の開発、運営、保有に関わる主要事業体(Limited Liability Company ARCTIC LNG 2)が含まれた。
ロシアのガス大手Novatecは本年9月にArctic LNG 2 から来年初めに出荷を開始する見通しを示していた。今回の制裁でロシアのLNG輸出にどの程度の影響が出るかは不透明。
付記
ロシア紙は12月25日、米国の制裁対象となったロシア北極圏のLNG開発事業「Arctic LNG 2」について、日本を含む外国の出資者が「不可抗力」により参画を凍結すると通告してきたと報じた。
来年初めの生産開始が計画されていたが、ウクライナ侵攻が続く中、アメリカ政府が先月、「Arctic LNG 2」を制裁対象に加えた。
これについて三井物産はノーコメントとしている。
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Arctic LNGは、Yamal LNG計画のあるヤマル半島の東隣のギダン半島のSalmanov (Utrennye) ガス田等を供給源とするもの。
Novatekにとって、Yamal LNGに次ぐ第二のLNG計画で、投資額を200~210億ドルとみている。
能力は660万トン× 3 系列の1,980万トン/年で、第1系列が2022-2023年、第2系列が2024年、第3系列が2025年の稼働を目指している。
三井物産は、石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)と共同出資するオランダのJapan Arctic LNG B.V.を通じて、Novatekが推進するアークティックLNG 2プロジェクトに参画すべく、プロジェクト会社アークティックLNG2社の持分を10%取得することでNovatekと合意し、2019年6月29日に持分売買契約を締結した。2019/9/5 最終投資決断を発表した。
Novatek 60% Total 10% CNODC 10% CNOOC 10% 三井/JOGMEC 10%
2018/12/24 Novatek のArctic LNG 計画に三井物産が参加か 付記
三井物産は今回、下記発表を行った。
11月2日に米国財務省外国資産管理局より、Arctic2がSDN(経済制裁対象者)に指定されたことが発表された。米国制裁の対象となったことによる影響については今後精査の上、必要な措置を適切に講じてまいります。
また、当社は国際社会が取る制裁措置を含めた法令を遵守し、日本政府を含むステークホルダーと連携しながら適切に対応していく方針です。
同社のロシアLNG事業におけるエクスポージャー(2023年9月末)
ロシアLNG事業
合計うち、
サハリンⅡArctic LNG2 投資・融資 1,409億円 1,237億円 172億円 保証 2,517億円 2,517億円 投融資保証 3,926億円 2,689億円 債務保証引当 ▲199億円 ▲199億円 ネット残高 3,727億円 2,490億円 *特定のJapan Arctic LNG (JOBMECとのJV)債務に対する保証について同社分を上回る100%の数値で集計しており、また、保険の求償を控除する前の金額である。
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サハリン2についてはシェルが離脱した。三井物産と三菱商事は新会社に出資した。
設立時 2008年 2022年 シェル 55% 27.5% ー Gazprom ー 50% 50% Sakhalin Energy ー ー 27.5% 三井物産 25% 12.5% 12.5% 三菱商事 20% 10% 10% 合計 100% 100% 100%
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